「何者」と他2冊を読んだ日

今週は3冊読みました。

まずは、畑野智美さんの「大人になったら、」です。
下記あらすじ!

三十五歳の誕生日を迎えたメイ。カフェで働く日々はそれなりに充実しているが……。久しぶりの恋に戸惑う、大人になりきれない私たちの恋愛小説。

前から書店で平積みされていて、気にはなっていた作品だったので購入してみました。

・大人になっても、自分にとっての恋がしたい

特に仕事で出世だって目指してない。結婚だってしたいけど、ちゃんと相手に恋できる人とがいい。大人になって、色々な条件を見て選ぶ恋人なら必要がない。それが子供じみてると言われたって、それでも恋をしたい。

主人公の考え方に共感する部分も多くあったかな。ただ自分にとっての平和な生活をしたいんだよね。

20代半ばのタイミングで読めたことがラッキーだった本でした。これは大学の友人にそのまま送ってみたけど、どんな感想を抱いてくれるかなぁ。


次は、江國香織さんの「号泣する準備はできていた」を読んだ。短編集です。

私はたぶん泣きだすべきだったのだ。身も心もみちたりていた恋が終わり、淋しさのあまりねじ切れてしまいそうだったのだから――。濃密な恋がそこなわれていく悲しみを描く表題作のほか、17歳のほろ苦い初デートの思い出を綴った「じゃこじゃこのビスケット」など全12篇。号泣するほどの悲しみが不意におとずれても、きっと大丈夫、切り抜けられる……。そう囁いてくれる直木賞受賞短篇集。

久しぶりに江國香織さんの作品読んだけど、使われる言葉が綺麗だったことを思い出しました。
この本の物語たちは、人によって感じたことがかなり変わりそうなので、使われている言葉の意味通りの物語より、自分自身でその先を考えて読むことが好きな人にはかなりおすすめ。


最後に、朝井リョウさんの「何者」です。これは映画にもなって知っている人多そうだよね。
私も映画は大学時代(しかも就活直前シーズン)に見ました。あの頃の自分、観終わった後のメンタル大丈夫だったのかな。

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。

・140文字の、その先の人格

この本、今ではみんな当たり前のSNSを使っている人は、ほぼ心当たりのある黒い感情と向き合わざるを得なくなる作品ですよね。
ましてや、ただでさえ自分について考えて発信しないといけない就職活動に絡めて物語は進んでいくから、大多数の人が自分に心当たりのある言動にまみれているという。

こんなふうに、短い言葉を使って俺たちは日々を過ごしていた。そんな日々を記録して発信していくために、最低限の言葉で自分を表現するために、捨てた言葉と拾った言葉たちがある。

自分の努力している様子や、何かに取り組んでいる様子を発信し続けるギンジや隆良のツイートに、読んでいる人の中にも主人公・拓人と同じ黒い感情を抱く人多いと思います。私ももれなくその一人。

直接的な言葉を使わなくても、自分のすごさや努力量、人脈、スケジュールを武器に140文字目いっぱい使って発信する日々の様子。
誰に向かって、何ていう言葉をかけてほしくて続けているの?結果は何も出ていないのに。
という、黒い黒い気持ちに読者を散々共感させて、ラストスパートはえげつないスピードで駆け抜けていくんだから圧巻の一冊ですね。

「頭の中にあるうちは、いつだって、何だって、傑作なんだよな。お前はずっと、その中から出られないんだよ。」

映画でもそのまま使われたこのセリフ、相手に向けても自分に向けても殺傷能力高いワードだよなぁ。
拓人が隆良に対して言ったセリフだけれど、拓人の心の中に渦まく、「自分の目に見えているものを、相手の目の前にも差し出してやりたい」という気持ち、私も結構な頻度で感じる。恥ずかしながら。

小並感ある感想になるけれど、SNSって楽しいけれど、こういう気持ちと度々葛藤しないといけないから、疲れるよな、本当に。

でも、この本も映画だけでなくて、原作を読んでよかった。映画のラストより、原作のラストの方が理香さんの攻撃力が増していて、読んでいて緊張感すごかった。面白い本当に。


以上。おしまい!

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