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映画「東京物語」の感想

小津安次郎監督の「東京物語」を鑑賞したので、メモ程度に感想を書いておく。

親子、家族、人間関係。
生、老い、死。
普遍的なテーマを穏やかに描いた作品。

なんてことのない、誰にでも起こりうる日常を描いた作品だけど、なんだかしみじみ、感慨に耽ってしまう作品だった。
人に優しく温かくできること、よい関係を築けること、気が合うこと。それらにとって、血の繋がりは関係ない気がした。
血の繋がりだけが幸せのかたちではない。

誰かの死に対して、どのように受け止め、どのような選択をするのか。
一途でいたい善良さと、寂しさから逃れたいという傲慢さとの葛藤が見えたが、それは多分誰もが経験すること(直近で読んだ傲慢と善良を引きずっている)。
そういった葛藤は当たり前であり、普遍的な問題である。
また、そうした葛藤を抱えている人(他人ではなく自分自身かもしれない)を受け入れ、許すことで、親密な関係を築けるのかもしれない。

映画のことは全く分からないが、美しいものを観た、良いものを観たということを強く感じた。
構図が登場人物にズームせずに一定の距離を保って遠くから写している場面が多く、客観的、俯瞰的に観ることができた。と同時に、登場人物がカメラを真っ直ぐ見てセリフを言う場面には、自分が話しかけられているような感覚に陥り、客観と主観のバランスがうまく考えられているのだろうなと感じた。
遠くから写すと、「この世界に存在するどこにでもある普通の家族ですよ」という客観的な印象を植え付け、その後、カメラ目線の場面では、「あ、自分もこの家族の一員なんだ」と一気に引き込まれる構図になっていると感じた。
観る者を飽きさせず、自分事として考えるよう惹き付ける工夫がされているのだと思った。

色んな人の評価や感想を呼んで、この作品がどのように愛されているか分かった。
日本人として誇りになる作品だと思った。

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