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布団もいいけど地面もね(谷中生姜と新生姜)|酒と肴 その二十九

「寝てない自慢」をさせてください。

私、もう3年ぐらい寝てないんですよ。語弊しかないので補足しますが、コンクリの上や職場の床で、という話です。

お酒を飲むと酔っぱらう訳で、残念ながら私は「強く吐かない者たち」にはなれませんでした。量を過ぎて気分が悪い時は、人目のつかないところで野生動物のように、静かに調子が戻るのを待ったものです。
建物の陰、体を横たえコンクリートに頬を押しあてれば、火照りがしずまっていくのがよく分かります。エアコンの効いた室内とは違い、都会でも季節が感じられる数少ないイベントです。
ここだけの話、職場だと会議室のホワイトボード裏が穴場ですが、できればあまり広めたくありません。埃っぽい床の匂いが、今は物置になっている実家の子供部屋を思い出させ涙腺が緩みます。これはもう下手な映画を見るよりも泣けるシチュエーションです。

まあ、ありがたいことにここ数年はきちんと布団で寝れていますが、コンクリや床の感触を思い出して、時々無性に地べたが恋しくなります。もういい大人なんだからと思いつつ、せめて土のものを取り込んで感傷に浸るべく、新生姜をつまみにお酒をいただくことにしました。

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谷中生姜はそのまま味噌で、醤油で煮た新生姜は飛田和緒さんのレシピです。どちらも焼酎ソーダとの相性はぴったり、こちらは曇り空の日が続いていますが、心と体に薫風が吹き渡るようです。

それにしてもホワイトボードの下なんか誰も興味がないらしく、背中を向けてコンパクトに丸まっていたらまるで気づかれません。そして、どうしてか床にはヘアゴムがよく落ちています。
もしかしたらいつの日か、ヘアゴムの持ち主と床で運命的な出会いを果たすかも知れませんが、それは恋ではなく事件や事故の類だと思われます。

メニューと材料
・谷中生姜(生姜、味噌)
・新生姜の醤油煮(新生姜、醤油)

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