小説「彼女は狼の腹を撫でる~第38話・かくして母は失踪を終える~」
目の前には珈琲がひとつ、深煎りで苦めの濃いめ、砂糖も牛乳もなし。それとコーヒーゼリーにホイップクリームを多め。席は店奥の窓の前、とびきり眺めのいいところ。
向かい側の席にも珈琲がひとつ。角砂糖ふたつ、牛乳はなし。それと苦めのチョコレートをひとつふたつ。席は店奥の窓際。
その隣にも珈琲、角砂糖はひとつ、牛乳は小さじ1杯。それと紙巻の煙草、でも今日は火を付けず。
その向かい、私の隣にはレモネードがひとつ。チョコレートの欠片が散りばめられたクッキーは、すでに齧られている。
とぷん