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テイラースウィフトとイギーアゼリアに見る、ギリギリセーフとギリギリアウトの違いとは?(オススメMV #11)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の11回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回は、「2人の女性シンガーのアクション映画風のMV」を比較し、アウトとセーフの違いについて解説します。
アウトは「好きなんだけど、うーん...」というMVで、セーフは「これ以上やったらNGだけど、ギリギリの線で素晴らしい!」というMVです。

ではまず、「セーフ」の素晴らしいMVを紹介しましょう。
テイラー・スウィフトの「Bad Blood ft. Kendrick Lamar」です。

なんか、スゴイMVですよね。
ここまで映像が強いMVはなかなかないのですが、不思議と楽曲もちゃんと前面に出ていて、ギリギリのところでバランスを取っています。
奇跡的なMVと言わざるを得ません。

テイラー・スウィフト(Taylor Swift )は、アメリカのシンガーソングライターですが、映画にも出演している才色兼備の女性です。
年齢はまだ30歳と若いのですが、グラミー賞をなんと既に10回も受賞していて、末恐ろしいとはこのことです。

さて、このMVがなぜ素晴らしいのか?
その秘密を紐解きましょう。

まず、わきを固める出演者がすごすぎます。
ケンドリック・ラマ―(Kendrick Lamar)が客演している段階でイケてますが、彼独特の変則的なラップではなくきちんとメインの楽曲を活かすように歌っているところがスゴイ。
そして、出演している女優陣もセリーナ・ゴメス(Selena Gomez)などそうそうたる面々で、女優の皆さんを見ているだけでも飽きません。

続いて、MVと楽曲の時間のバランスが絶妙です。
MV全体では4分05秒とこの手の映画風なMVにしては短く、さらに楽曲がない冒頭のシーンが36秒とギリギリのところでとどめつつ、楽曲の終了とともにMVも終わるという割り切りも凄くて、もう敬服します。
冒頭の無楽曲のシーンも、楽曲のフレーズが背景に流れているので完全な無楽曲ではないことも制作側の工夫がうかがえます。
つまり、このMVはアクション映画風ではあるものの、あくまでメインは楽曲にあることを意識しているのです。

そして、映像の構成や効果も秀逸です。
女戦士それぞれが各シーンごとに武器や戦い方が違うため、常に新鮮で見ていて飽きません。
しかし、カット割りがアクションMVにしては長めで、かつスローモーションの割合も少ないため、たくさんの出演者、多くの武器や戦い方を映像の中で表現している割にテンポよくすっきりと観せています。

ここまで出演者がすごくて武器等のネタも良ければ、もっとそれを強く押し出して映像表現したくなるところを、押さえて全体のバランスを取り楽曲を引き立たせるのは、なかなかできません。
ビジネスでも、力のある人が前に出て引っ張っていくやり方もありますが、あえて押さえてチームとしての動きで全体成果を向上させる進め方もあり、要は全体での成果を上げるために最適な方法を模索する必要があることを教えてくれます。

次は、「アウト」のMVです。(アウトといっても、大好きなMVですので、その点誤解なく!)
イギー・アゼリアの「Black Widow ft. Rita Ora」です。

これまた特徴的なMVですよね。
タランティーノ監督の「キル・ビル」っぽい映像で、ちょっとヘンテコ感もありますが、それを含めていい味出しています。

冒頭のカフェのシーンから、本編に切り替わった直後のシーンなどは、いわゆる「絵になる」映像で、このMVの最初の見どころです。
また、お気に入りのリタ・オラが出ているのも高評価のポイントだったりします。(実はイギーアゼリアよりもリタオラが扮している役どころを見たくてこのMVを見ている感もあります)

イギー・アゼリア(Iggy Azalea)は、アメリカで活動していますが、元々オーストラリアのシンガーソングライターで、年齢はテイラースウィフトと同じ30歳です。
ちなみに、客演しているリタ・オラ(Rita  Ora)は、イギリスのシンガーですが、私の好きなDJのカルヴィン・ハリスと昔付き合っていた、というのも不思議なつながりと思っています。

さて、このMVですが、上にも書きましたが「絵になる」映像もたくさんあり、リタオラの役どころもいいのでお気に入りのMVではありますが、「うーん...」というか「なんでなの?」という点が多々あります。
山盛りありますが、いくつかご説明しましょう。

まず1点目、映像だけのシーンが長すぎます。
冒頭の楽曲がなく映像だけのシーンが1分42秒、楽曲が終わったあとの映像だけのシーンも20秒と、楽曲のないシーンが2分以上あります。
MVの全体で5分30秒とチョット長めですが、楽曲のあるシーンが3分28秒と全体の60%ほどしかありません。
制作側があえて狙ってやっているのは分かるのですが、「MVは楽曲のためにある」という私の基本概念に反しており、大いに残念なところです。
(もちろん、そのパターンが好きな方もおられるとは思うので、あくまで私の主観で、ということです)

2点目は、詰めの甘い映像構成です。
例えば、飛んできた手裏剣を北斗神拳の二指真空把のように指でキャッチすしますが、その直後にまたまた飛んできた投げ矢を指でキャッチします。
格闘シーンの技も同様に同じパターンの繰り返しがほとんどです。
同じパターンの繰り返しでも、そこに意味があれば(何かの効果を狙っていれば)いいのですが、安易な繰り返しはMVの質を低下させます。

3点目は、安易な映像効果です。
このMVはスローモーションの利用率がメチャクチャ高いのです。(時間的にはテイラースウィフトのMVの倍以上です)
スローにするとよさげな映像に見えますが、多用しすぎると映像にスピード感が無くなり全体的なメリハリもなくなってきます。
また、特徴のない暗い映像が続くシーンが多いのも工夫が見られません。

他にも、分かり難いストーリー構成、キル・ビルの世界観がかぶってしまいオリジナリティが薄く感じてしまういるなど、残念な点が多々あります。
もちろん、長い冒頭のシーンなど制作側でのこだわりが見て取れますが、楽曲を活かす方向になっていないのでは?ということです。

と、色々書きましたが、それでもこのイギーアゼリアとリタオラのMVはお気に入りですのでちょくちょく観ます。(しかし、冒頭のシーンは飛ばして見るのですが...)

皆さんも再度、上の点を気にしながら観てみてもらえませんか。
「なるほど...」と、違った切り口でMVを楽しめると思います。

今回は2人の女性シンガーのアクション映画風のMVをご紹介しました。
テイラースウィフトのMVと比べるのはイギーアゼリアにはチョット酷な気もしますが(予算もぜんぜん違うでしょうし)、逆に少ない予算でここまでよく作ったとも言えますし、両方好きなMVであることには変わりません。

ではまた次回に。

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