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生まれ変わったら、を考えてもいいじゃない

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。
今回のテーマは「#生まれ変わったら」です。

「生まれ変わったら何になりたい?」

しまった。いつも陽気で、悩みがなさそうな彼にしてみる話題ではなかった。

深夜3時の下北沢。友人たちと飲んで終電を逃した彼と僕は、始発まで近くのネオ居酒屋で時間を潰していた。アルコールで頭が回っていない中で話題もなくなり、何となくで話題を振ってしまった。

「生まれ変わったらかぁ…」
彼は氷の溶けきったハイボールを飲みながら、目線を空にやって考えている。

飲み干したハイボールを勢いよくテーブルに置くのと同時に「特にないな」と答えた。

心の中で「ですよねー」と呟きながら理由を聞いてみた。

「生まれ変わりを考えるより、生きている今を考えた方が良いでしょ?てかその気になれば、生きているうちに何回でもやり直せるじゃん。生まれ変わりを考えるなんて、真剣に生きていない人の発想だよ」

「逆境が人を強くする」がポリシーの彼らしい理由だった。

有名大学を出てベンチャー企業に新卒で入社。だけど会社が上手くいかなくなって、潰れる少し前に取引先の企業に転職。そこで知り合った人たちと今度会社を立ち上げるそうだ。

実際にしんどい時期を乗り越えてきた彼だからこそ、言葉に説得力がある。生まれ変わりを考えない理由も、なるほどな、と思った。

だけれど何か少し引っかかりがあった。

このことを思い出したのは『ヴィレッジ』を観た時だった。

主人公の片山優は、村全体から嫌われながら、そのことを自覚しながら粛々と生きている。彼の目に光はなく、仕事仲間から虐めを受けても気にしない姿は「いつ死んでも良い」ように見える。

タバコを吸いながら死んだ目でパズドラをしている片山優を見て「自分だったらこんな村出ていくのに」と考えが過ぎった時に、彼の「生まれ変わりを考えない理由」を思い出した。

彼がもし片山優に会ったら「立ち向かえ」と言うのだろうか。もしくは「東京に行け」と言うのだろうか。

どちらも片山優にとっては難しい話だ。誰もが自分で最善の選択肢を取って生きれるわけではない。誰もがそんなに強いわけじゃない。

現実に片山優がいたら、生まれ変わりを願ったとしても、何ら不思議ではない。(映画としてはただの現実逃避、妄想話になってしまうので面白くないが)

誰しもに「現実と向き合え」と言う世界より、「生まれ変わったら」を考えても良い世界の方が、素敵だと思う。

今度彼に会ったら「僕は生まれ変わったら、映画スターになって、世界中を飲み歩きながら友達を作り続けるけど、生まれ変わったら何がしたい?」って聞いてみよう。

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