なつおわる

初夏。資格試験勉強に明け暮れる日々だった。
辟易していた。普段勉強することがなくて集中力が続かない。ぼんやりsnsを眺める。勉強する、仕事をする、家事をする、そんな毎日だった。
ほんの出来心で裏垢を始めた。
すぐに連絡が来た。
あまりにも刺激のない日々にたくさんの連絡は甘い誘惑だった。
何十人と連絡をとった。5人と会って、3人とした。
1人の人に夢中になった。
家に行って、泊まって、話をした。腕の中で眠ることは初めてだった。自分の腕で誰かに寝てもらったことはあったけど、どれだけしんどいかわかってたから申し訳なかったけど暖かくて心地よくて嬉しかった。
他の人として比べたけど、彼とする以外意味のないことだと思った。

こんなこと書いて、何を美化しようとしているんだろう。ただ、セフレを好きになって、捨てられた。それだけ。
それだけの夏。それだけじゃなかったのに、今私の頭の中はそればかりに支配されてる。悔しい。こんなに好きになって、執着してしまったことが。
友達といっぱい遊んで、旅行に行って、資格に受かって、風邪ひいて、仕事をしていたのに。
それ全てが彼に無視されていることに頭が支配されてる。彼との思い出、香り、楽しいことばかりがフラッシュバックする。
数回しかあっていない、ただの同い年の男。
同い年だったかも、名前も、家も、趣味も、全てが偽りかもしれない、セフレ。

優しかった。面白くて私にはない価値観を持っていた。今まで聞いたことのない音楽ばかりを趣味にしていた。入っていた部活もスポーツ系で、私はずっと文化系に所属していて学校生活でも一切交わることのない男だったと思う。
甘いお酒が好きで、日光に弱くて、閉所も苦手らしく、水族館に行けないらしい。
私は苦い酒が好きで、日光に強くて、暗いところが好き。
全てが合ってないねって笑い合った時苦笑いしていた。
私があなたに好きと感じていた時、あなたはきっと私に無関心だったんだろう。
楽しかったな、楽しくなかったらよかったのにな

私といた瞬間の少しでも君が楽しいと思えていたらいいのにな。
かっこよくて、背が高くて、細くて、アクセサリーのセンスはないけど、すごく女性に対して気を遣えるあなたはきっと今までもこれからもモテるんだろう。
私が好きになってしまったくらいだから。
君が裏垢をやめて、素敵な彼女が隣にいますように、と願うほど私は君に無関心にはまだまだなれそうにない。

夏が終わって、君が連絡してきたら私は連絡を返すかなと時々思う。
きっと連絡が来ることはないし、私ももう送ることはしない。
でももしその時が来たら君への執着が解放されるかもしれない。

そんなことがなくてもこの執着が消えて、心から愛せる、そんな人に出会えたらいい。いつか。
あなた以外で。

さようなら、好きな人。恋楽しかったな。
執着を、好きな人がいる楽しみ、苦しみ、辛さ、楽しさ、快楽、可愛くなろうとする行動、ダイエット。君のおかげでよく捗った。

望みすぎだけど、ちゃんと言葉にしてほしかった。興味がなくなった、好きな子ができた、仕事が忙しくなった、地元に帰る、なんでもいい。
理由をつけて諦めさせて欲しかった。
ずっと私を惑わさないでほしかった。
ここで犬のように骨を咥えて、ありし日の楽しかった思い出のかけらを握りしめてずっと待ってたかもしれない。
今日までがそうだったかのように。

でも、絶対送らない。すきだった、とか。
まあブロックされてるか。

終わり。夏。
恋活、力入ってきたな。秋にかけて。
こりない。

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