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その部位を食べる意味、考えたことある?「同物同治」の教え

好きな肉の部位はあるだろうか?

カルビ、スペアリブ、ロースにタン、肉っぽい部位が好きな人もいれば、ハラミ、ハツ、ミノなど内臓系が好きな人もいるだろう。

筆者はどちらかというと内臓系が好きで、やっぱり小腸(ホルモン)のこってりしたところが好きだ。

だけど最近は、顎の肉でも食べた方が良いかな、なんて思うことも多い。実は昨年、顎の骨に腫瘍が出来るという病にかかり手術をした。顎の手術をするとご飯が食べれなくて辛かった。

なぜ顎の肉を食べたいのかというと、「昔の人はどこか悪いところがあると他の動物のその部分を食べていた」という話を聞いたからだ。

これを「同物同治(どうぶつどうち)」といい、中国の薬膳で用いられている。そのため今でも中国では内臓系が高く売られているらしい。現代の医学から考えるとにわかに信じ難い。しかし現代人とて、病気のことを考えると試してみたくなる。

肉を食べる時に、何も考えず食べるのではなく、その意味を考える。肉となった彼らに対する、最大限の愛情表現とも言えるだろう。「お前は私の中で生き続けるんだ」と。

ところで、たまに目にする「私の中で生き続ける」論も不思議な信仰である。ただこの思い込みは、医学的に本当か嘘か、分からない。嘘だと証明できないからだ。だから私が「私の中で生き続ける」と思えば、それは正しいのである。

頭では分かっていても、心のどこかで願っている。理屈だけではない、描いた展開通りに進まない。そこが人生の面白いところでもある。

『君の膵臓を食べたい』

なぜこの作品がそこまで話題になったのか。

それは、よくある「病気のヒロインが死んじゃうお涙頂戴」系のようで、そうでないからだろう。

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(eiga.comより)

お気づきかもしれないが、「昔の人はどこか悪いところがあると他の動物のその部分を食べていた」という話はこの映画で知った。

よくある王道の物語は、「実は病気の彼女のために必死に頑張る主人公の願い空しく、彼女は病に倒れて死ぬ。主人公はその経験を「良い感じ」に自分の中で昇華して、前向いて生きていく」というものだ。

主人公がヒロインの死を昇華できるのは、「彼女が私の中で生き続けてる」と思い込めるからだ。しかしヒロインから死ぬ間際に「生きたい」と言われたら。 ヒロインの死が予想できなかったら。主人公はどうやってヒロインの死と向き合うのだろうか。

『君の膵臓を食べたい』は、単なる「同物同治」の話でもなく、「私の中で生き続ける」論が展開される話でもない。
この作品には「理屈だけではない、思い通りに進まない」人生の面白さが詰まっている。

現在はamazonプライムで無料視聴可能なので、焼肉を食べながら鑑賞するのも良いかもしれない。


編集:アカ ヨシロウ

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