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春眠抄|日々の雑記#71

桜餅のピンクにいちごの赤。
草木が芽吹き、猫も恋を唄うこの季節は、華やかな色がよく似合います。

なのに年度の切り替わりは慌ただしく、真っ黒なコーヒーで睡魔に抗い働く日々。毎年の事とは言え、ちょいと切ないです。

「春眠暁を覚えず」
後の句は忘れても、皆さん出だしを覚えているのは、それだけ春が眠たいからでしょう。

春眠不覚暁
処処聞啼鳥
夜来風雨声
花落知多少

布団の中で鳥の歌を聞き、夜半の雨で散った花を思う唐の昔。想像するだけで、心地よい眠気が訪れます。

そして時は流れて千と数百年。
ご先祖様の時代から働き続けているのに、いつまで経っても遊んで暮らせないのが本当に不思議です。万物の霊長を名乗るのですから、そろそろ桃源郷が現れてもいいと思うのですが。

科学の発展によってより良い未来が訪れる、やはりこれは幻想なんでしょうか。昔から「人類皆眠たい」なのに、変わらず忙しい私たち。どうにも進歩の方向性を間違っている気がします。

新たな技術が新たな問題を生み、新たな仕事が増えるマッチ&ポンプ。果たして睡眠時間を削ってまでやる価値があるのか疑問です。このまま寝不足が続いたら、もれなく三千世界の鴉が犠牲になることでしょう。

なんて無理な主張を通したくなるくらい、眠気がピークです。だけどまだまだ繁忙期、ゴールデンウィークを過ぎて、ようやくひと息つけるといった具合。ですから過ぎゆく春を、そっと瓶の中で眠らせました。

「俺、この仕事が終わったら、一杯やるんだ」

手作りした苺のコンフィチュール。早くこいつで呑みたいです。
落ち着ける日がきたら、グラスに果肉を4、5粒、シロップも入れ、よく冷えた白ワインを注ぎます。微発泡なら尚良し、他にはもう何もいりません。
休日、ダラダラと呑み続けて、眠たくなったらそのまま横になる。酒池肉林は難しくとも、そんな至福を願っています。

ええと、紛れもなく現実逃避ですが、少し気持ちが楽になりました。

こんな風にして社会(会社?)の無茶振りを乗り越えてしまう私たち、まるで『春琴抄』に出てくる佐助の様です。キツイ仕打ちを受けながらも、どこか尽くすことに悦びを感じているのかも知れません。

まあ、谷崎先生ほどの高みにはなかなか辿り着けませんが、健康あってこそのプレイです。凡夫たる私は、調子を崩さない範囲で献身に努めようと思います。

それでは皆さん、酔い夢を。
今夜はもう帰って休みます。
おやすみなさい。


■□■ 次回店番のお知らせ ■□■

西日暮里BOOK APARTMENTさんの棚をお借りして、酒と料理の読みものを中心に、集めた本を販売しています。

次回は4月8日(土)12:00〜16:00で店番に入ります。

谷崎潤一郎のアンソロジーコミックも含め、何冊か新たに持っていきます。
新緑の季節、公園のベンチで読書なんていかがでしょうか。






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