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父のmemoremo①:ご挨拶、闘病のはじまり


実際に父に誂えたmemoremoを、4回に分けてご紹介します。

父につくった時には『memoremo』という名はまだ誕生していませんでした。
そして、ただただ父のために書きたいことを全部詰め込んだため、長文になりまして。
父のmemoremoは今サンプルとして作っているものの倍のサイズ、文章量だったのです。

思いに突き動かされてつくった父のリーフレット、それがmemoremoの原点。

今日は【ご挨拶&闘病のはじまり】です。

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【父、最期の日々】

4月12日(日)、10時23分。
父が息を引き取りました。
満73歳。
現代の日本人男性の平均寿命よりだいぶ短く、わたしたち家族が予想していたより随分と早い旅立ちでした。
せっかちな性格のひとでしたが、こんなところまで急がなくてもよかったのに!と思わずにはいられません。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、父にとって最愛の妻である母と、近くで暮らす娘のわたしと家族だけでの父の見送りとなりました。
みなさまと父とのお別れのひと時をご用意できなかったことを、どうかお許しください。
その代わりと言っては僭越ですが、娘のわたしの視点で綴った父の闘病と最期の様子をお伝えできればと思い、ここに文章をしたためる次第です。

【闘病のはじまり】

父に肺がんが発覚したのは、2019年9月3日(火)。
その少し前から調子が悪く。
診ていただいている総合病院で「肺に影があリます、1ヶ月経って影が大きくなっていたら検査しましょう」と8月に言われ。
1ヶ月後の検査で影が大きくなっており、細胞診で肺がんを確認した……というのが、事の始まりです。

間質性肺炎の持病があった父には、治療面でいろいろと難しい壁が立ちはだかりました。
元来診ていただいていた総合病院へ9月30日(月)に入院、まずは放射線治療をスタート。
入院中に遺伝子検査を行いましたが、抗がん剤は父の遺伝子に合うものが見つかりませんでした。

父は威勢のいいひとではありましたが、実はとても繊細な心の持ち主でもあり。
放射線治療の影響で食事があまり喉を通らなくなり、つらいとこぼす日々。
だからと言って、治療をやめて命を落とすのは嫌だと言う……。
そんな父へ、10月31日(木)、わたしから手紙を渡しました。
父に手紙を書くのなんて、おそらくわたしの結婚式の時以来です。

「治療をするかしないか、どんな治療を選択するか。
 決めるのはパパ自身だから、どう決めてもその意思は尊重します。
 でも、どう決めたとしても“覚悟”を持って臨んでほしい。
 その覚悟には、どこまでも付き合うから。
 パパの覚悟に付き合って可能な限りのサポートをすることが、近くで暮らすわたしにできる最大の親孝行やと思って、わたしも覚悟をもって臨むつもりでいます」(抜粋)

その後、がんセンターへ行ってみよう!と、母やわたしに加え、父の親友が説得してくださり、ようやく四国がんセンターへ転院したのが11月。
そのときには、放射線治療を終えたばかりでできることがあまりなく、様子見になりました。

ところで、父が肺がんと診断されたときの病期はステージ3C。
肺の縦隔にもがんがあり、厳しい状況だったのです。

事態がさらに暗転したのは2019年も終わりを迎えようとしていた12月27日(金)。
年内最後の診察にがんセンターへ連れて行ったら、右脇腹の痛みを訴えた父。
「何もしていなくても痛みますか?」という主治医の質問に、父より先にわたしが答えました。
さっき待合で座っていたときにも急に痛みを訴えたんです!と。
それを聞いた主治医の顔色が変わり、「年明けに予定していたCTですが、今日撮って帰ってもらえますか?」とおっしゃいました。
……主治医には察しがついていたのでしょう、骨転移していることが。

その日、わたしだけが2度診察室に呼ばれ、右肋骨・脊椎・肝臓へのがん転移を告げられました。
ステージ4、予後半年の診断です。
その日は、主治医にお願いして両親には事実を告げないでいただきました。
もし父が今日事実を知ってしまったら、年を越すどころの話じゃなくなる! 母は父と四六時中一緒にいるから隠しきれないだろう……そう考えてのことです。

父が、待合室で
「今日、先生は〝がん〟ってあまり言わなんだねぇ」
と嬉しそうに話していた姿は、今思い出しても胸が詰まります……。
主治医の口から「がん」という言葉が出ないだけで、そんなに嬉しいのか……なおのこと父には本当のことを言えない。
その時はそう考え、事実は父の妹である叔母にだけ告げ、叔母とわたしの胸の中にしまい込みました。

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その2【病との闘い】へ続きます。

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