パロディ(ダスト・エッセイ)

 知的財産権をテーマにした漫画「それってパクリじゃないですか?」がテレビドラマ化されていたので観ていた。曲がりなりにも研究や創作をする自分の目線でも楽しめた。元ネタに対して愛があればパロディ、リスペクトがあればオマージュ、どちらもなければ、あるいは自分の利益のためだけに模倣するならパクリになると物語の前半に語られる。

 そういえば最近、ふと思い浮かんで、中原中也の「汚れちまった悲しみに」を模倣した詩「溺れちまったカナヅチに」を書いた。

  溺れちまったカナヅチに
  今年も夏がやってくる
  溺れちまったカナヅチに
  今日も浜風ギリ届く
  溺れちまったカナヅチは
  水での浮き方知らぬまま
  溺れちまったカナヅチは
  プールの授業でちぢこまる
  溺れちまったカナヅチは
  プールに飛び込んだ三歳の日から
  溺れちまったカナヅチは
  父の救出で今生きる
  溺れちまったカナヅチに
  「鎌倉出身!?日焼けしてるし、サーフィンすんの!?」
  溺れちまったカナヅチは
  なすところなく浜歩く

 この些細ながらも慢性的なコンプレックスが、ふと思い浮かんだ模倣によって、成仏したように思える。自虐ネタから、笑い話になった。中也に親しみはないが、これを機に、彼とこの詩には何だかとてもお世話になった気がする。元ネタの切なさとそこに愛情と温もりを感じさせる絶妙なリズムには、模倣することで愛着が湧いたのかもしれない。

 ジャニーズWESTが歌うこのドラマの主題歌「パロディ」には、次の一節がある。

  人生にパロディって思えたら
  明日もきっと
  笑ってキミと
  過ごせるんじゃない

 この度僕は、小さなパロディを見つけた。


(2023年7月6日投稿)

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