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「うまく」生きるのはもうやめる

友達からもらった言葉がある。

ありのままの定義とは、他人になろうとしないこと、他人の目の中に映る自分を生きないこと、現行の自分を過不足なく語れる言葉を持つということ。                   

ずっと、周りからどう思われているのか、そればっかり考えていた。

嫌われたくない。期待に応えたい。私が頑張れば喜んでくれる。褒められたい。

本物の音楽家は、
純粋に音楽に惹かれ、芸術を追究し続けることに心から喜びを覚える。決して揺らぐことのない「自分の音楽」を持っている。私にはそれがなかった。一つ一つの本番を、失敗せずにこなすことしか頭になかった。頭の中にはいつでも理性があった。本当に心から音楽とひとつになれた瞬間なんて、数えるほどしかなかった。

ある程度持ち声がよければ。丁寧に練習していれば。難曲を歌い上げれば。拍手をもらうことはできた。それは嬉しかった。でも、ステージを去ったあといつも思うのは「やっと終わった」だった。

芸術への探究心のために音楽をやっていたんじゃないと思った。達成感のためだったんだ。
自分の音楽をする喜びではなく、人から認められることが喜びだったんだ。

「よかったよ」と言われなければ不安だったのも、「駄目だ」と言われれば必要以上に傷ついたのも、全部それが答え。

きっとわかっていた。自分のために音楽をやっていないって。でも、気付かないふりをした。

だから、パンクした。

本当の気持ちを偽り続けた、ツケが回ったんだと思った。自業自得だと、自分を責めた。なぜ本音を周りに伝えなかったのかと、今ならば冷静に言えるが、伝えられるはずもない。だって、自分自身がそこから目を逸らしていたのだから。

一生懸命頑張っていた私は、私だけど私じゃなかった。本当の私を知る人なんて誰もいなかった。情けないことに、自分自身でさえ。

ありのままの自分を生きるのは、難しいことだ。それでも、ありのままに生きたい。自分に嘘をつかずに。他人に迷惑をかけることもあるだろう。白い目で見られることもあると思う。でも、それはきっと、恥ずかしいことじゃない。勇気を持とう。「うまく」生きようとするのはもうやめる。

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