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「大転職時代」の今、採用に効くコンテンツのつくり方

最近ライター・編集案件でも「採用用のコンテンツ作り」のすそ野がめちゃめちゃ広がってきているのを感じます。実は僕は人材紹介会社で5年くらいコンテンツマーケティングをしていたので、その時の知見も踏まえて、「採用コンテンツのつくり方」についていろいろ書いてみました。

◆世は”大転職時代”~2024年の新入社員「チャンスがあれば転職する」が最多

いきなりですが、企業にお勤めの皆さん。今の会社でいつまで働き続けたいと思いますか?

正直なところ僕の場合、「すぐに辞めるつもりもないけれど、生涯働き続ける気もしない」という感じです。今の会社は大好きですが、ずっと活躍し続けられる自信もないですし、ライフステージが変わればおそらく、その時の自分にもっとマッチしている働き方があるような気がするからです。

僕みたいな感覚をお持ちの方は増えているみたいで、東京商工会議所のデータによると、今年就職した新入社員のうち実に26.4%が、「チャンスがあれば転職する」と回答しているそうです。この数値が「定年まで働き続けたい」(21.1%)と答えた人を上回ったのが、今年が初めてなんだとか。「チャンスがあれば転職する」と答えた割合は年々増加傾向にあるそうで、世相を反映している感じもしますね(下図参照)。


(単位:%、東京商工会議所『2024年度 新入社員意識調査』2024年4月22日)

こんな風に多くの人が「いつかは転職しよう」と思っているとすると、転職における情報収集の在り方も変わってきます。

一昔前であれば、「現職で一生懸命働く」→「何らかのきっかけが起こる」→「転職活動のために情報収集を始める」という形で、「現職で頑張る時期」と「転職活動する時期」が分離していたのですが、現在は多くの人が「現職で働きながら、(転職の参考になるような)他社の情報も収集する」ようになっている。

他社の年収相場や労働環境、カルチャーについても敏感になり、ついnoteを眺めたりして、今の環境と比べてしまう。そういう経験のある方も多いんじゃないでしょうか(白状しますが僕はそうです)。

最近はnoteやWantedly、YoutrustやLinkedintのようなプラットフォームも整ってきていますし、スカウト型の採用マーケティングだったり、リファラㇽ採用、カジュアル面談などなども真っ盛り。転職をバキバキに考えている人はもちろんのこと「いつかは転職しなきゃなあ」とふわっと考えている人も含め、採用企業と個人がつながれるようにもなってきています。

採用に本腰を入れている企業はこうした変化をよく分析していて、自社が認知・興味を持ってもらい、応募し内定を得るまでの一連のコミュニケーションにおいて必要な情報を、様々なチャネルにちりばめて対策を練っています。

◆採用広報、認知拡大・応募増・選考ファネル改善に効くコンテンツのポイント

「採用広報」と言ったとき、一番の目的は多くの場合、「自社に応募してくれる人を増やすこと」になってきます。

上記のフローチャートでいうと、「潜在応募者」(自社を認知し、興味を持ってくれている人)や「選考参加者」(さらに進んで、応募し面接に進んでくれる母集団を増やす)を増やすようなイメージです。

ちなみに、特に同時に同じような職種でたくさんの人数を採用するケース(ex:新卒採用など)においては、選考が進めば進むほど自社への理解・志望熱意があがるよう、ナーチャリング用のコンテンツを準備することもあります。採用人数が少ない場合は、コンテンツを準備するより、面接官が直接熱いメッセージをぶつけたほうが効率的・効果的だったりもするので、この辺りはまさに、「コミュニケーション設計」と言えそうです。

なお、認知拡大フェーズ、母集団形成(応募増)フェーズ、選考ファネル改善フェーズそれぞれで取りえる「コンテンツの選択肢の定石」としては次みたいな感じ。特にライターの方や人事の方で「とりあえずコンテンツをつくろう」と思っている場合は、どのフェーズを解決したいのかを意識しつつ、以下の要点を踏まえてインタビューを作ってみるとよいんじゃないかと思います。

①認知拡大フェーズ

  • まずは会社について知ってもらうためのコンテンツが大事

  • 「事業」「人・組織カルチャー」「業務内容・待遇」「働き方・福利厚生」などについて知ってもらう

  • 単純に「コンテンツの数が多いこと」も大事だし、PVを増やすのが目的のコンテンツ
    ※いわゆる「企業広報」と重なるところがあるので、社内に広報部門がある場合はそちらに役割を任せるのも◎

②母集団形成フェーズ

  • 「応募しよう」という気持ちにさせるコンテンツが大事

  • 求職者が自社に応募する上での「メリットを強める」コンテンツに合わせ、「応募しない理由をつぶす」コンテンツを用意することが大切

  • 「こういう人は応募しない方がよい」という面も含め、ターゲットを定めたコンテンツが重要

  • 「自分も活躍できる感」「競合企業との違い」をどう伝えるかが肝

③選考ファネル改善フェーズ

  • 「選考に進みたい」「他社(現職含め)よりも自分にマッチしていそうだ」と判断するためのコンテンツが大事

  • 入社後の働き方を展望するのに役立つコンテンツ

  • 部署の雰囲気やロールモデル、キャリアパスなど

※記事や動画などのコンテンツだけでなく、社員面談などのほうが有効な場合も


◆「その採用広報、ちょっと待った!」と思う瞬間

すみません。人材紹介会社で5年くらいコンテンツを作り続けてことがあったので、経験者面して偉そうに書いてしまったのですが、一方で、「採用コンテンツには要注意事項」もあったりします。

これは特に、企業人事の方や人材採用に挑もうとしている現場の方にお伝えしたいのですが、「情報発信する前に、今ある組織を良くするために、なんでもいいから試行錯誤をしよう」「社内のカルチャーを言語化しておこう」ということです。

何回も社員インタビューをすると分かるのですが、たとえば仮に社員のAさんが生き生きと働いている話が聞けたとしても、「それってAさんがバイタリティあふれた人だからだよね」で終わってしまうと、「組織としての魅力」は伝わりづらい。特に採用広報でインタビュー候補に挙がるような人は「どんな環境でもやっていけそうな優秀な人」になってしまいがちで、「その人の魅力」は伝わるのですが、「会社としての魅力」までうまく届けられない場面が結構あったりします。

この例でいうと「Aさんの活躍ぶり」の背景に、組織としての構造的な後押しがあることをうまく伝えられないと、「自分もこの会社に入ってみたい」というところまで、求職者の気持ちは上がりません。うーむむずかしい。でも実際本当にこんな感じで、採用広報が上手なところは、そもそも「社外広報をやる前に、きちんと内部に向き合っているな」という感覚があります。

◆「実態以上に良く魅力を伝えることはそもそもできない」

これはすごく当たり前なのですが、組織について発信するとき、「実態以上に組織の魅力を伝えるのは不可能」です。いや、、ウソをつけば可能と言えば可能なのですが、本質的ではないというか、ウソの魅力に惹かれて入社した人がミスマッチを起こしたらその方が大変です。

まずは組織としての魅力を伸ばすために試行錯誤を重ね、「自分たちのカルチャー」を見極める。そのうえでそれを体現している事例を現場から探していく、という順番でコンテンツを考えていくのがポイントになってきます。発信できそうなネタを自分で作り出せるのも、採用広報の醍醐味なんだろうな、と。

##編集後記

今回は、8月14日にメタップスさん主催で登壇させていただいた『オウンドメディア実践講座』でお話したこともかいつまみつつ、ちょっと改変してお届けしました。セミナー本編ではこのほか、社員インタビューの進め方だったり、作ったコンテンツの生かし方についてなどお話させていただき、個人的にもいろいろな示唆をいただけました。来てくださった皆さん、ありがとうございます!

いつもはライター・編集者の方を相手に話すことが多いので、人事部門の方に対して話すのが新鮮でしたが、ふたを開けてみると満員御礼で嬉しすぎました。。採用広報に関する発信も面白いなと思い始めたので、採用用のインタビューにお悩みの企業の方、ライター・編集者の方、ぜひお話したいです!

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