ITV『Trigger Point(トリガー・ポイント)』でロンドンテロリズムに立ち向かう爆弾処理班を理解する
現在ITVで放送されている、クライム・スリラー『Trigger Point(トリガー・ポイント)』がすごい。
『ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班』、『ボディガード 守るべきもの』のジェド・マーキュリオがエグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねているが、今回脚本を担当したのはDaniel Brierley。しかしながら、マーキュリオがメンターしただけあって、その緊張感は最大だ (しかし、なんとなくメロドラマ感が否めないのは、やはりマーキュリオではないからなのか?)。
ラナ・ワシントン(ヴィッキー・マクルア)は、かつてアフガニスタンに派遣された元軍人。現在はその知識と経験を生かして、ロンドン警視庁の爆弾処理班で任務を遂行する。
テロリズムを題材にしたドラマは数多くあるが、爆弾処理班という見地からロンドン地下に蔓延るテロ組織やその手口、モグリやネットワークをも明らかにしていこうとするプロットがスリリングな作品だ。爆弾がどのように作られ、仕掛けられているかという実用的な知識に加え、時間(タイマー)との戦いや爆弾に見せかけた花火が実はダミーだったりするというトリックなどもあり、彼らがその処理を施す瞬間は手に汗を握る(私は緊張しすぎて、目を被ってしまう)。
このドラマに関して、実物の爆弾処理オフィサー、マシュー・ミドルディッチMBEは、本日付けの英イブニング・スタンダードにて、「よくできているが、すべてを語っているわけではない」と述べている。ミドルディッチ氏は、24年間にわたり、イラク、アフガニスタン、北アイルランドにて軍隊に従事し、大佐として引退した人物で、2019年、ロンドン・ブリッジのたもとで、テロ犯ウスマン・カーンが通り魔的に通行人を切りつけた事件にて、犯人が装着していた、にせの自爆装置を調査したチームの責任者だった。
危険と隣り合わせの任務に関して「決して尻込みなんかしない」と語るミドルディッチ氏。「爆弾装置まで近づいていくことを”Long Walk”と呼ぶんだけど、ためらわずに集中するのみさ。我々は高度に訓練されているからね。イギリスは爆発物処理に関しては世界をリードする技術を持っている」。
ヴィッキー・マクルア演じるラナ・ワシントンのように、爆弾製造工場のライトスイッチをつけたり、自爆装置ベストの導火線を取り除いたりするようなことを実際に行うのか、という質問に対して、「絶対にない。あれは完全にドラマだね」と暴露しつつも、「実際に仕事をどうやるかには敢えてアドバイスしたくないんだ。セキュリティ上の理由でね」と続ける。
警官や元軍人、その他のスタッフ100人から構成されるミドルディッチ氏のチームは、ロンドン全域にわたる、化学・生物・放射性物質・核および爆発物不審物による事件・事故に備えて常時警戒している。彼らは、戦時中に使われた不発弾を処理したり、ロボットを使って不審車を破壊したりなど、毎年約1000件もの任務を遂行している。
『Trigger Point』のエピソード1では1000万人がTVに釘付けになり、ITVの過去12ヵ月に放送された番組で、一番高い視聴率を記録している。しかも、先月の当ドラマの放送開始以降、 SO15(ロンドン警視庁の対テロ司令本部)への志願者数が一気に増えたというから興味深い。仕事内容に関しては、インハウス・トレーニングをしっかり行うため、入隊時に特別な資格は必要ないということだ。
英カウンター・テロリズム警視庁のツイートでも『Trigger Point』が常時取り上げられている。
マシュー・ミドルディッチMBE(Member of the Order of the British Empire 大英帝国五等勲爵士)
「我々が実際に業務を遂行する方法とは完全に一致しているわけではないけど、いいドラマだと思うよ。我々のチームの仕事内容と素晴らしい業績が、このような形でスポットライトを浴びることができるのだから。とは言え、我々は昼夜を問わず遂行されている対テロ作戦の一端を担うほんの一部に過ぎない」と、あくまでも爆弾処理班はカウンター・テロリズムチームの一つであり、ロンドン警視庁全体で職務を為果せることを強調している。
確かにドラマでも実際に爆弾に手を施すのは熟練されたエキスパートだが、警察官や軍人、スナイパーなど多くのプロフェッショナル達がそれぞれのタスクを厳密に遂行することによって、テロ対策戦略が実地されていることが描かれている。
ITV『Trigger Point』のトレイラー。全6話。
昨夜第5話が放送されたが、ラナは失敗すれば大惨事となりかねない爆発物と対峙している。来週の最終話でどのような結末を迎えるのか、知りたくて待ちきれないのだが、実はメロドラマの方の三角関係も気になっている。
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