読書感想文〜水を縫う〜
読み終わったときにその本をぎゅっと抱きしめてしまうような本に、久しぶりに出会いました。
「水を縫う」寺地はるな 著
以前から仲良くしてもらっている、石元みとんさんのこの記事を読んでから、ずっと「読みたい本リスト」に入れていたけど、なかなか読めなかった。
読めなかったのは、しばらく読書ができなかったからで、読書ができなかったのは、刺繍やら編み物やらで目の疲労がひどかったから、、って思っていたけど。
読み始めて楽しくなれば、寸暇を惜しんで読んでしまうし、なんとなくスマホ見てぼんやりしちゃうような時間も、本を手に取ってしまうものなんだなって発見しました。
これからは、スマホと一緒にいつも本を置いておこうかな。
このみとんちゃんの感想文を読んだのはずいぶん前で、おもしろそう!って思ったことは覚えてるけど、書いてる内容は忘れている。だから、もう一度読み返す前にこれを書いています。
同じような感想文になるのか、全く違う視点で読んでるのか、書き終わってから答え合わせするのが楽しみ!
まず、わたしがこの本を好きだなって思ったのは、章ごとに主人公(というか語り手?)が変わること。登場人物のそれぞれの目線で描かれてるところ。
整くん(ミステリという勿れの)が言うところの、事実はひとつだけど真実はひとつじゃないみたいな。ひとつの出来事もそれぞれの見方や感じ方で全然違う出来事として記憶されてるってことを、わたしは最近とてもよく感じてるんです。
え!あの出来事をそんな気持ちで見てたのか!わたしと全然違う!みたいなことがあると、その人の目線で見てみたくなる。
それが叶うのが、小説のこの書き方じゃないですか。だから好き。おもしろい。
✳︎
刺繍が好きな男の子、清澄。
姉の水青。
お母さんのさつ子。
おばあちゃんの文枝。
別れたお父さんの全。
さつ子は清澄が男の子なのに手芸が好きなことを嫌っている(それは別れた夫がデザインや縫製の仕事をしているからでもあるんだけど)し、心配している。
文枝は清澄に手芸を教えているし、好きなことをやったらいいって思っている。
自分の話になってしまうけど、わたしは娘たちがやっていること、やりたいこと、目指していることを、全肯定し全力で応援してきた。
それは「子育て法」とかではなく、自分以外の人の気持ちを否定したり、なにかを強要したりすることなんて、わたしにはできないから。たぶん自分に自信がないことの表れだと思う。
わたしの娘たちはそのせいで、キツかったかもしれないと思っている。こうしろああしろとか、これはダメあれはダメって言われた方が、その通りにするにしろ反発するにしろ、先がみえやすいってことあると思うから。
なんでも肯定されたら、無限の道の中から自力で選ばなきゃならない。選んだ道で苦しくなっても誰のせいにもできない。それはとってもつらいだろう。
小説の話に戻ると、清澄のおばあちゃんの文枝の「あんたには失敗する権利がある」という名言。母親のその言葉に苦しんでいたさつ子。
習っていたピアノをやめたいって言ったときも、「あっそう。先生に電話しとくわね」ってあっさりと認めてくれた。それは、「好きにしていいよ」って言葉の裏側で、どうでもいいと思われてるんじゃないか、わたしに興味がないんじゃないか、と感じていた。
だからなのかさつ子は、自分の子どもたちのいろいろに口出しをする。
わたしは、さつ子とは真逆な母親だったと思う。文枝にはとても共感する。でもこうして、さつ子目線の気持ちを読んだら、なるほどって思った。
母親の「あんたの好きにしたらいい」って思いを、「ほったらかしにされてる」って受け取ったのなら、「普通じゃないことが心配」って思うことは愛情表現なんだろう。
自分で選べる自由は、失敗の責任を全部背負う辛さをともなっているから。
そんなことを、たくさん考えました。
あと、この小説の好きなとこは、水青のウエディングドレスを作る清澄に、全がアドバイスして、いろんな種類の布を試すとこ。すごく美しいシーン。かわいらしいものやリボンやフリルが苦手で、光沢のある布も嫌がる水青が選んだのはガーゼ。ガーゼのウエディングドレス!!!想像しただけで素敵。ちょっとここで泣きそうになった。
あと、清澄の友達のくるみちゃんの言葉。刺繍が好きでずっと刺繍だけしていたいって言う清澄に、石が好きなくるみちゃんが言う。
これはほんと大好きな言葉。ずっと覚えておきたい。
✳︎
わたしに孫が生まれてから、娘が生まれた頃のことや、わたしの母が娘にしてくれてたことをたくさん思い出していた。孫がこの先どんなふうに育っていくんだろうってことも、たくさん考えていた。そこにわたしはどう関わっていくんだろうとか。
だからこの本は、わたしにとって今読むべき本だった気がしてます。読めてよかった。
みとんちゃん、おすすめしてくれてありがとう。
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