20代で聞いた、私の仕事観をつくった上司の言葉
20代の頃、上司との面談で言われたひとことがある。
それが今もわたしの仕事像をつくっている。
駆け出し企画者の奔走
もう10年も前の話になる。その当時わたしは、エンジニアやデザイナーと一緒にモノを作るという仕事をし始めたばかりだった。
とりあえずわたしがたたき台を作って、それをエンジニア・デザイナーと一緒に揉み、是々非々の議論をしたものを、上層部にプレゼンする。
しかし、返ってくるのは「それアナタの感想ですよね?」な指摘。残念なことに、10年前と言えば、そんな指示でも受け入れざるを得ない時代でもあった。
わたしは面倒くさくなって、上層部の指摘をすべて取り入れた。エンジニアやデザイナーに文句を言われても「いや、〇〇さんの指示なんですよね……」といえば、みなが飲み込んでくれた。
そういう仕事をしていたわたしに、ある日、上司は優しく言った。
「それじゃあ、まみさんがいる意味がないよね。」
上司との面談。言い訳ばかりが思い浮かぶ
上司は、とても穏やかで優しいひとだった。言っていることが一貫していて、信頼が厚かった。そんな上司から、面談中に放たれたその一言。わたしは、静かに聴いていた。
「上層部に言われたことを、そのまま取り入れるだけだったら、まみさんじゃなくてもできるよね。みんなが同じ結果に行き着くはず。
それじゃあ、まみさんはこれから仕事がなくなっちゃうよ。まみさんじゃなきゃダメだね、って思われる仕事をしないと。」
わたしは、悔しかった。やっとのことで「はい」と絞り出す。空気のようなその声は、震えていた。
言い訳が胸の中いっぱいに膨らんだ。
チームを、自分を信頼する
しかし、この出来事は、確実にわたしの仕事観を変えた。
わたしは、少しずつ主張するようになった。最初は、先輩。次に、上司。最終的には、上層部との会議の場でも「ここはこういう意図があるので、変更はしないつもりでいたのですが」と言えるようになった。
それは、わたしが信頼するようになったからだ。
プロとして、自分のベストをつくしているチームメンバー。
そのメンバーが、今までの経験やユーザーの傾向を分析したうえで、一番良いと自信を持って作ったモノ。
そのモノが、企画意図とぴったり合致していると判断した自分。
すると、上層部の言うことが必ずしもベストではないと気づく。であれば、主張しなければ。
わたしは、わたしの会社は、上層部ではなくてユーザーを一番に考える会社なのだから。
わたしにしかできないこと
この出来事は、いまでもわたしの仕事観を形作っている。
そう感じていた20代。
たしかに、会社員は会社の歯車だろう。だけど、代替不可能な人間ってこの世にいるのだろうか?
そう、あのスティーブ・ジョブズでさえ替えがきくのだ。いわんや、わたしをや。
であれば、ことさらに「わたしは歯車だ」と悲観しなくてもいいだろう。
いまここにいるメンバー、わたしと出会ってくださった方たち、そういう方たちに向けて、わたしにしかできない仕事をしていく。半径10mの仕事でいい。
ただ、やるからには、誇りを持つ。わたしと仕事をするということは、こういう効果が見込まれますということを、自分なりに持っておく。
そしていま、わたしは会社を辞めてフリーランス(といっていいのかな)のキャリアコンサルタントになった。
キャリアコンサルタントも、山ほどいる。しかし、わたしと出会ってくださったからには、やっぱり価値を提供したい。
そんな想いで、今日も子どものお昼寝中にパソコンを開く。
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