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言い訳をやめた。髪を切った。


暑い日が続く…
じっとり汗をかいた首筋に、髪の毛がひたっと張り付いていた


元から、内向的な人間の私。
ずっと短かった髪の毛を伸ばそうと思ったのも、周りの人から
女性らしい、おしとやかなイメージを持ってもらいたかった。
他人の評価だけで出来上がってしまった様な自分。
他の人には真似できない様な事を成し遂げてみたい、などと一丁前の野望は持っているくせに、実際になると人の顔色ばかり気にしている。

合理的、独創的、論理的
こんな言葉達に憧れ、そことは程遠いところで
協調性を何よりも大切にする、その他大勢の中に紛れる普遍的な人間の私

心のどこかで、
私らしさを望みつつ、私らしいとは何なのかを聞かれると
すぐに他人と比べてしまう。
そうすると、喉まで上がってきた言葉はグッと押さえつけられ飲み込まれる
他人に頼らずには自分を言語化することはできない。


そんな風に、何かじっとりした気持ち
冷えたグラスの下に敷かれた、びしょ濡れになった紙ナプキンが
べっとりと心に張り付いていて、中々剥がれない。そんな感覚。


張り付いたそれを、1人では剥がすことの出来なかった
自分らしさを自分にいくら問うてみた所で答えは一向に見付からず…
終いには、地元の親友に手紙を書いていた。
「自分が何者なのか、わからなくなった」と…


数日経って返事が届いた。

短く、真っ直ぐな文章だった。
「あなたは、頑張り屋でいつも人の事ばかり考えていて、人の為に生きている様な人、ひとが大好きなのね。それで良いんだと思うよ」と書かれていた。



そうか、周りの人が気になるのは、人への興味が人一倍強いからなのだ。
1人1人の人生観、感じ方、思考を知りたいと思い、どんな人とでも関係性を築きたいといつも望んでいるのだ。
そういえば、近所の商店街を歩いていても、
美味しいそうな焼き鳥や、可愛い雑貨屋さん、お洒落なお洋服やさんよりも
そこで働いている御夫婦の笑顔、お店に入っていく家族の会話、仲良さそうにアイスを一口づつ交換している中学生の女の子達の楽しそうな雰囲気

それらを眺めながら、その人達の人生のストーリーを想像したり、1人1人の表情に自然と目がいっている事に気づいたのだ。
ああ、私はとことん人に生かされ、人が心のそこから好きなのだ。
その率直な気持ちで留めておけば良いのだ。
その人達の中に自分を登場させ、比べてしまうから苦しいのだ。



私らしさ、というよりは
私自身の大切にしたい価値観が見つかった気がした。
個人の人生の物語を大切にしたい。
その人がどう生きてきた、これからどう生きていきたいのか
沢山の人の人生観に触れて、その時に感じた気持ちを大切にしたい。
自分のメガネで評価せず、感受したそのもののままで留めておこう。

ひとが好き。


自分の大切なものが見つかっただけで、
剥がれなかったあれは、いつの間にか風に飛ばされていた。

時には、自分で煮詰めて何かを考え込むよりも
他人から見えた自分を素直に受け入れて見ることで心が軽くなることもあるのだと知った。


ただ、他人の価値観を自分自身にトレースする事は避けたいと思う。
そうすると、自分の選択や思考に責任を持てなくなるからだ。
これからは自分自身で選んだ選択を、自分の言葉で紡いでいきたい。
大好きな人たちへ、気持ちが伝わる様に。



心が何だか軽くなった。
今日も暑い。
私は首元にひっつく髪の毛が鬱陶しく感じる様になっていた。

その日私は、髪の毛を短く切った

もう、周りからの目は気にならなくなっていた。
自分の大切なものは自分でわかっているし、
自分の大切なものを知ってくれている仲間がいると知ったから

きっとこれからの私の歩む道のりには、沢山の人の物語が溢れている

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