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今日からサマータイム、時間の概念って何だろう?

起きたら時計が一時間進んでいた。
きっと日本では得られない経験だろう。

今日からフランスはサマータイムに切り替わった。一年に二回、夏時間と冬時間に切り替えのタイミングが春と秋にある。

夜中、寝ている間に(3月と10月の月末の土曜日の深夜2時に)一時間、時間が進んだり遅くなったりするのだ。
そうして目覚めた翌朝は、いつもならもう明るい時間なのにまだ暗いな~とか逆バージョンもありで、夕食時にはいつもより明るいね~とか暗いね~とかの会話が、家庭内で繰り広げられるのだ。

フランス(ヨーロッパ)全体で一斉に時間が変わるとはいえ、当然ながら太陽や月のコントロールはできないので今までと違う明るさや暗さを味わったりする。

私は朝、窓の隙間から挿し込む明るさや鳥の鳴き声で自然と目覚めるのが心地よいと感じるのだが、サマータイムに切り替わった今朝は昨日と同じ時間に起きてもまだ暗かった。(本来は5時半の時間なのだが、すでに深夜に1時間進んでいるので6時半になっている状態)

日本で生まれ育った私は、気づけばフランスにきて10年以上が経った今でもこの感覚は何度味わっても不思議としか言いようがない。

早起きしても失われた一時間がどこに行ってしまったのか、探しようもないうえに取り戻せる手立てもなく、なんとなく損した気分になる。
その分、冬は一時間巻き戻るのでちょっと得した心持ちで、優雅に朝寝坊ができるという年に一度の特権を味わえるのだ。

日本では夏も冬も関係なく、こんなふうに勝手に時間が変化してることはない。(日本人からすると当たり前だろうが)
だから余計に、人間の都合で一時間という大切な時間が減ったり増えたりするなんて、時間っていったい何なんだろう?と答えの出ない問いを心の中で投げかけずにはいられない。

フランスで生まれ育った子どもたちや夫は、生まれたときからこのシステムの中で生きているので、当たり前のこととしてすんなりと受け取っているんだろうけど、家族の中では私だけが納得できない気持ちをぼんやりと抱えている。

今朝、確認するとスマホやパソコンなどは何食わぬ顔で自動的に夏の時間に切り替わっていた。

私がフランスに移住してきた2012年当時は、まだスマホが少しずつ普及し始めたころだったので、こんな便利なシステムはまだ世の中に組み込まれていなかった気がする。(もしくは私が気づいてなかっただけかもしれない)

家じゅうの時計を一つ一つ手作業で一時間、進めたり遅らせることで「あぁ、今日から夏の時間が始るんだな」と強引に意識を切り替えるしかなく、当時の海外在住の日本人のブログなどでは「この日に人との待ち合わせするときは注意が必要」などと、丁寧に指摘してくれていたことはまだ記憶に新しい。
(フランス人でも夏・冬時間の切り替えをうっかり忘れていて、この日にこれまでどおりの時間感覚で待ち合わせをしたら、どちらかが待たされる羽目になるとのことだった。)

ほぼ一人一台スマホを持っているのが当たり前となっている今の世の中では、こんなうっかりしたすれ違いはなくなっているのだろうけれど。
古い時代のそんなエピソードを何となくほほえましく感じられるのは、自動的に組み込まれたシステムに自分の意志とは関係なくスポっとはめ込まれている今の時代だからこそ沸きあがってくる、懐かしさと心の抵抗の表れなのかもしれない。

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