ハラスメントトレーニングvol. 5:セクシャルハラスメントの事例

セクシャルハラスメントの事例と適切な対応

セクシャルハラスメントは、職場での人間関係を損なうだけでなく、当事者の心身にも大きな負担を与える深刻な問題です。今回の記事では、具体的な事例をもとに、セクシャルハラスメントがどのように発生し、どのような行動が問題視されるのか、また適切な対応策について解説します。

事例1: LINEでのやり取りと風俗の話題

事例詳細:

  • 上司であるあなたは、出張に行くたびに、部下にお土産を買っていた。

  • お土産交換等を通じて、ある部下(女性)仲が良くなったので、向こうから“みんなで”飲みに行きましょうと言われ、LINEを交換した。

  • その部下とはLINEで月に2~3回メッセージ交換をしている。

  • あばたは、徐々に、相手に好意を持ち始め、夜のお店(風俗・キャバクラ)の話をLINEでするようになった。

  • その際、あなたは部下に風俗に行った際の女性のお尻の写真を部下に送付した。

ハラスメントにあたる行為:

最初の段階では、特に問題のない行為になります。お土産を買ったり、仲良くなってLINEを交換すること自体は、必ずしもハラスメントに該当しません。しかし、その後のLINEでのやり取りにおいて、風俗やキャバクラなどの性的な話題を持ち出し、最終的には風俗の女性の写真を送るという行為が大きな問題となります。

この行為は、相手に対して不快感や嫌悪感を抱かせる可能性が高く、職場における適切な人間関係の枠を超えた行為です。部下が職場において上司に対して拒否を示すのが難しい状況であることから、このような性的な話題や写真を送る行為は、相手の自由意思を尊重しないハラスメントに該当します。

適切な対応:

上司と部下の関係において、個人的な感情を持ち込み、さらに性的な話題を持ち出すことは避けるべきです。もし好意があったとしても、その感情を仕事の場に持ち込まず、また相手が感じる不快感について十分に配慮する必要があります。

このケースでは、早急にLINEでのやり取りやめ、職場外での不適切な内容を共有したことについて謝罪し、適切なコミュニケーション方法を取ることが重要です。また、会社としてもこのような行為が起きないように、社員に対してハラスメント防止のトレーニングを定期的に実施する必要があります。


事例2: 結婚に関する発言と性別に基づく評価

事例詳細:

  • 部下が結婚することになった。相手は医者のようだ。優秀な部下だったので、会社をやめてしまうのではないかと心配になっている。

  • 取引先の前で、あなたは、つい、部下に対して「結婚したらやめちゃうんだろ~」と発言してしまう。

  • また、別の取引先の担当者を決める際、あなたは「女性のほうが受け入れてくれるから”部下”さんに任せるね」と発言した。

ハラスメントにあたる行為:

まず、「結婚したらやめちゃうんだろ~」という発言は、性別や結婚によって働き方を制限するような偏見を含んでおり、不適切です。このような発言は、女性が結婚後に仕事を辞めるべきだという固定観念を前提としており、相手に不快感を与えたり、キャリアを軽視するものです。

また、取引先の発言「女性のほうが受け入れてくれるから”部下”さんに任せるね」も、性別に基づいて業績や仕事の適正を判断するものです。これは職場において性別に基づく差別を助長する行為であり、いずれもセクシャルハラスメント(またはGender Discrimination)の一環として捉えられます。

適切な対応:

性別や結婚に基づいて働き方を決めつける発言は、職場におけるダイバーシティやインクルージョンの精神に反しています。上司としては、部下のプライベートな状況を過剰に詮索せず、職場における専門性や業績に基づいて部下を評価するべきです。

このような発言が行われた場合、上司は自らの発言を見直し、誤解を招いたことや無意識に偏見を持っていたことを反省し、部下に対して謝罪することが重要です。さらに、取引先からの性差別的な発言に対しても、適切に対応し、性別に関わらず能力に基づいて業務を任せるべきだという姿勢を明確に伝えることが求められます。


事例3: 性的な侮辱を含む叱責

事例詳細:

  • 指導の際、部下に対して「そんなこともできないなんて、お前、金玉ついてんのか」と叱責した。

ハラスメントにあたる行為:

この発言は、ジェンダーに基づく侮辱を含んでおり、明確にセクシャルハラスメントに該当します。性別に関連する表現を用いて部下を侮辱することは、相手の人格や性別に対して不適切な攻撃を行う行為であり、ハラスメント(またはパワーハラスメント)として重大な問題です。

適切な対応:

部下を指導する際に、性別に関連した表現を用いることは避けるべきです。業務のミスや問題点に対するフィードバックは、具体的かつ建設的に行われるべきであり、人格や性別に関連した侮辱的な表現は一切使ってはなりません。

上司としては、自身の発言が不適切であったことを認識し、部下に対して謝罪するとともに、今後の指導方法を見直す必要があります。会社としても、指導方法やフィードバックの仕方について、ハラスメントの要素を含まない適切な方法を社員に教育することが重要です。


事例4: 飲みの席での行動

事例詳細:

  • 部下と飲みに行った際、部下にキスをしようとしたが、実際にはしていない。

ハラスメントにあたる行為:

飲みの席での行動とはいえ、上司が部下に対してキスをしようとする行為は、明確なセクシャルハラスメントに該当します。実際にキスをしたかどうかに関わらず、相手が不快に感じるような性的な意図を持った行為やジェスチャーは、職場環境において許されるべきではありません。

適切な対応:

飲みの席であっても、上司としての立場を忘れず、部下に対する適切な距離感を保つことが重要です。万が一このような行為が発生した場合、速やかに謝罪し、再発防止のための行動を取ることが求められます。

さらに、職場の飲み会などにおいても、職場内の秩序を乱すような行為や不適切な行動を避けるため、参加者同士が互いに尊重し合う環境を作ることが大切です。会社としても、飲み会におけるハラスメントのリスクを防止するための方針やガイドラインを設けることが有効です。


セクハラの原因


セクシャルハラスメントのケースは、多くの場合、加害者の行動パターンに特有の原因があることがわかっています。以下では、具体的な原因とその背景について、詳述します。

① ハラスメントをする人物が、一人で盛り上がりすぎているケース

セクシャルハラスメントを行う人物の一部には、相手との関係を誤って解釈し、自分だけが「盛り上がっている」ケースがあります。特に既婚者による違反が目立つ場合がありますが、これは結婚生活の中で恋愛や異性との距離感が希薄になり、無意識に他者に対して強い感情を抱いてしまうことが原因となることがあります。

例えば、職場でのちょっとした優しさや親しみを、ハラスメントをする人物は過度に誤解し、恋愛感情に似た感覚を持つことがあります。このような状況では、相手が単なる親しみを示しただけであっても、自分自身の感情が大きく膨らみ、それが結果的に相手への不適切な接触や発言に繋がってしまうのです。既婚者の中には、家庭では満たされない感情を職場で埋めようとするケースも見られ、特に異性の部下に対して不適切な行為を行う傾向が強くなります。

しかし、こうした行動は「やさしくされているから」「親しみがあるから」という理由で正当化されるものではなく、相手の意図を無視した行動であることを認識すべきです。重要なのは、どれほど自分が一方的に感情を抱いていたとしても、それを相手に強制することはハラスメントに該当するという点です。

このようなケースでは、当事者が一度自分の感情を冷静に振り返ることが求められます。自分の行動が一方的であり、相手に不快感を与えている可能性が高いと感じた場合、速やかに行動を修正する必要があります。もしも自らの行為に気づくことができない場合は、会社として問題を調査し、適切な対応を取るべきです。特に、ハラスメントに対しては厳しい処分が求められるため、組織全体で防止策を講じることが重要です。

② 失言に気づいていないケース

ハラスメントのもう一つの典型的なケースとして、加害者が自分の発言が不適切であることに気づかず、結果として相手に対して不快感を与えてしまう場合があります。このようなケースでは、特定の状況において言葉の選び方やその背景にある文化的な影響が大きな役割を果たしています。

たとえば、長年職場で使用されていた言葉や表現が、時代とともに不適切とされるようになることがあります。特にジェンダーに関する言葉や発言においては、社会の認識が進化し、以前は問題とされなかった発言が、現在ではハラスメントと見なされることがあります。しかし、加害者はその変化に気づかず、以前と同じ感覚で発言を続けてしまうことがあります。

このような状況では、加害者は「悪気がない」「冗談のつもりだった」と自己弁護することが多いですが、目的が手段を正当化することはできません。発言が相手に与える影響や不快感について十分に考慮することが求められます。特に、上司や指導者の立場にある人物は、自らの言葉が部下や同僚にどのように受け取られるかを意識し、慎重に言葉を選ぶ必要があります。

このような失言を防ぐためには、日常的に言葉の使い方を見直し、相手の立場に立って考えることが重要です。特に性別や人種、年齢に関する発言はデリケートな問題であり、個人の感情や職場の雰囲気に大きな影響を与える可能性があります。そのため、無意識のうちに不適切な言葉を使っていないか、常に自分の発言を振り返る習慣を持つことが重要です。

会社としては、失言に対して厳しい基準を設け、定期的なトレーニングを通じて社員に教育を行うことが求められます。また、失言が発覚した際には、個人に責任を追求するだけでなく、組織全体で問題を解決し、再発防止に努める姿勢が重要です。


結論

これらの事例を通じて、セクシャルハラスメントがどのように職場で発生し得るかが明確になります。ハラスメントは、意識的であれ無意識的であれ、職場環境を悪化させ、当事者に深刻な心理的・職業的影響を与えるものです。特に、上司と部下の関係においては、権力の不均衡がハラスメントの背景にあることが多く、上司側が意識的に自らの行動を見直すことが重要です。

企業としては、ハラスメント防止のための教育やポリシーを強化し、問題が発生した場合には迅速かつ適切な対応を行うことが求められます。職場が安全で尊重し合える環境であることが、全ての社員にとっての生産性向上と精神的な健康の維持につながります。


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