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「駐妻」宣言と、アイデンティティ・クライシス

この記事は、2023年7月30日にこちらのブログに投稿したものをnote用に編集しなおしたものです。

「自分の食い扶持は自分で稼ぐ」を信条に就活・転職をして、大手IT総合職として働いてきた私に、自分の人生で一度も考えてなかった未来が到来します。


夫の海外赴任に帯同します

夫が海外赴任することになりました。

夫は、(私と違って)寂しがりやです。
彼とは大学の頃からの付き合いで、私はボッチ上等で好きな授業を好きなだけ取りましたが、彼は年度初めに友人とシラバスをにらめっこし、大教室についたら「お前らどこにいる?」とメールをし合っていたそうなのです。

私は一人の時間を愛し、夫は共有する時間を愛する。そんな彼なので、単身赴任はかわいそうです。

そして、子どもたちもパパが大好き。たまに夫の仕事が早く終わると、鍵が開く音が聞こえただけで娘は目を輝かせて「パパだ!!」と一目散に玄関まで迎えに行きます。

子どもたちが小さいうちは、家族はひとつに。それは、誰に言われたのでもなく私が自分で到達したポリシー・美学なのです。

だから、夫の海外赴任が決まった時、私は迷わなかった。
家族みんなで、一緒にいる。


会社を辞める日が来るなんて

夫に宣言されてから、私は会社イントラの検索魔になりました。

海外 リモート

休暇 制度

私の勤め先はフルリモート・フルフレックスなので、海外リモートでも勤務できるかも、と考えたのです。

しかし、結果はNG。かろうじてヒットしたのは、「再雇用制度」でした。

これは、退職してもある一定の年数以内であれば再雇用の権利が与えられる制度です。
ということは、夫の赴任先に着いていくということになると、私は会社を辞めなければなりません。

帯同ビザでは就労できない

何かしら仕事をしたい私は、「赴任先でパートタイマーの職につけないか?」と考えました。
しかし、そこにはビザの問題がありました。

夫は駐在員として働くので「就労ビザ」ですが、私の滞在の理由は「夫と家族だから」なので、「帯同ビザ」になります。

夫の赴任先であるタイでは、帯同ビザでは就労できません。働くためには、自ら「就労ビザ」を取得する必要があります。

しかし、就労ビザを取得すると、夫の会社が提供してくれる駐在生活における家族の特典は、享受できなくなります。病気をしても、トラブルに巻き込まれても、自力でなんとかするしかない。
それが、私にできるだろうか?

タイに渡ってからは生活の基盤づくり、特に子どもたちのケアに奔走することになるでしょう。自分のキャパも考えて、私には、現時点で就労ビザを取得する勇気が出なかった。

ここまできて私は悟りました。「私は、専業主婦になるのか」。


まさか私が専業主婦に

仕事をしている自分に誇りを持っていたことが、ようやくわかりました。

ダメ社員ではあるけれど、一応は会社の看板しょってるという自負もあったのです。
私にはこれができる。こういう成果が出せる。今は育休復帰したばかりでポンコツだけど、じきに立ち上がりも成功して、もっと仕事ができるようになる。
もう育休取得の予定もないし、これからはずっと働き続けられる。もっとがんばれる。そう考えていた矢先の出来事でした。

私は、会社を辞める。会社の看板を引きはがされる。
ワーママでもなくなる。母になってからずっと考えてきた、ワーママの人生とか、働き方とか、キャリアとか、育児とか、そういうの全部、無駄になる気がして。


「アイデンティティ・クライシス」

「働くこと」「ワーママであること」は、私のアイデンティティだったのです。

それが崩れると、急に、今から何をしても、なんの意味もないように感じられてきました。

それでいて将来のことが不安で、「また仕事に戻れるのかな」「もうキャリアは積めないな」「教育費、大丈夫かな」「もっとジュエリーが欲しかったな」なんて、ずっと考えて、手が止まってしまう。
「いま、ココ」にまったく集中できなくなってしまったのです。

私は、ネット検索魔になりました。同じような経験が欲しい。みんな、どう感じてるのか知りたい。
そうしていくうちに、とある駐妻の方のブログにたどり着きました。

そこで、「アイデンティティ・クライシス」という言葉に行き着いたのです。

自己喪失。 若者に多く見られる自己同一性の喪失。 「自分は何なのか」「自分にはこの社会に生きていく能力があるのか」という疑問にぶつかり、心理的な危機状況に陥ること。

コトバンク

この説明を読んだ時、これだ!と思いました。

私はきっと、いま、「アイデンティティ・クライシス」にあるんだな。

この感覚、何かと似てませんか?
そう、産後の母親たちです。


母親になった時も感じた、「私は終わった」感

私は以前、母になった日のことを、ブログでこう書きました。

ああ、私の人生は終わったのだな、という考えが突如降ってきました。それは衝撃的な啓示でした。

これから私は、もう一生、自分の思い通りにはならない。夫と夜出歩いたり、着飾ったり、タクシー帰りになるまで仕事に打ち込んだり、そんなことは一切できない。ずっとずっと、この子のために生きていく、生きていかなきゃ。

ブログとTwitterを始めて2ヶ月、これまでの経緯と思うこと

きっとこの時、私はアイデンティティ・クライシスに陥っていたのだと思います。
でも私は、それを3年ほどで乗り越えた。

親であったって、主体的に生きていい。我慢せず、自分の人生を歩んでいい。

そして「ワーママ」として、ようやく第二のアイデンティティを確立したのに、またそれを奪われる。

私たち母親は、なぜこんなにも、人生に裏切られ続けるんだろう。努力を当たり前のように、まったく尊重されることなく、ないがしろにされてしまうんだろう。

そんな「被害者思考」のドツボにはまっていったのです。


アイデンティティは、らせん式に発達する

でも、私は一度、アイデンティティ・クライシスを乗り越えてるんですよね。そして、新たにそれを確立した。

人生100年時代の今日、一つのアイデンティティだけでは生きていけなくなってきました。
私のように急に職を失うこともあれば、ジワジワと「このままではいけない」と気がつく時もある。

「私とは、なにか」「これからどう生きるか」といった危機に瀕すると、退行するか、自己を再定義しもう一度確立するかに分かれるそうです。

そう、人間のアイデンティティは、らせん状に発達するのです。


出典:アイデンティティのラセン式発達モデル(岡本、1994)より図を簡易化


私は、諦めない限り、また自己を確立できるということに希望を感じてきました。きっと、「これが、わたし」を見つけられる。

発達心理学においても、人間の精神はらせん状に発達すると言われています。(参考:『完全カラー図解 よくわかる発達心理学』)
だから子どもは、できていたことが急にできなくなったり、かと思えば爆発的に伸びたりする。

そう考えれば、「退行」は悪いことではなく、次の発達へのステップだということがわかります。


「わたし」は私しか確立できない

いつか、「かっこいいわたし」になれると思っていました。

仕事ができる自分。認められる自分。頭もよく、お金もある自分。

でも、育休復帰してからわかった。私は、そうはなれない。

だからせめてと、ワーママとしてお金は稼ぎつつ、複業を見つけたいと考えたのです。私には居場所が必要だった、「逃げ場」という居場所が。

そんな中、「ワーママ」という居場所が私から消えた。

なんとなくですが、自分の人生の延長線上に、「理想のわたし」がいると、漠然と考えていたんですよね。今やっていることを漫然と続ければそこにたどり着くのだと。

ですが、「アイデンティティのらせん状モデル」を見てわかったのは、「わたしを確立できるのは自分しかいない」ということでした。
時間でも、仕事でもない。逆なのです。私が、どう生きるために行動するのか。その行動の結果こそが「わたし」になるのです。

とすれば、行動を積み重ねることでしか、「わたし」を確立できないということです。

「行動力のなさ」は私のウィークポイントでもあります。
目の前のことを愚直にコツコツ取り組むのに向いてない頭デッカチな私ですが、それでも「行動がカギ」なのは、今回のことで理解しました。

「とにかくやる」が苦手なら、「戦略的に積み重ねる」しかない。

今まで身をゆだねてきた「会社員」という立場から、役割も国も越えて大海原に投げ出された気分です。


一緒にがんばらせてください

私はその辺の平凡ワーママで、しかもこれからはワーママですらなくなってしまうし、野心家でもないし、家族が第一優先の「その辺の主婦」。

でも、まだ夢を見ます。

これから死ぬまでの60年、楽しいことの連続じゃなかろうか。

私はまだ諦めきれません。自分の人生を生きている実感が欲しい。生きている途中で、自分の人生を子どもたちに転嫁させることはしたくない。

じゃあ、「自分の人生」って? 私を生きる、って、なんだろう。

そんな答えもなく、よしんば答えが出たとて人様から見たらしょうもないようなものかもしれない、私の生き方を探る期間をただただ過ごすことになると思います。

それはつまり、私の逡巡を記したこの、日記ともいえるような記事が、誰の役にも立つ可能性がないってこと。

それでも、この記事を読んだ方の一人でも、「私も明日からがんばろう」と思ってもらえたら、すごく嬉しいなと思います。

これから一緒に、自分の人生を生きる旅を伴走させていただければと思います。


ここまでご覧いただきありがとうございました。
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