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勤労感謝の日。働けることに感謝を込めて

21歳の長男は工学部で学ぶ大学3年生。

基本的に学業優先ななか、今月から新しいバイトを始めた。
まだ出勤回数は10回にも及ばないけど、彼なりにこのバイトを通し働くことの気づきを得たらしい。
若い子が働いて得るものを親の目線で考えてみた。

内向的な大学生の仕事観

大学生になった2年前、小遣いくらいは自分で稼ごうとスーパーで品出しのバイトを始めた息子。

朝6時から9時までのバイト。
家の目の前のスーパーで、「その後の予定に影響が出ない」のがそのバイトの魅力だったらしい。

塾講師や家庭教師など、単価の高いバイトの方が効率いいのでは?と親は思ったりしたけど、それをしてる友だちから「準備が多くて結局割が悪い」「けっこうブラック」…いろんな噂を聞いて惹かれなかったらしく、この早朝バイトを1回生の間続けた。
「一人で黙々と単純作業をするから楽」だったらしい。節約家の私に育てられただけあって仕送りの範囲で小遣いは足りたみたいで、このバイトで得たお金は一円も引き出さないまま、引っ越しに伴いバイトを辞めた。

2回生になる前の春から世の中がコロナ禍になり、オンライン授業に伴い前期を地元で過ごしたのもあってバイトをしない時期があった。

後期から新キャンパス近くでの一人暮らし生活を再開。
「社会人になったらバイトは出来ない。この経験は人生において必要よ」と親の私は言う。もしかしたら嫌々だったかもしれないけれど、彼はラーメン屋でのバイトを始めた。まずは皿洗いからだった。
程なくして緊急事態宣言下になり、お店は時短営業。彼の働く時間の枠は閉店以降で、たくさんの登録学生がシフトに入れなくなったらしい。

そのためかどうなのか、バイトへの意欲が薄まったみたい。
電話で話しても、お正月に会った時も「バイトは?」の質問に不機嫌そうだった。

バイトして少しでも多く稼ぎたい!
仲間も社員さんもお客さんも好き!
バイト先での出会いが楽しい!
と思っていた私からしたら不思議なのんびり具合だった。

聞かれたくなさそうなので聞くのやめたけど、多分行きづらくなってフェイドアウトしたようだった。

もちろん長所もたくさん知ってる。だけど心のどこかで「もう少しガツガツしないと…」と思ってる欲深い私もいた。

弟の出現

この春から弟が大学生になり、二人が一緒に暮らし始めた。
ザ次男キャラの弟は「大学生になったらこうする!」を決めていて、高校卒業と同時に地元で短期バイトをこなし、4月以降のバイトも見つけてから新天地へ行った。

初めて住む場所でも躊躇なくあちこち行く。
「自分の人生で18歳は今しかないんよ。ジッとしとけってどういう意味⁈」
緊急事態に突入し大学に通えなくなった時は怒りながら文句の電話をかけてきたが、緊急事態の影響を受けないバイト先だったおかげで休むことなくバイトは続け、人間関係も手に入れ楽しく上手に暮らしているように見えた。

兄はと言えば、またもや引っ越しした新居をまずは構築。そして3回生の学業をしっかりとこなすのが第一というコツコツ型(ザ長男キャラ)。
バイトもしないとと思うけれど、お金使いたい訳でもないし緊急事態だし…と消極的に考えているうちに時間が経ったのではないかと思う。

対照的な長男と次男。
それぞれに長所がある。
親は一番よく分かっている。
でも、年長者である長男は、行動力に富んだ弟を少しだけすごいなと思ってるみたいだった。弟は弟で、自分より頭のいい兄が羨ましいらしいけど。

弟の出現と、同級生たちが就職先が決まり社会人となっていく(我が子は浪人しているので一年下)のを見て、仕事について考えることは増えてるみたいで、一緒に飲んだ時にはそんな話もしていた。

考える機会で変わっていった

ある出来事が起き、
否定していた意見をとりあえず受け入れてみようとしてる?と思える行動をするようになった。
守備的に生きていたのが攻めの姿勢もとるようになった。

バイトに関しても「あーかもしれない。こーかもしれない」と避けていたことに挑戦し、とりあえず応募してみるようになった。

それまでは、一つ応募して答えを待って…気づいたら返事ないまま数週間…みたいなこと繰り返してたみたいだったから、内向的なりに頑張ったみたい。

面接に行ったカフェで、志望動機に「コーヒーが好きだから」と書いているのを見て「そんなん書かれたらご馳走しないわけにはいかないよ」とサービスされたのも嬉しかったみたい。

決まったら教えてくれるだろうけど連絡はない。
バイト面接に落ちても諦めず、切れずに応募してるんだろう。

分かってくれる人は必ずいるよ。がんばれ!

構い過ぎず、じっと我慢の親だった。

働くって縁

そしてやっと縁が繋がった。
家から少し離れた居酒屋。近くで済ませたい彼にしては遠かった。

やれやれ少し一安心、と思い、11月の飛び石連休は、紅葉を口実に息子らに会いに行った。

土曜はバイト入れてない、と言ってたのに長男はバイトに行った。

どうやら店長さんのことが大好きで
「入れんかなぁ…?」と言われたら力になりたかったらしい。
月曜に提出のレポートもあるなかで、自分なりに調整してスケジュールを組んだみたい。

0時過ぎにバイトから帰ってきた長男と2時間くらい語った。

「店長さんの人柄にお客さんが集まってくる店」
というのが彼の見立て。
お客さんと店長さんのやり取りも楽しくて、自分も仲間に入れてもらい会話しているうちにあっという間に時間が過ぎるとのこと。

少し遠いのはネックだけど、それを乗り越えて通うだけの価値はある。
行けば行くほど勉強になる。

言ってくれるじゃないか。
そういう出会いを経験して欲しかった。
お金を稼ぐ、というのも大切だし、より多くを稼ぎたい、と思う欲も大切。だけど、数字だけで表せない労働の醍醐味ってのがあると思う。

「働くって縁なんだってわかった」

長男は言った。

「一つ目のバイトをした時もらったお金を使わないままでいると、働く意味が分からなかった。甘えてちゃいけないから働かなきゃと思って始めたけど、誰とも会話もしなかった二つ目のバイトは正直めんどくさかった。
(今の店で)お客さんと話していると世の中にはいろんな考えがあって人って温かいと思える。厳しいこと言う人もいるけど、優しい人がいてくれるからそれも勉強だって耐えれる」

どんな仕事でも需要があるからこそ存在するわけで、働くことは尊い。

決して裕福に育ててないのになぜかおぼっちゃんげに育ってしまった。けれど、人の縁を感じてくれたなら働く尊さにも気づいてくれたなら嬉しい。

専門的な分野で言ったら私よりはるかに知識が深いけど、私からしたらまだまだひよっこだ。
働く大変さだってまだ語ってくれたら困る。

そんな彼の語りたい気持ちを聞いてあげられて楽しかった。

勤労感謝の日。
周囲の労働に支えられ生きてきたひよっこが少しずつ感謝を受ける側になっていくのが楽しみだ。








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