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なんでもアリの鬼才、田中秀幸の「こんなアイデア、なんで思いつくの?」(オススメMV #14)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の14回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回も前回、前々回に引き続き邦楽MVを紹介します。
前回は岡村靖幸さんと児玉裕一さんのお話が中心でしたが今回はMV界の鬼才、田中秀幸さんのMVを3つご紹介します。

まずは、このMVを観てみてください。
電気グルーヴの「Upside Down」です。

このMV、メチャクチャいいでしょ!
若い女性が自室で踊っている映像をつなぎ合わせ、絶妙なエフェクトを掛けて制作されたMVです。

今はTikTokがポピュラーですが、このMVがリリースされた2009年当時はニコニコ動画で「踊ってみた」が出始めたころで、このMVも「踊ってみた」からインスピレーションを得たのではないかと推測しています。

絶妙なエフェクトと楽曲との同調もさることながら、このMVのすばらしさはそのアイデアです。
固定カメラで撮影した自室で踊る女性の映像 ”だけ” をつなぎ合わせてMVを作る...こんな映像のアイデア、思いつきませんよ、普通は。

そして、今から考えると、このMVにはダイバーシティというか多様性が表現されているように思います。
登場する女性のダンスは様々で、その自室の様子もそれぞれです。
しかし、その全員が臆することなくダンスを踊り披露しています。
つまり、ダンスで表現することが重要であり、その種類や環境は関係ないんですね。
まあ、そんなことを田中秀幸さんは狙っているのかどうかわかりませんが、そう思わせるところも含めて、スゴイ映像作家と言わざるを得ません。

さて、続いてのMVは、同じく電気グルーヴから「Missing Beatz」です。

このMVもスゴイですよね。
なんといっても、このアイデアがスゴイ!
なんでこんなアイデアが出てくるのか、田中秀幸さんの頭の中を覗いてみたいほどです。

紹介した2つのMVは、両方とも電気グルーヴの楽曲です。
電気グルーヴは、石野卓球さんとピエール瀧さんを中心として結成されている日本が世界に誇るテクノユニットです。
昨年ピエール瀧さんの事件の関係でYouTubeからオフィシャルMVが軒並みなくなりましたが、少し前にYouTubeに再び掲載されたのでここで紹介できるようになりました。

電気グルーヴの最大のヒット作は「Shangri-La(シャングリラ)」ですが、他にも良作は多々あり、そのひとつが最初に紹介したMVの楽曲、「Upside Down」です。
この「Upside Down」は、フジテレビの深夜番組「ノイタミナ」の「空中ブランコ」という作品のオープニングでも使われ、その映像もなかなか気に入っています。(エンディングは「Shangri-La」で、これもなかなかです)
ちなみに、ノイタミナの「空中ブランコ」は作品自体も素晴らしく、機会があれば観ていただければと思います。

最後に紹介するMVは、UAの「プライベート サーファー」です。

このMV、上で紹介した2つのMVとは違って、インパクトはないですよね。
日常の一場面を切り取った、という感じです。

まあ、楽曲自体やUAさんのキャラから考えて、奇抜な映像とはマッチしないでしょうが、それにしてもここまでフツーにこだわって描くとは田中秀幸さんらしくないとも言えます。

しかし、このMVの特徴はカメラアングルにあり、アパートからバス停に向かう途中の商店街の映像が秀逸です。
最初は普通に走る女性を撮っていますが、雨が降る商店街を駆ける女性のシーンでは、商店のお店の中から商店街を駆ける女性をスローモーションで長回しして撮影しています。
スローモーションなので、それぞれのお店の内側をじっくりと見ることができますが、あえて女性のみにフォーカスさせずお店にも注意を向けさせることによって、女性を取り巻く様々な暮らしの存在を教えてくれます。

これも、そこまで田中秀幸さんが考えたうえかどうかはわかりませんが、結果としてその効果が出ていることは事実です。
いずれにせよ、このカメラアングルとスローの長回しにのアイデアが無ければ、この作品は日常生活を表現した平凡な作品に終わっていたことは確実です。

なお、UAさんについてはあまり存じ上げず、皆さんにUAさんの紹介ができないことは容赦ください。(UAさんを知ったもの田中秀幸さんのMVがきっかけでして...)

実は、田中秀幸さんとの出会いはMVではなくTV番組です。
その番組は「スーパーミルクちゃん」。
フジテレビの深夜番組内のアニメですが、「カワイイ系のキャラクター」+「メチャクチャなパロディやブラックなネタ」という組み合わせは新鮮というか普通ではありえず、のちに続く「OH!スーパーミルクちゃん」も継続して観ることになります。

そして、電気グルーヴの「Upside Down」のMVで再会し、「やっぱり、この田中秀幸という方は、普通じゃない...」と確信するに至ったのです。

今回のMV、いかがでしたでしょうか。
田中秀幸という、まさしく「鬼才」としか表現できない映像作家のMVをお届けしましたが、残念なことに最近田中秀幸さんのMV作品のリリースが少なく寂しい限りです。
ぜひとも、またびっくりさせるアイデアのMVをリリースしてもらいたいと切望してやみません。

さて、3回連続で映像作家という切り口でMVを紹介しました。
次回からは洋楽MVの紹介に戻りますが、まだまだ紹介したい邦楽MVもたくさんありますので、機会をみて紹介させていただきます。

ではまた次回に。

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