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眠れない夜に。

眠れない日がある。
ひとつのことを思い出し、それが次々と連鎖し、あらぬ方向へと考えが進んでいく。
自分の考えが、感情を伴って、どんどん暴走していく。

そんな眠れない日、ある本のことを思い出した。

中島岳志さんの「思いがけず利他」だ。
この本の中で、ヒンディー語の与格構文について書かれている箇所がある。
例えば、「わたしはうれしい」「わたしは悲しいは、ヒンディー語では「わたしに嬉しさが留まっている」「わたしに悲しさが留まっている」という言い方をするのだそう。


自分の行為や感情が、不可抗力によって作用する場合、「与格」を使う。
うれしいや悲しいなどの感情は、私の意志でコントロールしているのではなく、自分の意志を超えてやってくるものとして捉えられている。

この与格構文の話を読んだとき、「ああ、感情は自分が考えて出しているのではなく、どこかからやってくるものなんだな。私は、そんな時ただの入れ物のように素直に感情を確かめればいいだけなんだな」と、新たな視点ができた。

眠れない日、どこかからやってくる感情に目を向けてみた。
考えの暴走をとりあえずストップさせ「今このわたしにどんな感情がやってくるんだろう」と、自分が何かの入れ物になったようにイメージし、感情がやってくるのを待った。


空白の静かな時間が生まれた。


それだけで落ち着いた。


ポッと出てきた感情を確かめては、「そうかそうか」と手放すうちに眠りにつくことができた。



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