おんなのこと布の表情に胸がぎゅっとなる【大竹夏樹個展】行ってきた
先日、大竹さんの個展に行ってきました。
数年前、テレビでお見かけして以来、念願の生の作品鑑賞です。
※残念ながら、すでに展示は終了しております。
>作品の感想
鮮やかだけれど優しい発色。色の組み合わせ、重ね方が派手なのに下品ではなく、ドキドキワクワクするようなおんなのこたちに胸がいっぱいになりました。
なんだか懐かしい気持ちになるのは、昔持っていたヒロイン(アイドル)たちへの憧れでしょうか。
たくさんの色と染めによる重ね合わせで一見「足し算」に見えますが、主線が白(マスキング)という引き算から始まっているんですよね。
そこがなんとも言えぬ奥深さを出しているのかもしれません。
勝手に深読み
>ろうけつ染とは
彼女の作品が「ろうけつ染」で描かれているということで、ろうけつ染について調べてみました。
ろうけつ染とは、溶かした蝋で描画することで染まらない部分を作る染めの技法。蝋で丸の線を描いて青く染めれば青面に白の線が残り、青く染めた布に蝋で丸の線を描いて黄色く染めれば青と黄色の重なった緑のような面に青の線が残った布が出来上がる。
そのほか、染めの技法としては友禅染めなどがあります。こちらは糊で染色を防ぐ方法。友禅染めとろうけつ染の違いのひとつとして、「ヒビ」の表現があるそうです。蝋が冷えて固まりヒビが入ると染色の際にもマスクした部分に一部ヒビ形に色が入るというもの。
厳密には仕上がりや工程にはもっと多くの違いがあるのであるのでしょうが、事前に調べた際にはこの程度の違いしかわからず、果たして染めの中でもなぜ「ろうけつ染」なのかしらと思いながら個展会場にむかったのでした。
>ろうけつ染かどうか、は手段の一つに過ぎない
実際の作品を見てみると、ろうけつ染かどうかは素人目にはわかりませんでした。もとより、これまで布製品をそのような目で見たことがないのだから。
ただ、見ているだけでドキドキして胸の奥がくすぐったくなるような鮮やかなイラストがある。女の子たちの瞳の力に惹きつけられる。懐かしいような憧憬を覚えたのです。
「あ」と思ったのは、発色が中学生の頃にお小遣いの限りを尽くしてコツコツ買い集めていたカラーインクのピンクの発色にとても似ていること。
この黃よりも紫よりのビビッドで透明感のあるピンク色。まだ漫画のカラーがアナログで、少女漫画の多くはカラーインクで描かれていたころのと。(偏見かもしれないけど、少年漫画はコピックのイメージ)
わたしはこのピンクのカラーインクを眺めているだけで嬉しくてワクワクしていたのでした。
なので、大竹さんの作品は懐かしいワクワクと憧れが詰まっていて胸がぎゅっとなるんだと思いました。
数年前の個展のパンフレットもおいてあって、その中の作家コメントの中に「ろうけつ染めが、布に発色するのが美しいと思った」とあり鑑賞する前の疑問が吹き飛びました。
彼女の中のモチーフを表現する手段としてろうけつ染めを選び、そしてその手段を究めているのだなぁと解釈しました。
また、色のにじみ具合、重なり方、発色は染め物特有の表現になっているのでしょう。
なにごともそうですが、明確な目的やビジョンがあってそれを達成するには何を手段として如何にして突き詰めるか…図らずしもすぐカタチにとらわれがちな自分を反省することもできました。
ふだん展示会では作品を写真におさめることはしないのですが、どうしても手元に持ち歩きたい気持ちが強く写真に取らせてもらいました。
壁紙に設定して、幸せな気持ちを味わっています。
ただ、やっぱり実物の表情というのがあるので、なるべく生でみたいですね。
ぜひ次は東京とかでも!(やっぱり遠かった…)