義足の人がエスカレーターに乗るとき。
先日のNHK「チコちゃんに叱られる!」で「大阪の人はエスカレーターで右側に乗るのはなぜ」というテーマがあった。「片側を空けるのは阪急電鉄が始めたこと、大阪が右を空けるのは大阪人がせっかちだから。でも今は両側に立つのが当たり前」という答えだった。
両側に立つのが当たり前。改めて言わなければいけないほど、今は片側を空ける方が当たり前で、しかも「マナー」「ルール」のように言われている。右側に立っていようものなら、後ろから舌打ちされることすらある。
さて、私のダンナ様は左膝から下が義足である。今はフリーハンドで歩いているが、リハビリを終えて退院した頃はT字型の杖を使っていた。杖は「義足側にかかる荷重を軽くする」ために使うものである。
二本足で歩くということは、当たり前だが「右足・左足を交互に出す」ということ。左足が地面から離れている間は、右足で体重を支えることになる。左下肢義足のダンナの場合、右手に持った杖+自分の右脚で体重を支える感じ。右に杖を持つことで、万一杖が滑った時も右脚で支えることができるので転ぶ危険は少なくなる。
左脚義足の人がエスカレーターに乗る場合
さて、そんな左下肢義足の人が杖を持ってエスカレーターに乗る時は、右手に杖を持ち、エスカレーターの左側に乗ることになる。杖を使わない義足の人は、右側に乗って右手で体重を支えることもある。
さて、想像。片側をさっさかさっさか歩かれて、万一杖を引っかけられたりしたら・・・義足側にぶつかられたりしたら・・・危険なわけだ。
夏はウチのダンナは基本半ズボン&脚部分のウレタンを付けていない(金属むき出し)ので、見た目に義足とわかるが、冬はパンツで隠れているため義足とわからない人も多い。義足装着者に見えなければ見えないで危ないのである。今は杖を使っていないので、余計にわかりにくい。
特に杖なしで乗っていると、左だろうが右だろうが横をさっさか歩かれるのは、ちょっと怖い。義足側をさっさか歩かれるのも怖いのだ。
退院間近となった頃、駅のエスカレーターを昇り降りするリハビリをしたが、その時にPT(理学療法士)さんとOT(作業療法士)さんに言われたのは、
「エスカレーターでは奥さんが隣に乗ってください。バランスが崩れた時に支えられるので」
ということは、私たちはエスカレーターに横に並んで乗ることとなる。「右側を空ける」ことが常識と思って疑わない人たちから見れば、なんと邪魔なデブ夫婦であろうか。
「後ろから何言われても、義足なんで、って言って無視してください」
はい、そういうのは得意。ただし、ウチのダンナの場合、文句つけてくる人が居ようものなら、違う意味で大変なことになりそうだ。まあ、彼は見た目がちょっとアレなので、直接文句を言ってくる人は少ないとは思うが。
想像力を忘れずにいたい
東京都の理学療法士協会が作った「わけあってこちら側で止まっています」というキーホルダーがあるそうだ。が、これもヘルプマークやマタニティマークと同じように、気づかない人も多いかもしれないし「だから何?」と思う人もいるかもしれない。
本当は、明らかに義足であったり、ギプスをつけていたり、杖をついていたり、マークをつけていたりという「目印」がなくても、困っている人がいるかもしれない、と想像できるのがいいと思うのだけれど。将来自分だって身体が不自由になるかもしれないわけだし。
そこまでいかなくても、例えば左手首を骨折していたら右側のベルトにつかまりたい・・・のが当たり前だよね。それでも左側に乗れというのが「正しいマナー」なのか? それとも「エレベーター使えばいいじゃん」という問題なのか? 断っておくが「障害があるんだから優しくするのが当たり前、体が不自由だから特別扱いしろ」とはまったく思わない。ただ、想像力を働かせたいと思うのだ。自分も含めて。
目の前しか見ないのではなく、少しだけ想像力を働かせて。ケガをしている人、体が不自由な人、体のどこかが痛む人、赤ちゃん連れや子ども連れの人、いろいろな人が大多数の人に遠慮して「小さく」ならないような街であってほしいと思うのだ。
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