オーラのしぶき(ハンターハンター 二次創作)6話

 石井は、専業主婦に3分40秒で勝った。最後はチョークスリーパーで落とす形になったが、首の骨を折る覚悟で締め上げた。終了のゴングが鳴り、歓声は鳴り止まなかったが、石井だけは青い顔をしていた。歓喜や笑顔は石井になかった。
 控室の石井は、シャワーを浴びながら自身の腕や脚がアザだらけなのに気づく。鈍い痛み。痺れて握力を感じない。
 前半、ガードの上から専業主婦がボカボカと叩き続けたのだ。
 鍛え上げられた石井の身体がミシミシと鈍い音を立てて痛めつけられた感触がした。

石井 「これは、、いつか負ける、、」

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 そして今、3試合目のリングにいる。下品な歓声が鼻につく。分かってるんだ、アイツらは俺が負ける瞬間が見たいんだ。 
 これで終わりにしよう、とても気持ちのイイ試合じゃない。
 短髪で無精髭を生やした熊みたいなおっさん。過去の二人と比べて頑丈そうだ。油断はしない。コイツらは本当に野生の熊のような強さを持っている。

 石井の右フックがおっさんのこめかみにヒットする。鈍い音が響く。汗が衝撃に合わせて弾ける。おっさんの輝くオーラも頭部を守り美しく弾けた。歓声が沸く。おっさんはガードを固め、前進して来た。おっさんの全身が光を帯びる。

山崎 「ほう、、」

 石井がガードの上から激しく打撃を打ち込む。まるで岩を叩いている感触。拳の方が壊れそうだ。

山崎 「反射でオーラの防御をしてるんじゃないな。あれは意思を持ってガードを念で強化してるぞ」

 石井のローキックやボディブローが数発入っているが、おっさんは顔を歪めるだけで前進を止めなかった。
 おっさんは顔も見えないくらい背中を丸め、亀の様にガードを固めていた。
 石井は後ろに下がり、背中に金網がついた。もう後がない。

石井 「クソが、、!」

 石井が拳を固める。右のショートアッパーが、縦におっさんのガードをすり抜けた。
 顔が見えないくらい背中を丸めたおっさんの顔を下から引っこ抜いた。
 ヒットの瞬間、石井の拳にも輝くオーラが集まって来ていることに山崎と京平は気づいていた。

 ヒットと同時に輝くオーラが弾けていた。歓声が大きく沸く。一瞬、おっさんの意識が飛んだ。鼻血を出しながら石井の胸の辺りに額を押し付けた。いや、寄りかかったという方が近いかもしれない。石井は金網に押し付けられる形になった。ガードの上から打ち続けた石井は息切れしていた。畳み掛けるのに遅れが出る。
 意識が戻ったおっさんは拳にオーラを集めていた。ゼロ距離から、身体を押し付けられ、後ろは金網、逃げられない。
 石井は覚悟する。念を使えない彼だが、格闘技に携わり続けた年月、経験、防衛本能からオーラが反応していた。
 おっさんのボディブローが突き刺さる。石井のオーラとおっさんのオーラがぶつかった。光がぶつかり、輝く水しぶきのように弾けた。
 しかし、おっさんのオーラが上回っていた。
 失神した石井は、白目を剥いて前に倒れた。
 歓声が大きく沸いた。セコンドが駆けつけ、石井は担架で運ばれて行った。

山崎 「京平、、」
 京平が振り向く。
 山崎が笑いを堪えながら言う。
山崎 「お前、これ出てみろよ」

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