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噂のマルロン

学生の頃、男友達のバイクの後ろに乗せてもらって、学校をサボってはビリヤード場に連れて行ってもらっていた。

そのビリヤード場は劇場の跡地のような所で、噂によれば色物系だったらしく、舞台に2階席まであって、かなり広い場所だった。
くすんだ小豆色の重たいカーテンと、ロココ調の装飾。だけど妙に静かで私はそこが大好きだった。

その劇場の舞台に一台のビリヤード台が置いてあった。ここで打つからにはそれなりの腕がなくてはいけない。それは劇場の暗黙ルールだった。
そしてそこにいつもいる男が、マルロンだった。

マルロンは多くを語らない外国人で、小柄なアジア系の30代ぐらい男性だった。たまに自分達の試合の合間に、チラチラとマルロンの尋常ならぬショットをみては、静かに口が開いていた。風の噂によればアジア大会チャンピオンらしい。

そして、あの日私は、彼の前のテーブルでビリヤードをしていたのだ…


つづく…。

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