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そうだ、文学フリマに出よう

「まんたぬちゃんさえ良かったら、次回の文学フリマ一緒に参加しない?」
と、メッセージいただいた2022年5月。私は5年ぶりくらいに体調が制御不能、自律神経が完全に終わってしまっていた。

引き金になったのは、4月からの仕事での体制変更。既存で持っていた仕事を他の人に引き継ぎしつつ、しかしすぐに渡せるものでもないため現担当チームをケアしつつ、6月末で産休に入る方の業務(かなり忙しい)を引き継がれることになり新しいチームの会議にも参加する、という立場になったことで連日の残業。
おそらくもともと疲れていたであろう体と、なんとか新しい業務にも食らいついて頑張りたいという気持ちが日々どんどん離れていってしまい、5月後半には毎日体のどこかが不調で苦しんでいた。

そんな中、5月29日に文学フリマ東京が開催された。
 前日までものすごく体調が悪く、行っても楽しめないのではないかと思っていたが、意を決して行ってみたら体調不良なんてなんのその。仕事で錆び付いていた脳の好奇心スイッチが押された感じがした。
前回よりも人が多くて、若干各出店も忙しない感触はあったけれど、それでも来てすぐ、あ〜来てよかったなと思った。人生って目の前の仕事だけじゃないんだよってこと、仕事が忙しくなるとすーぐわすれちゃう。

で、文学フリマに行って大好きなスタババさんのサークル、アジフライ帝国に今回もお邪魔した。前回同様、わあスタババさんだ…!って遠くからブースみて内心キャッキャして緊張しちゃったけれど、今回はしっかり挨拶できた。と思う。久しぶり〜とお話して、今回の新刊を購入した。本当は前回購入した本「家建てた」の保存用の一冊が欲しいくらいだったけれど、めでたく残りが少なくなったとのこと。嬉しい。もっとたくさん広まってほしいので(一体何目線)私は購入をやめた。ともかく新刊が手に入って嬉しくて、すぐに文学フリマの会場の隅に引っ込んで読んだ。

そんな文学フリマがあったのちの日、冒頭のメッセージをスタババさんからいただいた。メッセージが届いて通知がきた瞬間から胸がばっくんばっくんした。
先日顔を出した時に私が元気がなく見えたことへのお気遣いからはじまり、一緒にというのはどんな形式でもいいよ、もちろん途中離脱してもいいよ、私の楽しさはまんたぬちゃんが出ても出なくても確立するからね
……と、言葉をつくしてくださった。

でも、すぐには返事を出せなかった。いまの仕事の状態で自分自身で決めたことをやりきる自信もイメージもわかず。仮にはじめてみたところでやっぱりお言葉に甘えて辞めるとなったとしても、それにもなにかをはじめる決心と同じくらい体力を使う。ぐるぐると考えつつも、日々の仕事に飲まれて体調を崩していった。

このままじゃ心身が本当にまずいことになるな〜と思い、ある日午後休暇をとり、近所のお気に入りのスパ銭でサウナに入った。
外気浴で整っている最中、ふとうとうとしてしまったようで、そのとき鮮明に文学フリマ会場にいる夢をみた。それもお客さんではなく、ブースを出して、なにか冊子を売っている夢。ハッと起きて気づいたけれど、それが「文学フリマに出店者として出るイメージ」が初めて自分についた瞬間だった。

その後も二度ほど、売り手として文学フリマに出る夢をみた。起きた時に気づいて笑ってしまった。今思えばよっぽど仕事から逃避したかったのかもしれない。でも、イメージはなんとなく見えた。ただまだ決心がつかなかった。

そんなある日、上司から個別チャットがきた。
4月から新しいプロジェクトに入ってもらったばかりで悪いが、既存の別プロジェクトで9月に退職者が出る。今取り組んでいる新しいプロジェクトをやめて、その後任のほうにあたってもらいたいが、どうかと。
別プロジェクトのほうは、自分が過去かかわってきたプロジェクトにやり方やメンバー構成が似ていて勝手がわかる。正直いま取り組んでいる新しいプロジェクトよりも、別プロジェクトのほうがまだ担えるイメージがついている。私の体調を見た上司と、たまたまのタイミングと運が重なった人事だろう。
私はその別プロジェクトの後任を引き受ける連絡を返し、その日からあれよあれよと二日以内に、心身を悩ませていた新プロジェクトからおりることになった。

こんなにもあっさり状況が好転することがあるのかと、ポカンとしてしまった。新プロジェクトで期待に応えられなかったのは少し悔しい。しかしもう本当に今の仕事を辞めようかとちょっと検討しはじめていたくらい心身が追い詰められていたし、別のプロジェクトという新たな成果発揮場所もある。こんなうまい具合の乗り換えタイミングはそうそうない。

これは文学フリマに出ろってめぐり合わせなのかもしれない。

その日友人と馴染みの居酒屋に行ってこの仕事の顛末と、文学フリマのお誘いのことを話すと、あっさり「文学フリマいいじゃん、タイミングもいいじゃん、絶対出なよ」と背中を押された。夫にも。
友人も夫も、なにか作品をアウトプットすることを、是としてきた業界にいるからかもしれないが、躊躇なく私の背中を押した。それがなんだか心地よかった。

そうと決まれば出店名を今決めよう!なんて、居酒屋で盛り上がった。
作品の方向性は何も考えていなかったけれど、物語をつくった経験はないので、まずは日記のようなエッセイがいいだろう。私は食べることが好きだから、食べ物にまつわるエッセイにしようかな。
なーんて、一文字も原稿はないのに自然と口をついででたアイデアたち。意外と無意識に私の頭の中で考えていたのかもしれない。

「食べ物ってことなら、ぼんじりって語感かわいい。ぼんじりシンジケートを出店名にするのはどう?」
と居酒屋のメニューをみながら友人が言う。さすが作詞作曲をライフワークにしているだけある。いい語感だ。
あはは、ぼんじりシンジケートいいねそれ、なんて言いながらお酒を飲んで楽しんだ。
明日にはスタババさんにきっと返信しよう、そうしよう。楽しい予感と解放された感触にひたりながらお酒を楽しんだ。

会計のために店員さんを呼び、お釣りをもらうときにその店員さんに一言聞かれた。
「あのう、耳に残っちゃって…ぼんじりシンジケートってなんですか?なにかたくらんでるんです?」

・・・・・やっぱりぼんじりシンジケートいい名前じゃん、と友人が得意げになり、本当にこの出店名で11/20の文学フリマ東京にでることになった。
翌日スタババさんに返信をすると、それはそれは喜んでくださって私も涙が出るかと思った。というかちょっと出た。


仕事だけが私の生活じゃない。こういうことがしたくなったときにお金を出せるように働いているんだ。私も自己表現をしていいんだ。そっか、私一人でこれから出すもの全部決めるんだ。・・・・・・楽しい予感とまだみぬ不安で頭がふわふわした。
本づくりのことも、文章のことも、出店のルールも、なあんにもわからないけれど、出ると決めたらとても嬉しい気持ちになった。

これから宣伝も兼ねたいので、このnoteをまた日記としてこつこつ更新しようと思う。
皆様よければどうぞお付き合いください。そしてよかったら当日、(まだ原稿もできあがっていないけれど)正夢にしたいので遊びに来てください。

別にツイッターのフォロワーも多くないし、文章だって上手じゃない。宣伝がうまいとか、絵を描くとかもできない。
でも、自分で自分のことを少し褒めたいのでなにかを形にしてみたい。
ぼろぼろになる予感しかないけれど、私なりにがんばります。
https://bunfree.net/event/tokyo35/

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