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「本を語る」2024/6/12「開国か攘夷か」


❶[1BOOK]
「日本史探訪19 開国か攘夷か」
角川書店編 (株)角川書店 角川文庫5369
1985年5月25日初版発行 1989年2月20日7版発行 

❷「本を語る」
私は日本史が好きで、特に幕末史については興味を持っています。大河ドラマでも、2〜3年に一度は「幕末」が取り上げられ、いろんな人物を主人公として、たくさんのエピソードが紹介されました。
[思いついたこと]
大学で「幕末史」という科目を取り、テキストを読んだ時、「ペリーの来航から明治維新まで、たった15年しかない」という事実に気づいたのです。その短い期間に、坂本龍馬や高杉晋作、吉田松陰など、たくさんのヒーローが輩出し、また消えていったのです。
この本は、明治維新のトリガーとなった「ペリー来航」に始まる「開国か攘夷か」という大論争を取り上げ、8人の人物像と3つのトピックから構成されています。
[そして]
吉田松陰、井伊直弼、佐久間象山といった有名人とともに、「鳥居耀蔵」(蛮社の獄で、開国を主張する人たちを大勢処刑した幕末の奉行)や「江川太郎左衛門」(反射炉を作った西洋流兵学家)、ペリー提督(黒船の主である米海軍軍人)を取り上げています。しかも、それぞれ対談形式になっていて、松本清張さんや奈良本辰也さん、江藤淳さんなど、この本の発売当時の重鎮たちが揃っています。先ほども述べた通り、何度も映像化されているため、例えば「坂本龍馬」はいろんな俳優さんが演じており、具体的なイメージとして、どの役者さんを思い浮かべるか、というのはなかなか興味深い問題です。
[しかし]
本来、「事実は一つ、解釈は無数」なので、ドラマであり映画であり、そして小説であれ、脚色された部分を鵜呑みにするのは危険なことです。そんな中で、この本を見返してみると、「写真」がたくさん登場するのです。前半で登場する人物は「肖像画」だけですが、佐久間象山や坂本龍馬、勝海舟などは「写真」が残っています。それらは貴重であるともに、時代の流れを象徴しているようにも思います。300年近い鎖国の間に、世界情勢も文明も、すっかり変わっているのだという認識があったか、なかったのか。「開国か攘夷か」という、後から見れば、勝敗は歴然としている問題を、真剣に議論していたことすら滑稽に思えます。「尊王攘夷」の先鋒だった長州藩が、イギリスとの戦闘によって大敗を喫し、早々に開国へと主張を変え、はっきりと「討幕」つまり徳川幕府を倒すという目的を掲げました。もう一つの維新の雄、薩摩藩は、江戸から離れていたこともあって、比較的早くから外国の文化を取り入れ、西洋式の軍隊を育成していました。
[だからこそ]
藩主つまり「リーダー」の資質と決断が、大きな意味を持っていたのです。一方の徳川幕府にも、阿部正弘や井伊直弼、勝海舟といった人物がいたにも関わらず、「リーダー不在」に近い状態だったために、維新という大きな波に飲まれてしまったのだと思います。そして黒船から15年の1868年、「明治」となったわけですが、そこからはまた別の闘いが始まるのです。日本史を学ぶとき、一番ワクワクするのは「幕末」ですが、新しい国の制度を作っていく過程や、列強と呼ばれる先進国に「追いつき追い越せ」と躍起になる「日本」、そして度重なる戦争と、敗戦によって何度も試練を受けながら今に至る「およそ180年」は、日本人が必ず知っておくべき歴史であると私は思います。


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