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ヘンテコだけど観てしまう。サンティゴールドとイーラのチープVS荘厳の一騎打ち!(オススメMV #95)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の95回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回はヘンテコ系MVの特集をお送りします。
本連載では「ヘンテコ」というキーワードで何回か特集を組んでいますが、今回はマジメに取り組みながら表現が正反対なヘンテコMVを2つ紹介します。

まず最初は、「チープな表現でヘンテコ」なMVです。
サンティゴールドの「L.E.S Artistes」です。どうぞ!

不思議な趣(おもむき)のある楽曲とMVですね。
出だしのチープさはもとより、中盤以降のチープさもヘンテコの極みですが、マイナスイメージはなく、繰り返し観てしまう中毒性のあるMVです。

サンティゴールド(Santigold)はUSのシンガーソングライターで、2001年にパンクロックバンドのボーカルとしてデビューし、2007年に1stシングルでソロデビューしたのち、現在もソロアーティストとして活動しています。
2008年の1stアルバムのリリースを皮切りに2枚のアルバムをリリースしましたが、一旦活動を休止していました。
しかし、今年から活動を再開し、先月2022年9月に4thアルバムをリリースしたばかりです。

この「L.E.S Artistes」は、1stアルバム「Santogold」の1stトラックに収録されシングルカットもされている楽曲です。
この1stアルバムのタイトルを見て何か気が付きませんか?
そうです、サンティゴールドは途中で改名した名前で、デビュー当時はアルバム名と同じサントゴールド(Santogold)だったのです。
比べてみると、絶対「サンティゴールド」のほうがいいですよね。

サンティゴールドは様々なアーティストともコラボしていて、私の大好きなアーティストやプロデューサーと組んでいるのがうれしい限りです。
この連載でも取り上げたN.A.S.A.の「The Spirit of Apollo」や、メジャー・レイザーの「Free the Universe」にも客演しています。
(過去の連載はコチラ→「やっぱりN.A.S.A.はイイ!」「メジャーレイザーって何者だ!?」

では、「L.E.S Artistes」のMVの解説に参りましょう。
最初に馬に乗ったサンティとその両脇に立つ二人の女性の映像から始まりますが、その背景は手書きと思われる森の絵画であり、女性の楽曲にあわせた踊りもあわせてチープとしか言いようのない映像からスタートします。
カット割りや馬の動きも洗練されているとは言い難いのですが、それが妙にいい味を出していて、マイナスイメージが全然ないのも不思議です。
画面が切り替わり、街中の様子が映し出されますが、町の人々の殺戮の様子がコミカルなアイテムで表現されており(腸はソーセージ、頭はスイカなど)、これまたチープなのですが、このMVのオリジナリティーになっているところが見て取れます。
様々な要素が組み合わされた楽曲も不思議な趣があり、かつ映像とのマッチングも素晴らしく、完成度の高いMVとして仕上がっています。

ちなみに、「L.E.S Artistes」の曲名は「Lower East Side Artistes」の略で、詩の内容もその名の通りニューヨークのロアーイーストサイドのアーティストを揶揄した内容になっています。
目立つことや取り上げられることだけを目標に活動するアーティストの、本質を表現せず大げさな表現に終始する様をMVの映像で揶揄しているようですが、それにしても冒頭の馬に乗るサンティと二人の女性など、ヘンテコな表現が多いのが不思議です。
なぜだろう?と調べてみると、なんと昔のカルト映画の「ホーリー・マウンテン」(The Holy Mountain)のオマージュのようです。
そう考えると、このMVもカルト的な映像ですね。

さて、1つ目のMVは「チープな表現のヘンテコMV」でしたが、2つ目はそれとは真逆に「荘厳な表現のヘンテコMV」。
イーラの「Ameno」です。

中世の騎士が登場する荘厳かつ重厚な映像のMVです。
重みのある楽曲も映像と完全にマッチし、見ごたえのあるMVとなっています。

イーラ(+eRa+)は、フランスの音楽グループというかユニットで、エレクトロニックミュージックがベースですが、色々な要素を混在させている不思議なユニットです。
結成は1996年と20年以上のキャリアがあるのですが、この「Amano」はデビュー同年にリリースされた1stアルバム「+eRa+」からシングルカットされた楽曲で、曲名の通り「アメノ」を連呼する楽曲になっています。
イーラとはこのMVで出会ったのですが、グレゴリオ聖歌を思わせる楽曲と、中世の騎士が登場する映像に魅了され、いつものごとくアーティストの詳細や楽曲の内容を調べてみました。
すると、歌詞はラテン語を模した架空の言語で書かれており、歌詞としても意味がなく、語感(言葉の響き)だけで表現されているようです。
MVの映像も基本となる背景やストーリーがあるわけではなく、つまりこの楽曲もMVも「意味はないが、視聴者に感動を与えるために考えて作られた」というワケです。
荘厳な楽曲とMVですが実は内容は全く意味がない...というある種、ヘンテコの極致ともいえますね。
しかし、至ってマジメに作られていることが、映像や楽曲からも伝わってきますので、これはこれでぜんぜんアリかと思います。

なお、この「Ameno」のMVは2バージョンあり、もう1つは少女が主人公なのですが、今回紹介したバージョンのほうがお気に入りのためこちらを紹介しました。(もう1つのバージョンはコチラ→少女が主人公のバージョン

さて、今回のヘンテコMVはいかがでしたでしょうか。
表現はチープだが内容には意味が詰まっているサンティゴールドのヘンテコMVと、表現は荘厳だが内容には意味がないイーラのヘンテコMV、ぜひ見比べてみて楽しんでください。

ではまた次回に。

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