冷静な赤子によるある日の日記
2月14日
ボクはきょう、いつもとひとあじちがうボクでちた。
たっぷり5時間ねんねして、おむつもゴキゲンのまま変えてもらいまちた。
ミルクが冷めるのも、しずかに待ってたんでちゅ。
もらったミルクもごくごく飲んで、いつも通り半分くらい飲んだあといったんゲップちて、またごくごく飲んで……最後のゲップもスムーズにしたんでちゅ。
そのあとも、ママが連続テレビ小説『まんぷく』を見るのをジャマちないよう、声も出さずにおとなしくだっこされてまちた。
おなかにいるときから見ていた萬平さんが、ようやくチキンラーメンを完成させまちたね。戦時中、敵の飛行機に狙われるシーンで、自分の無力さを嘆いた萬平さんが「うわあああああっ」と声を出したから、びっくりちてママのおなかをボコボコボコボコとたたいちゃったのを思いだちまちた。
「これはお話だからだいじょうぶだよ!」
って、ママ言ってまちた。外に出て一緒に見られるなんて感慨深いでちゅ。
まんぷくが終わったのを見計らって、ボクはうとうとすることにちまちた。
そっとふとんに置かれたのがわかったけれど、何も言いまちぇんでちたよ。だって、今日のボクは「冷静」な赤ちゃんなんでちゅから……。
***
昨日のお昼頃の息子が「一気に20歳くらい精神年齢が進んだんじゃないか」と真顔にならざるを得ないほどデキる乳児っぷりを見せつけてきたので、動揺してダンナに送ったLINEを再編集してみた。
ちなみに『まんぷく』のくだりは実話。
息子は胎児時代、聞きなれない声や音がすると、驚いて激しく動くことがあったのだ(印象的だったのがこの「萬平さんの叫び声」、あと「ダンナが久しぶりに起動させたスプラトゥーンの攻撃音」、そして「『獣になれない私たち』第1話でガッキーが発した第一声」)。
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うちの息子は、とにかくおむつ替えが大嫌い。おなかが空いて目を覚ました時など、「まずおむつを換えましょうね~」と声をかけると、手が付けられないレベルでギャン泣きを始める。
検診などで看護師さんやお医者さんに驚かれる自慢の脚力を用いて、両親を蹴っ飛ばしてみたり、逆に足を突っ張って、古いおむつを脱がされることを拒否してみたり、それはもう必死の抵抗を試みる。
だからもう、ゴキゲン状態でおむつを換えさせてくれるだけで、こちらとしては大感激だったのに、その後もゆっくり朝ドラ視聴(ミルクの時間にかぶってしまった時は、だいたい泣き声がうるさくて台詞が聞こえず、再放送を見直す羽目になる)させてくれるわ、布団に置いても急に起きて泣いたりしないわ、もう人が変わったとしか思えなかったのだ。
息子がギャン泣きを始めたとき、なるべく
「泣かないで~」
とは言わないようにしている。
おむつが気持ち悪いとか、外される時の感覚が嫌とか、そもそも先にミルクが飲みたいのに待たされるのが嫌とか、彼には彼なりの泣く理由があるはずなのに、それを無視して「泣かないで」なんて、親(というか私)の勝手な押し付けだよな……と思ったのだ。
そこで私が代わりによく使用するのが
「冷静に、冷静に……」
という台詞(※もちろんどの育児書にもそんなことを言えなんて書いていないので、まったく真似しなくて構いません)。
もっと言えば、
「ギャン泣きしても疲れるだけで、いいことないよ。冷静にしていよう。ママは今君にミルクを作ってあげているのだから、普通に待ってたって、哺乳瓶が出てくるんだよ。泣いて体力使うのは損じゃないかい? 冷静に、冷静に……世の中泣いたり怒ったり、感情をあらわにしてもあんまりいいことないのよ……」
の略である。
ちなみに、このクソ長い台詞をすべて言って聞かせることもある。
赤子だって関係ない。
コミュニケーションは真剣勝負である。
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というわけで、昨日の息子はまさに「冷静な赤ちゃん」であった。
「毎日の言い聞かせが、生後1か月にして通じたのか……⁉」
とポジティブシンキングをするくらいに。
もちろんそれは幸せ過ぎる勘違いでしかなく、昼にいい子ちゃんをしていた分、夜には目をランッランと輝かせて、置けば泣くわ抱いても泣くわいつもの量のミルクじゃ足りねえと泣くわ、もうえらいてこずらされたのだけれども、そんなに一気に精神年齢が高まって「冷静」になられても、それはそれで寂しいんだよねきっと……。
息子の気まぐれな冷静さに振り回される、まったく冷静じゃない私だった。