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僕たちはあの日、見えない花火の音をずっと聞いていた①


私は病に侵されている

段階はSTAGE4
非常に重篤である

病の名は「方向音痴」

命に別条はなく、身体を蝕んでいるわけでもないが

とにかく進行を妨げる
目的地を遠ざける

めんどくさいことこの上ない厄介な病

効果的な治療法はなく
いまのところ不治の病となってしまっている

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昨年7月某日

出会い系サイトYYCにて掲示板に対してメッセージが届く

みなみ「プロフィール笑いました
よかったらお話しませんか?」


相手のプロフィールを確認

みなみ/25歳/職業パティシエ


プロフィール画像はニ枚

一枚は彼女自身の写真

画像1

めちゃくちゃ可愛い!



もう一枚はケーキの写真
どうやったらこんな複雑な形を表現できるんだろうかというくらい細かい花の形を模した飴細工が乗っている

画像2



さっそく返信


すけ「ちょっと待ってください
プロフィール画像に天使とケーキが写っていてスマホを二度見して確認してしまいました。

が、やはり天使でした

こちらは普通の人間ですがよかったら仲良くしてください」



みなみ「天使じゃないです笑 こちらこそ仲良くしてください」


すけ「このケーキすごいですね! IKKOさんの楽屋に置いてありそうな花みたいなのが乗ってて」


みなみ「ありがとうございます笑
IKKOさんの楽屋は行ったことないですけど最近、お店で作ったんですよ」


すけ「神の御技! 目から鱗が落ちました」


みなみ「大袈裟だけどありがとうございます笑」


すけ「電話で直接この感動のお礼を言わせていただけませんか?」


みなみ「お礼なんてやめてください、、
1時間後なら電話いいですよ」



一時間後


みなみ「もしもし」


すけ「アニョンハセヨー!」


みなみ「あ、、アニョンハセヨ」


すけ「神の手を持つケーキ職人と直接お話できて光栄の極みです」


みなみ「よくそんなぺらぺら言葉出てきますね笑」



笑う声がころころ跳ねて可愛い
ベッドの上でよがる声も聞いてみたい

などと気持ち悪いことを考えながら、スマホを握り直す


すけ「晩ご飯は何食べたの?」


みなみ「今日はカレーでした」


すけ「神の手が作りしカレー?」


みなみ「違います笑 お母さんが作りました」


すけ「美味いよね みなみ母の特製カレーは」


みなみ「食べたことあるんですか?何者なんですか?笑」


すけ「みなみのおしめもよく替えてやったもんだ」


みなみ「親戚のおじさんですか?笑」


すけ「ちょっと見ない間にこんなに大きくなっちまって」


みなみ「お久しぶりですおじさま笑」


すけ「彼氏はできたのか?」


みなみ「できてないからここに登録してるんです笑」



会話のテンポもよく話していてとても楽しい




みなみ「…って感じで飛び降りたら足の骨にヒビ入っちゃって」


すけ「ええ、まじ、、!?」


みなみ「そのまま緊急入院しました」


すけ「wwww」


お互いの失敗談を披露し、大爆笑

彼女の話は面白くて不思議で引き込まれてしまう


こんな感じで
気付いたら2時間以上経過


みなみ「すけさんと話してると楽しくて時間経つのめちゃはやいですね」


すけ「うん、いま同じこと思ってたわ」




ドキドキした

天然氷のふわふわかき氷みたいな彼女の空気感が本当にタイプで、普通に好きになってしまいそう

というかもう結構好き


こんな子とはもう出会えないかもしれない
これはじっくり確実に攻めたい

生来の非モテマインドが顔を出してしまい、いつものようにガンガンいけなくなってしまった

その場ではいったんアポ打診はせず電話を切る




翌日、彼女からLINEが届く

みなみ「昨日は電話楽しすぎて夜遅くまでごめんなさい でも本当に楽しかったです」


文面を確認してニヤニヤしたすけは
思春期ど真ん中の高校二年生のようだった


すけ「こちらこそ時間を忘れるくらい楽しかった また電話しましょ」





その日から彼女とのLINE交換が本当に楽しかった

恋愛において付き合う直前が一番楽しいとよく言われるがまさにそれ


みなみ「お仕事終わりました すけさんの声で癒されたいです あとでちょっと電話してもいいですか?」


すけ「お疲れ様 こちらも充電切れです いつでも電話いいよ」


みなみ「やった お風呂出たら電話するね」


もうこれ確実にいける
そう錯覚するほど毎日の甘いLINEと時々電話を重ねた





1週間程度経過して
彼女からあるLINEが届く


みなみ「すけさん 岡崎の花火大会一緒に行きませんか?」


画像3



続く

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