ソーシャルグッドに付きまとう、労働か活動か?という問題とモラルハザード

ソーシャルグッドって何?

なんだかここ一年ほどで「ソーシャルグッド」界隈で炎上が頻発している。

「ソーシャルグッド」というのは、いわゆる「生きづらさを持った人を支える」といったタイプの支援系の”動き”といったところ。

障害者支援や不登校支援、マイノリティ支援など対象はさまざまである。

組織形態はいろいろだ。法人であることもあるしそうでないこともある。そしてビジネス形態をとるかとらないかといったところもかなり幅がある。

 

ソーシャルグッド界隈にたび重なる被害と炎上

 

東京シューレで起こったの性被害問題について新聞報道があったのは2019年だったが、その後当該法人で声明が発表されたのは2020年2月。

https://www.shure.or.jp/2020/02/10/news-3/

これも結構批判があった。


2020年の5月末に、べてるの家関連のシェアハウス、べてぶくろの性被害の告発があった。


「当事者研究ネットワーク」に声明が発表。その後、当事者研究の研究者である熊谷晋一郎氏が声明を発表するも、直後に削除。以降関係者は沈黙している。

週刊女性が特集記事を出している。

  

そして2021年、NPO法人soarで発生した性被害に関連して同法人の理事解任が発表されたが、その後被害者の1人が、同法人の対応についての疑義を訴えるとともに、ソーシャルグッド界隈の加害(二次加害含む)抑止構造が薄いことについての問題提起をするに至る。

 

そしてさらにNPO法人soarの理事である、櫻本氏((株)cotree代表)でもある)が、二次加害的要素の高い発言をツイッターでしたことから、炎上が拡大。

 
NPO法人soar、(株)cotree のWebメディアに寄稿していた方が記事の取り下げ、講師契約していた方がcotreeとの契約打ち切りなどの話もいくつか聞こえてきた。


上記の件それぞれについては、問題にしている方もたくさんおられるので今回は私は取り上げない。

 

私が気になったのは「労働」という側面である。

 

無報酬の依頼原稿というおはなし

一つ気になる記事を発見した。

cotreeアンバサダーとして、cotreeのWebメディアに記事を書いていた方のものだ。

これ、タダ働きさせられていたということだろう。

直接的にサービスの紹介に繋がるものばかりではなく、何気ない日常エッセイを書いた日もありました。それでも、cotreeの持つ世界感を損なわないよう内容に配慮しながら、cotree_advent_note(cotree専用マガジン)の毎週更新をおよそ9ヵ月続けました。

 

結末としてはこういうことになったようだ。


交通費はともかくWebメディアの原稿報酬については著作権、著作使用権(及びその独占権や期限)等について、取り下げ条件含め詳細に検討の上、報酬受け取ることで新たな縛りが生じない形での解決をと祈る(としか言いようがない)。

 

金銭的な解決が行われたところで、声を上げなければタダ働きのままだったのでは?という部分で疑念が残る話である。

さて、ここからまた連想ゲームで思い浮かんでしまったのが以下のnote。 

冒頭が強烈だったので引用する。

ピアスタッフとして働いていた時、残業代が出なかった。かなり苦しく悩んでいた。向谷地生良氏に相談したが「私は労働ではなく活動だと思っている。だから苦しいと感じたことはない」と退けられた。私は「自分の当事者研究が足りない。もっと深く理解しないと」と自分を追い込んだ。

これもまた「言わなければタダ働き」といった案件である。 

べてぶくろの母体であるべてるの家の向谷地生良氏は、共同総合研究所(労働者協同組合等の研究をする民間機関)の理事でもあるので、氏の思想としては「労働」と「活動」の線引きが曖昧なのかもしれない。

  

ともあれ、二件をつなぐ「言わなければタダ働き」ということはソーシャルグッド界隈では結構あるのではないか?という気がしてならない。

 

「活動」と「労働」の線引きを曖昧にすることで労働搾取ができてしまうという構造が起こりやすいのではないだろうか?

「善き活動の輪に入る」ということが「生きづらさ」を抱えた人にとって魅力的に映りやすいということが、そのことを起こりやすくしているように思う。

さらに思い出したのが「2016年の当事者研究全国交流集会」での物品販売の件である(私もスタッフとして参加した。但し、当事者研究については異論出し続けていることを表明した上での参加である)のであるが、当日遅めに会場に入ってみると、本来の予定では会場内では行われないはずだった、べてるの家の書籍販売が行われていて驚いた(本来禁止ということを打ち合わせでは聞いている)。

まあ、「稼ぐ」が売りのべてるの家が、せっかく大阪まで出張るのに稼げないのは酷だろう…と、最寄駅近くに販売スポットを設けていたのにも関わらず…である。

当日は会場の音響環境にヘロヘロだったために、後日どういう経緯かを聞いてみたが…「モノが送られてきた」「はじめちゃった」である模様。

どうにも「なし崩し感」が否めなかったのと、「この販売行為の主体は誰(どこ)?、受益者は誰?」という気持ち悪さが残った。

 

いわゆる支援活動において「当事者の発信」というのは「ピアサポート」として重要な側面を持つことは確かではあるし、当事者が主体となる動きも少なくないのではあるが、「善き事の輪」という輪が、モラルをなし崩しにしてしまいやすいという側面には注意を払うべきだということを感じる昨今である。

 

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