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より高い水準のガバナンスを目指して -対話ガイドラインの活用-

サステナビリティ経営研究家の遠藤です。
今回のnoteでは、コーポレートガバナンス・コードの附属文書である「投資家と企業の対話ガイドライン」について、サステナビリティ経営の観点からご紹介させていただきます。

コーポレートガバナンス・コードの公表

前々回のnoteでも取り上げましたが、金融庁と東京証券取引所が、日本企業の持続的な成長と中長期の価値向上に資する目的で2015年に制定したコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の再改訂版が、パブリックコメント(4/7〜5/7)を経て6月に公表される予定です。

上場会社は、改訂後のコードの内容を踏まえたコーポレートガバナンスに関する報告書を遅くとも2021年12月までに(プライム市場上場会社のみに適用される原則等に関しては、2022年4月以降に開催される各社の株主総会の終了後速やかに)提出することが望まれるとされています。

投資家と企業の対話ガイドライン

6月のCGコード再改訂版公表の際には、附属文書として投資家と企業の対話ガイドライン(以下、対話ガイドライン)の改訂版も公表されます。

本ガイドラインは、コーポレートガバナンスをめぐる現在の課題を踏まえ、機関投資家と企業の対話において重点的に議論することが期待される事項を取りまとめたものです。

その内容自体についてコンプライ・オア・エクスプレインは求められませんが、CGコードの各原則を実施する場合や実施しない理由の説明を行う場合には、本ガイドラインの趣旨を踏まえることが期待されています。

2022年4月以降のプライム市場では「より高い水準」のガバナンスが求められており、同市場への上場を予定してる企業では、自らの持続的な競争優位を確保するためにも、CGコード再改訂版の内容を踏まえた上で、対話ガイドライン改訂版への適切かつ主体的な対応が重要になります。

対話ガイドラインとサステナビリティなど

例えば、サステナビリティ関連事項では、CGコード改訂案の補充原則4-2②にて、取締役会の責務として、サステナビリティを巡る取組みについての基本方針の策定や執行状況の監督を求めていますが、対話ガイドライン改訂案では、そのための検討・推進の枠組みとして、取締役会の下または経営陣の側にサステナビリティ委員会等の会議体設置が期待されています。

また、補充原則3-1③では、経営戦略の開示に当たり、自社のサステナビリティについての取組みの適切な開示を求めていますが、対話ガイドライン改訂案では、サステナビリティ(ESGやSDGsに対する社会的要請・関心の高まり)以外にもデジタルトランスフォーメーションサイバーセキュリティサプライチェーン全体での公正・適正な取引など昨今の事業を取り巻く喫緊の環境変化への対応についても経営戦略に適切に反映され、開示されることが期待されています。

この他にも、対話ガイドライン改訂案では、取締役会の機能発揮、監査の信頼性の確保・実効性のあるリスク管理の在り方などについても「より高い水準」のガバナンスを目指す上での様々な指針が示されています。

取締役会の機能発揮
・取締役会の実効性確保の観点からの各取締役や法定・任意の委員会についての適切な評価の実施
・取締役会全体として適切なスキル等が備えられるよう必要な資質を有する独立社外取締役の十分な人数の選任
・独立社外取締役の取締役会議長への選任を含む取締役会の経営に対する監督の実効性確保
監査の信頼性の確保・実効性のあるリスク管理の在り方
・監査役について、監査上の主要な検討事項の検討プロセスにおける外部会計監査人との協議を含めた適正な会計監査の確保に向けた実効的な対応
・内部通報制度の運用の実効性確保に向けた内部通報に係る体制・運用実績についての分かりやすい開示と説明

まとめ

このように対話ガイドラインには、CGコードの内容を補完し、より高い水準のガバナンスを構築するための様々なヒントが記載されています。

プライム市場上場予定企業は元より、なるべく多くの日本企業が新たなCGコードを踏まえつつ、対話ガイドラインの内容もよく咀嚼しながら、持続的な成長と中長期の企業価値向上に向けた戦略的かつ実効的な取り組みを推進していただきたいと思います。

【参考】

デジタルトランスフォーメーション及びサイバーセキュリティの経営戦略への反映などについては、経産省の主導で策定された下記ドキュメント類が参考になります。

デジタルガバナンス・コード(2020年11月)
DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブック ver1.0
(2020年8月)
サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 2.(2017年11月)


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