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2023年11月18日・19日 リクオ × 坂本サトル ツーマンライブ@白石カフェミルトン ライブレポート

2023年11月18日(土)、19日(日) 宮城県白石市
「リクオと坂本サトル atカフェミルトン2days〜再生の再会」

*会場:白石カフェミルトン
*時間:18日 open17:30 / start 18:00
    19日 open 16:30 / start 17:00
*料金:全席自由前売¥5,500(1drink別)各公演とも限定35名
*会場住所:宮城県白石市八幡町6−18−1

この日、白石カフェミルトンで開催されたライブは、リクオさんの5年ぶりのミルトンライブ開催、そして今年7月にくも膜下出血で入院したミルトンママの快気祝いと、特別な意味が込められたライブでした。
さらに、サトルさんのミルトンライブは音響機材なしの生声・生ギターが醍醐味でしたが、今回のライブはリクオさんとのツーマンとのことで、音響機材あり、なおかつ機材の調達およびオペレーターもサトルさんが担当するという、いつもとは異なる環境。18日はSold out、19日もほぼ満席と、オーディエンスの期待が高まるライブとなりました。


11月18日ライブレポート

■ライブレポート

11月半ばの白石市。18:00はすでに日が落ちて暗く、外は風と雨。
ミルトンマスターの呼び込みがあり、満席のオーディエンスの盛大な拍手のなか、大きなガラス扉からサトルさんとリクオさんが揃って登場しました。
2022年7月のライブ再開を皮切りに、現在までこの場所で4回ライブをおこなったサトルさん。対してリクオさんは5年ぶり、コロナ禍以降初となる来訪です。

本日の構成についてリクオさんより丁寧すぎるほどの説明があったのち、1曲目はサトルさんの「コーンスープ」から。リクオさんもピアノ伴奏とコーラスでセッション。ロックで躍動感あるリクオさんの伴奏が入ると、歌の世界観もいつもとは異なるよう。PAを通した歌声をミルトンで聞くのもまた新鮮でした。
前半はサトルさんのソロライブ。ミルトンライブではおなじみの「ミルトンへ行こう」、そして「君に会いたい」を歌い、ふくよかで力強い、温かな歌声が会場を包みます。
続いて「ママの新しい始まりだから」と、ミルトンママの復帰祝いを込めて「始まりの歌」。吠えるような感情的なフェイクやコーラスもPAがあってこその聴こえ方でした。
サトルさんが「旅するミュージシャンの中で一番尊敬している。共演が恐れ多いほど」と話す存在のリクオさん。彼の「同じ月を見ている」が好きなので自分も月の歌を選んだと、「月」(JIGGER'S SON)「赤い月」の2曲を披露。ご自身の月に関する歌は3拍子が多いという解説も興味深かったです。「月」でギターの弦が切れてしまいましたが、そのまま「赤い月」も演奏。ギターを交換して演奏した「愛の言葉」では、オーディエンスとセッションするように掛け合いで「♪ラララ…」のコーラスを歌い、ラスト「天使達の歌」では会場を感動のムードに包み込みました。

休憩をはさみ、後半はリクオさんソロライブ。
20年以上前に制作したが、コロナ禍以降自分のテーマソングとなりつつあるという「雨上がり」からスタート。
「♪どうしようもこうしようもなくって ブルーにこんがらがってる時ってあるある よくある 俺もある」関西弁交じりのユーモラスな歌詞が楽しい。オーディエンスのハンドクラップとともに、コロナ禍の’20年4月に書いたという「君を想うとき」と続きます。体を大きく揺らしながら演奏するリクオさん。会場は幸せな明るさに包まれました。
ここでリクオさんより乾杯のご発声が。「音楽とアルコールがあれば何でもできる!」と猪木モノマネが入ったありがたい言葉とともに乾杯。
コロナ禍の会えない日々を歌った「また会えて良かった」「ハグ&キス」※。大切な人を想い、再会を喜ぶ歌詞が、コロナ禍の日々を思い出させました。続いて「短編映画」で、切ない世界へと引き込みます。
サトルさんも大好きな曲という「同じ月を見ている」。ポエトリーリーディングに伴奏をつけた楽曲は、映画や小説のような美しい映像が目に浮かぶようで、オーディエンスを魅了しました。
コロナ禍が終わっても、戦争や紛争など胸を痛める出来事が続く。「音楽をやっているときだけは幸せでいたい」と歌った「イマジン」(忌野清志郎訳詞)。今の世界に、より意味を持って聴こえる日本語の訳詞が素晴らしかった。「満月の夕」(cover)ではオーディエンスと「♪ラララ」を合唱、「アイノウタ」間奏では、クラップしながら立ち上がりピアノを離れ、ステージセンターへ。ガラス窓に向かって愛を叫ぶようなユーモラスなパフォーマンスに大拍手。ラスト「オマージュ-ブルーハーツが聴こえる」で会場の盛り上がりは最高潮に。

そして2人のセッションへ。
サトルさんが’14年にカバーしたリクオさんの楽曲「胸が痛いよ」を、1フレーズ(1行)ずつ交互に歌います。お互いが呼応しあい、フレーズが進むごとに感情がのっていくのがビンビン伝わる。切ない歌声と演奏が素晴らしい名演でした。
「いい意味で無責任さが出た」という共作「タビガラス feat.リクオ」(坂本サトル)は、ブルース・コードがクールで、リクオさんの超絶ピアノソロが炸裂しかっこいい!リクオさんとサトルさん2人でセッションした「永遠のロックンロール」(リクオ)では、「♪ラーラララー」「♪ロックンロール・ミュージック!」をオーディエンスと大合唱。音楽愛に満ちた幸せな空気を充満させ、ライブは幕を閉じました。

※曲名がわからなかったのですが、X(旧twitter)で教えていただきました
ありがとうございました!

■18日食事会

ミルトンライブの醍醐味、ライブ後の物販(リクオさん曰く実演販売会)のあと、サトルさん、リクオさんも交えた食事会が行われました。ミルトンのおいしい料理とお酒をいただきながら、本人に直接ライブの感想を伝えられたり、電波には乗らないようなミュージシャン同士の濃い話を聞けたりする、至福の時間。この日は、11月4日にリクオさんが大阪西成で行ったライブについて、リクオさんが酔っぱらって記憶をなくしてしまった部分を、そのときに来ていた観客が教えてあげるというミラクルが起こり、大いに盛り上がりました。

ライブ最後に撮影OKタイム。


11月18日セットリスト
■坂本サトル
01 コーンスープ(with リクオ)/ 02 ミルトンへ行こう / 03 君に会いたい / 04 始まりの歌 / 05 やぶれかぶれ / 06 月(JIGGER'S SON)/ 07 赤い月 / 08 愛の言葉 / 09 天使達の歌
■リクオ
01 雨上がり / 02 君を想うとき / 03 また会えてよかった / 04 ハグ&キス / 05 短編映画 / 06 同じ月を見ている /  07 イマジン(cover) / 08 満月の夕(cover) / 09 オマージューブルーハーツが聴こえる / 10 アイノウタ
■セッション
01 胸が痛いよ(リクオ)/ 02 タビガラス feat.リクオ(坂本サトル)/ 03 永遠のロックンロール(リクオ)

11月19日ライブレポート

■ライブレポート

前日に生まれた熱が引き継がれ、さらに大きな熱が生み出されたような2日目。期待感に満ちた会場は、始まりからオーディエンスの拍手、歓声もひときわ大きい。「昨日で5年分を一気に取り戻した」というリクオさん。
演者の2人にもオーディエンスの熱気が伝わっているようです。

サトルさんソロライブでは、PAありに慣れてきたので前日より大きい音でやっているとの発言。3曲目「始まりの歌」では冒頭を生声で歌い、Aメロからマイクにのせて歌うという、音の違いを楽しめるのもライブならではでした。
4曲目「大丈夫」では、恒例の「♪大丈夫」合唱を客席の場所ごとに別れて歌うなど、サトルさんもオーディエンスも楽しみながら参加。サトルさんのうれしそうな笑顔が印象的でした。
ミュージシャンの訃報が続くことに触れ、しかし「作品は残る」と、大橋純子さん最大のヒット曲となった「たそがれ・マイラブ」のカバーを披露。
続いて「バトン」、そして「アイニーヂュー」では1番2番のBメロをオーディエンスがともに歌い、「天使達の歌」の丁寧な演奏でラストを飾りました。

後半リクオさんソロライブは、前日とセットリストをほぼ変更。1曲目「光」では、後方で聴いていたサトルさんがサビから生声でコーラスに参加(リクオさんも最後に「on コーラス、坂本サトル!」と紹介)。その場で生まれたセッションに、これぞライブとゾクゾクしました。「ランブリングマン」でのコール&レスポンスで一気にリクオ・ワールドに引き込んだのち、リクオさんより乾杯のご発声。今日も猪木で乾杯!
せっかく飲んでいるからお酒の歌をと、Theピーズのカバー「実験4号」、そしてミルトンシェフのマサヒロさんからのリクエストで久しぶりに歌うという「大阪ビター・スイート」を披露。
「この年齢になると、もういない人のことをいじったりすることもあったりして、そういう記憶を持ちながら生きていくのも豊かなことのように感じる。キュッとする胸の痛みも抱えて一緒に生きていきたい」と述べ、「はかめき」を演奏。ポエトリーリーディングとピアノ伴奏で作り上げる世界観に引き込まれます。サトルさんは「演奏するリクオさん越しの窓からヘッドライトの流れる光が見えて、まるでミュージックビデオのようだった」と絶賛していました。
続く新曲「リアル」、そして「ソウル」「Happy Day」と、暗闇からなんとか光を見出しながら前に進んでいく決意と勇気を歌にのせて届けてくれるようでした。ラストの「アイノウタ」、今日の間奏ではリクオさんがピアノから立ち上がりステージセンターに繰り出したのち、窓を開けて叫ぶようなそぶりを見せ、会場は大盛り上がり。

サトルさんが登場し「最高でした」と述べ、固く握手を交わす2人。
セッション「胸が痛いよ」は、昨日以上に感情がのっているようで(素晴らしかった!)、歌い終わった後「余韻を味わいたい」とすぐに次の曲にはいかず、2人がドリンクをおかわりしMCに。リクオさんが「ライブ後の実演販売(物販)が、めちゃくちゃ実感がある。以前はアルバムを出したら、データで何枚売れたとかがきて、顔が見えない数字だけで落ち込むこともあった。今はそのころより売れている数は少ないかもしれないけど、ひとつひとつをその場で手に取ってもらっているという実感がある」と話し、サトルさんも「実感は本当にある」と共感。
その後「タビガラス feat.リクオ」では、少々歌詞間違いもありつつ、熱気あふれる素晴らしい演奏を見せ、オーラス「永遠のロックンロール」、この時間が終わってほしくないという愛おしいほどの余韻を残しながら、大団円でライブを終えました。

■19日食事会

2日目ということもあり、会場のあちらこちらで前日以上にディープな話が繰り広げられ、盛り上がった食事会でした。個人的には、ミルトンマスターとラジオ局に勤める長岡さんとのラジオ話、’70年代の音楽の話、マスターとの佐野元春話、そのほかいろいろ、すべて忘れがたい貴重な話を聞かせていただく場となりました。ミルトンマスターの「2人の日本語(の歌詞)が素晴らしい」というライブの感想が深かったです。

11月19日セットリスト
■坂本サトル
01 コーンスープ(with リクオ)/ 02 君に会いたい / 03 始まりの歌 / 04 大丈夫(JIGGER’S SON) / 05 たそがれマイ・ラブ(大橋純子) / 06 バトン(JIGGER'S SON) / 07 アイニーヂュー / 08 天使達の歌
■リクオ
01 光 / 02 ランブリンマン / 03 実験4号(Theピーズcover)  / 04 大阪ビター・スイート / 05 はかめき / 06 リアル / 07 ソウル / 08 Happy Day / 09 アイノウタ
■セッション
01 胸が痛いよ(リクオ) / 02 タビガラス feat.リクオ(坂本サトル) / 03 永遠のロックンロール(リクオ)  

青森出身のイラストレーター沢田としきさん(2010年没)がライブペイントで描いたイラスト。中央でピアノを弾いているのはリクオさんなのだそう




関連CD

■坂本サトル『プレゼント』
リクオさんの楽曲をサトルさんがカバーした「胸が痛いよ」収録。弾き語りの「君に会いたい」「天使達の歌」「アイニーヂュー」「コーンスープ」「バトン」「大丈夫」も収録。

■坂本サトル『HOMETOWN MUSIC LIFE』
「コーンスープ」や、リクオさんとの共作「タビガラス feat.リクオ」が収録。

■リクオ「RIKUO&PIANO2」
「イマジン 」 「短編映画」 「実験4号」(cover) 「ランブリンマン」 「また会えてよかった」「満月の夕」(cover) 「君を想うとき」 収録。

■リクオ「Gradation World」
「永遠のロックンロール」「オマージュ - ブルーハーツが聴こえる」収録。

リクオ インタビュー:新作アルバム『グラデーション・ワールド』とライブに向けた思いを語る | Special | Billboard JAPAN (billboard-japan.com)

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■2021年7月、サトルさんがリクオさんのことについて語ったエッセイ「リクオさんと1時間」について書きました。

■サトルさんが歌うリクオさんの歌のことについて書きました。

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11月18日「ミルトンへ行こう」歌詞
(耳コピなので間違っているところもあるかも)

晴れた日はミルトンへ行こう
いい季節さ 車を走らせて
久しぶりに ミルトンへ行こう
ギターを積んで あの人に会いに
いつもの顔と声 てのひら
元気だったとは聞かないよ
会えなかったその間 お互いいろいろあったけど
苦しかった日々でさえすべてが必要なことだったと
思うことにしよう
雨の日も ミルトンへ行こう
退屈な日々に慣れてしまう前に
いつでもいいミルトンへ行こう
ママとマスター 息子はまさひろ
君に会えばもう少し頑張れそうな気がするから
夕暮れに間に合うように ミルトン

坂本サトル「ミルトンへ行こう」2023年11月18日の歌詞


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■個人的なこと(記録として)
サトルさんリクオさんの光を放つような明るいライブレポに添えるのもそぐわないかとも思いましたが、自分の中で切り離せないことだったので、個人ブログですし、記載しました。個人的なことです。


ライブの前日の11月17日、KANさんの訃報が報道された。ファンにとっては突然の知らせに、情緒は不安定で、一人でいるととめどなくあふれる涙をどうしていいかわからず、もし誰かにKANさんのことを話しかけられてもうまく話せる状態でなく、どうしようかと思っていた。
そんな気持ちを見透かされたかのように、サトルさんから「明日、待ってるね」というメッセージをいただいた(ファンクラブのラジオ宛に、自分がKANさんのコアなファンであるというメッセージを送ったことがあったから)。KANさんと親交の深かったサトルさんも胸を痛めているに違いないのに、こちらを気遣ってくださったことに恐縮し、また「待ってるね」という一言にとても救われた。
ライブ中は、このことと歌を重ねて…というのは不誠実な気がして、極力考えないようにしていた。実際ライブはとても素晴らしく、音楽的多幸感に満ちた時間を心から純粋に楽しむことができた。
しかしライブ中どうしても、喪失感が幾度も胸にこみ上げる。と同時に、目の前にいる素晴らしいミュージシャンの演奏、歌声、空間を楽しめていることのリアルをかみしめ、今ここで見ているライブのかけがえのないこの瞬間を、心に刻み付けるように、歌声、表情、歌詞、メロディ、演奏をひとつも見逃さない、聞き逃さないようにしようと思った。
「狂おしいほどときめいて すべて捧げるこの瞬間に」(リクオ「光」)というフレーズのように、いまこの音楽を浴びている一瞬一瞬を、愛おしく大切にしようと思った。(18日食事会でリクオさんにこの曲をリクエストしたところ、19日に演奏していただき本当にうれしかった)
忘れられないライブになった…と感じても、いつか薄れて忘れてしまう。しかし忘れていても、何かをきっかけとして思い出すことはできる。このライブを思い出すとき、KANさんのことと、この気持ちも思い出すと思う。
19日食事会のとき、サトルさんにKANさんの話を伺った。勇気がいったけど、聞けて良かった。
リクオさんが「『必ず最後に愛は勝つ』って、愛は残るっていうことやろ? 自分たちが歌い続けていることと同じ」と言った言葉をずっと反芻している。

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