内なる獣、春の漬け物|日々の雑記#47
季節が移り変わる時は身体も準備がいるらしく、この頃はどうにもお腹が空いて仕方ありません。普段、飲んだらメシまで辿り着けないことが多いのですが、最近は晩酌の後でもしっかりご飯を食べています。
冬から春にかけての楽しみに、樽酒があります。毎年、近所の酒屋で量り売りをしていて、杉の香りのするお酒を冷やで頂くと、雪の中で深呼吸するような清々しさを味わえます。
これに野沢菜や甘酢に漬けた大根、味噌漬けなんかを合わせる訳ですが、酒に合うものは飯にも合うのが道理でして、飲み食いするほどに心と体が満たされていきます。肉類の様な派手さは無いですけれど、静かに指先まで力が行き渡る感覚。芽吹きの季節に向け、人もまた栄養を欲しているのでしょう。
日々、体重計の数値が静かに上がっていることに気付いてはいるものの、桜の頃には戻ると信じ、今日もまた白飯をかっこみます。人間ドックも終わりましたから、ひとまずは良しということで…。
そのままでも美味しい漬け物ですが、細かく刻んで納豆に入れるのも好きな食べ方です。漬け物の塩気と食感でアクセントが加わり、お互いの香気が混じり合って食欲を掻き立てます。
これはもうお代わり事案、大盛り必須の案件で、油断すると冷蔵庫の奥で遭難しがちな納豆が、週に2回転の大活躍。おかげで、余ったタレをうどんつゆに変えるスキル(3パックに対して水250cc)も習得しました。
そんな訳で、納豆とお酒を買い足すべくスーパーに向かいますと、道すがら、早咲きの梅がほころんでいました。まだまだ朝晩は冷えますが、植物はしっかりと季節の変化を感じているようです。
野菜売り場を覗けば、気の早い春の食材が出始めています。タラの芽、新じゃが、スナップえんどう。こごみやふきのとうも、そろそろ並ぶ頃でしょうか。
「うすはりグラスにラガーの中瓶、新じゃがの甘辛煮とスナップえんどうでまず一杯。こごみの天ぷらで瓶が空き、タラの芽からは日本酒を。稲庭うどんと迷いつつ、〆はふき味噌の焼きおにぎり」
頭の中で空想の居酒屋が開店、イメージだけでほろ酔い気分です。おにぎりに添えてある漬け物は、春キャベツの塩昆布漬けか、菜の花の辛子漬けだと嬉しいですね。
さて、現実に戻りまして今日は立春です。
昨年に引き続き、立春朝搾りの天覧山で一杯やります。つまみは頂き物の野沢菜漬け。名残惜しいことに、冷蔵庫にはあと3株しかありません。残っている分を食べ終えたら、この瓶を飲み切ったら、また次の季節までお預けですが、待つ楽しみってのもいいもんですね。日々の繰り返しに倦むこともありますけれど、四季が巡るということは悪くありません。
それにしても私の食欲、内なる獣はどうにも草食系です。米と野菜もおいしいですが、プライベートも含め、一度くらいは肉食獣になってみたかったです。