見出し画像

【活動レポート】新渡戸文化学園高校スタディツアー

みなさん、こんにちは。まめなプロジェクトです。

先日、まめなにて、東京の新渡戸文化学園より高校生4名を受け入れてのスタディツアーが行われました。今日はそのときの様子を紹介させていただきます。

今回のスタディツアーのテーマは「食」。久比ならではの農床文化の体験をメインに、3泊4日のプログラムを実施しました。


初めての久比、2度目の久比

今回の参加者は2年生3名と1年生1名の計4名。そのうちの2名は昨年のスタディツアーでも久比を訪れていて、1年越しの再会となりました。

朝の新幹線から電車とバスを乗り継ぎ、まだ強い日差しが残る16時に久比へ到着しました。

初めての2人は道沿いの建物や奥に見える新緑の山へ視線を送りながら歩き、2度目の2人は「なつかしい!この道覚えてる?」などと会話をしながらまめなの施設へ向かいました。

お迎えには地域の小学生が飛び入り参加


地域の方のお家で晩ごはん

簡単なオリエンテーションのあとは、地域の方のお家でおかず持ち寄り式の夜ごはんでした。私たちは鯖の竜田揚げと豚の生姜焼きをつくっていくことに。普段から料理をしている生徒もそうでない生徒も、みな自分の役割を見つけて手際よく調理が進みました。

地域の方のお家についてからは、あれやこれやと質問攻めにされたり、昔の笑い話をきいたり、初対面にもかかわらず和気あいあいとした時間を過ごしました。

久比の言葉ではご飯をいただくことを「よばれる」といいますが、仲のいい人同士、お茶やご飯ををよばれることが日常的にあり、到着して早々に久比を味わうことができました。

てんぷら、ひじきの白和え、ポテトサラダ、なます、アジの南蛮漬け。
使われている野菜はほとんど久比でとれたもの。


晩ごはんのあと、今の季節しか見られない蛍を探しにいくことに。輪郭が曖昧な、蛍たちの淡い光も、真っ暗な夜道を歩くドキドキ感も、どちらも存分に楽しみました。

じゃがいも堀り体験

2日目、朝ごはんを食べた後は農床体験へ。
ちょうどじゃがいも収穫の季節だったので、ご近所さんの農床へお邪魔して一緒に収穫させていただきました。

最初はおそるおそる掘っていた高校生たちが、5分もするとせっせとじゃがいもを掘っていて、おばあちゃんたちも見直したような表情で見守ってくれました。若者たちが勢いよく掘り起こしていく傍ら、おばあちゃんたちはいもを選別していて、自然と無駄のない役割分担が生まれていました。

マンツーマンでくわのレッスン

一通り掘り終わった後、なにかを持ってくるおばあちゃんたち。かごをのぞくと、中にはあずきバーとジュースが入っていました。日陰で一緒にいただき、心温まる休憩時間を過ごしました。

この表情はきっと昔の武勇伝を話しているとき。

インタビューのワークショップ


まめな食堂のシェフが作ってくれたオムライスのランチを食べ、午後はインタビューのワークショップへ。

まずは「食」を真ん中に置いたマインドマップで自分の考えや興味、これまでの体験を書き出していきました。互いに書いたものを見せ合い、気になるところを深掘りする質問をしあったあとに、自分がインタビューの時に投げかけたい問いを言葉にしていきました。

「食ーつくるー植えるー守るーつなぐー集まる」という連想も。

2人1組で向かうインタビュー先は、まめなのファウンダーであり食堂のシェフを務める更科さんと、15年前から久比に住んで自然農に近い形で野菜を育てている梶岡ジーンさん。

1時間ほどのインタビューでしたが、帰ってきた4人の表情には高揚感が残っていて、何か心に残ることがあったことが伝わってきました。久比でずっと生きてきた方々から受け取るものとはまた違う何かが届いたのかもしれません。

「食は、生きることの根本にあると思うんだよね」と語る更科さん
「わたしはね、野菜づくりに失敗しても絶対あきらめないの」と笑いながら話すジーンさん。


この日は、そのまま更科さんが作ってくれた夜ごはんを食べ、夜は自由時間。このようなゆとりある時間を過ごせるのも、3泊4日の醍醐味です。


農床おかず会

3日目は朝から地域の人が農床で採れたおかずを持ち寄り、一緒に料理をしてランチを食べる農床おかず会(コミュニティランチ)に参加。

おばあちゃんたちはおしゃべりをしながらテキパキ準備を進めていきます。おばあちゃんたちに自ら話しかけてみたり、後述する塩づくりを進めたり、縁側で涼んだり、思い思いに過ごしました。


天ぷらの味見係
口に入れるものはほとんどが久比産。

「○○を一から作る」&ピザづくり

現代の都市の生活では、身の回りにあるものほとんどが誰か他人の手によってつくられたものであり、その多くがお金で買ったものです。

一方、「必要なものは自分たちで作る」という感覚をもった人が今でも多くいるのが久比の特徴のひとつです。

そこで今回、高校生たちには「久比で調達できるものだけで夕食のおかずをつくる」というお題を出しました。ルールはシンプルで、お金を使わないこと。今回は準備時間が短いので、特別に塩以外の調味料は使用可能としました。

探検家・関野吉晴さんが武蔵野美術大学で行っている「カレーライスを一から作る」というゼミの内容を参考にしています。

まずは今の季節に採れそうな野菜や、集落の中を歩いていて見かけた野菜、すでにご近所さんにいただいた野菜をリストアップしました。同時に、夕食のメインがピザなので、ピザ屋にサイドメニューでありそうなものを考え、何をつくるか作戦を立てていきました。

最終的に、フライドポテトとサラダをつくることに決まりましたが、どちらにも肝心で、かつ自分たちで調達しなければいけないのが「塩」でした。

海水から塩をつくる方法を調べ、おおまかな量も計算してみんなで海水を汲みにいきました。

昔から海産物を洗う場所だった「今治階段(いまはるがんげん)」へ
帰り道、野菜もいただいてしまいました。

夜のうちに一度濾しておいた海水を、農床おかず会に参加しながらひたすら沸かし続けます。

常に火力を維持するため薪をくべ続けること4時間。
あとひと息。
(コーディネーター側のメンバーも初めての塩づくりにワクワクが止まりませんでした。)
どろどろになったところで濾して、あとは天日干し。この時とれる液体が「にがり」だそう。
完成!

掘りたてのじゃがいもと、海水から自分たちでつくった塩。自ら手間をかけ作ったからよりそう思えるのでしょうが、間違いなくいつも食べるフライドポテトよりおいしくて、心なしか身体もたくさん栄養を吸収してくれそうな感じがしました。

ピザづくりの方は生地づくりにやや失敗してしまいましたが、それでも十二分においしく、お腹いっぱいになるまで食べることができました。

自家製のトマトソースが絶品でした。


生ハムとルッコラのジェノベーゼピザ

最終日… 「食」とは?

あっという間に迎えた4日目、使ったお部屋をきれいに掃除したあとは、締めくくりとして、スタディツアーのテーマである「食」について、それぞれから感じたことや考えたことを発表してもらいました。

ピザをつくると聞いたジーンさんがくれたオレガノとタイムの写真。

「食が人と人のつながりを生んでくれる。東京でもそういう交流の場がつくれないか考えたい。」

「食とは人生だなと思った。食べなきゃ生きていけないし、食を通していろんな人と出会うし、そこからどのように生きたいか考えることもできる。」

「食とは愛情である。素材がつくられるところから、食べ終わった後の片付けまで、人と人が関わり、互いに助け合う。」

自らが体験したことに基づいて、自分の言葉で語られる発表に聴いているみんなが引き込まれ、質問が感想が次から次へと出てきていました。

現代において、「食べる」という行為は、ともすればただ生存に必要なカロリー摂取として、なるべく早く、なるべく楽に、と疎外されつつあるように見えます。しかし、「食べる」ことをじっくりと味わってみた時、今回のスタディツアーに関わった全員が、「食」が私たちにとって根源的に大切であることを感じていました。


全てのご飯が美味しくて、こんなにも素材は味を感じながらごはんを味わう事ができたのは初めてでした。そしてやっぱり自分たちで作って食べる食事が1番美味しく感じるんだなということも改めて感じとりました。


帰るのが名残惜しくなる場所
使いきれなかった塩はもちろんお土産に
「いつでも帰ってきてね~」



スタディツアーを終えて

はるばる東京から来てくれた4人、共に運営を担ってくれた元インターンの2人、協力していただいた久比やまめなのみんな、スタディツアーを実施している新渡戸の先生方。まずは、関わってくれた人たちへの感謝の気持ちが湧いてきています。空はずっとお天気でいてくれたし、海や山、大地からもたくさんの恵みをいただいた4日間でした。

これからも、多様な世代が混ざりあい、共に暮らし、学び、遊び、生きていく場をつくっていきたいと感じた4日間でした。今回のようなプログラムに興味をお持ちの方は、ぜひHPよりお問い合わせください。

海も、山も、人も