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簡単には教えてもらえなかったこと

和菓子屋で10年の修行を経て現在お店を開いてもうすぐ6年になります。

和菓子の命はあんこと言われるくらいあんこは大事な部分なんですよ。

ほぼあんこでできてるんで和菓子って。ここの味が左右されたりする。

お店の要みたいな感じなんで何年か経たないとあん炊きさせてもらえなかったり、入ってすぐに仕込まれたりと考え方は違ってくるんですけど当然私もさせてもらえるのかと思ってたんですよ。

で、結局10年の修行のうち1回だけさせてもらえたという話です。

信用がなかっただけなのか

昔は和菓子の世界といえば男性社会で女性の職人さんは少なかったそう。

かなり力仕事で朝早くからとハードだし、まあパティシエさんも同じようなものだろうけどとにかく肉体労働。

それ覚悟で入ってるんでそろそろあん炊きさせてもらいたいなあと思ってお願いしたら

「火傷して痕残るかもだし、顔にも飛んでくるよ?一気に60キロくらい炊くけどほんとにできるの?」

「やります!やらせてください!!」

「でもなあ…やけどしたらなあ…もごもご」

えっ?断られてる??火傷しても顔に飛んでもいいって言ってるのに?

何回かお願いするも、返答を濁らせ後に入ってきた男の子にはすぐやらせてた…

あ、そういうことね。すぐ辞めるかもだしね?店やるとか言ってるし?

まあ気持ちわかるんですけど…。

次のとこでも同じようにはぐらかされたりして。

「お前が男ならなあー全部教えてやるのに」

それは私が一番そう思っとるわ!!という言葉を飲み込んで要のはずのあんこ炊きを経験できずにお店やるしかないのか…と諦めてました。

最後のお店で

最後の修行先でもまあ無理かもだけどお願いしてみようと思って。

こういうわけで7年目なんですけどあん炊きだけやらせてもらえたことないんです、ここが最後なのでどうか教えていただけないでしょうかと。

ゆっくり教えることはできないかしれないけどできるだけ炊く時は入ってもらうようにするからと初めて前向きな返事もらえて。

最初から最後まで時間とって入らせてくれたのは1度だけ。

人気の店だったので2人抜けると他の人が大変なんでそれからは時々時間あれば入らせてもらえるようになった。できるだけやらせてくれようとしてくれました。

修行とは…なんなんだろう?

結局1回だけひと通りはやらせてもらえたものの、開業するときは不安でしたね。

大福だしあんこで良し悪し決まっちゃうかも…変じゃないかな?大丈夫かな?と。

もう誰も指摘してくれる人いないし…と心配でしたがいざやってみるとお客さんに「あんこがすごく美味しい!!」と言われ少々複雑な気分になりました。

今思うとあん炊きはこうだ!!みたいなものが経験できなかったのでわりと自由に自分の思うようなあんを炊くようになったので、結果的にはよかったのかも。

最後のお店のをベースに自分なりの炊き方でやってるので他はわからないし、そんなやり方してるの?って言われるかもしれないけど。

しかも豆から手で炊いてて今どき全部手作業でやってるとこも少ないんですけど、作れる喜びが私の場合大きい。

あんなに懇願してもやらせてもらえなかったことなんで作れて嬉しい!なんですよね。

だから苦じゃないので当たり前にやってしまう。大変じゃないの?とかえっ?全部手でやるの!?と驚かれますが。

修行ってこう正規の過程通らないとダメなんだっていう思い込みがあった。

先人達もそうしてきたんだし、基本は大事でしょと。

そうなんだけど、その先があって人に喜んでもらえて初めて成立するものなのに。

と分かってはいるんですけどやっぱり作りたいなという気持ちの方がまだ強いかなあ…

何でも、今でもスムーズに事が運んだことなかったので少々拗らせております。

↓入社時もスムーズにはいかなかった話です

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