代わりに持ってくれたらいい
外は寒くて家にいるはずなのに家もなんだかさむい。四角い部屋の隅から手が伸びて私の首をしめてくれたらいい。寝てる間に魂が間違って抜けちゃって、そのまま漂ってくれたらいい。私がやること全部許してくれたらいい。許してくれなくても、認めてくれたらいい。涙を流して布団にくるまっていることしか出来ない時、何を聞かずにどうでもいいままで背中から抱きしめてくれたらいい。乾燥した唇の割れそうな部分を舌でこじ開けてくれたらいい。いつでも死ねると思いたくて握りしめているカフェイン剤を、代わりに持ってくれたらいい。いくら擦っても温かくならない指先を、やさしく包んでくれたらいい。でも私の今まで抱えてきた悩みなど何も聞かないでいてくれたらいい。
「神様がいたらこんなことになって無いはずだから神様なんていない」って言った私に、お前は「でも神様っていたほうがおもろくね」って言うんだ。じゃあお前が私の神様になってくれるのかよ。布団に嗚咽隠すのも、頭の中が黒くなっていくのも、全部神様のせいだって言ってくれるのかよ。ね。
ぱらぱらぱら雨が降ってがらがらがらドアが開いてどんどんどんどん暗くなる脳内をぎしぎしぎし軋む口角で誤魔化してぶるぶるぶる声帯を震わせてなんでもないですという声を出す。落ちた視力に気付かないふりをして、壊れかけのイヤホンで心を正す。死んだ人の誕生日。生きている私の誕生日。間違い探しみたいに違う部分をさがす。世界が怖くて目を閉じても私は死なないように息をしている。無視とは存在の否定です。ね、心がずっと痛いのはずつと刃物が刺さったままだからですか。
額に致死量押し付けて祈った。平日の海に行く。
こんにちは。1ヶ月ぐらい前の下書きが見つかったので1ヶ月後のわたしが加筆しています。
大学を卒業しました。人生第1章が終わったような気持ちです。喪失感の中にある将来への不安と微かな期待(何かが変わるかもしれないという)が渦巻いています。最寄りの駅への終電がなくなり、遠回りして別の路線の終電で帰りました。いつもと違う駅からでて家までの帰路を踏みしめたとき、式が終わるまで降っていた雨の名残を感じ、漠然とこれからどうなってしまうのだろうと考えてしまいました。ちょうど酔いが覚めてきて、さっきまで腕を組んでいたともだちの温もりが恋しくなって、眩しすぎるほどの街灯が反射している水溜まりを避けながらイヤホンをカバンから探して歩きました。最近好きなバンドの好きな曲を聴いて、花束が腕の中から香って、やけに荷物が重くって、ブーツで歩き疲れた足がだるくって、綺麗に固めていたヘアセットが崩れているのを見ないふりして、人がいないからって外したマスクの向こうからずっとそこにあった空気が押し寄せて、なんだか泣いてしまうかもしれないと思ったけど泣きませんでした。ただ、この日をこの夜を思い出してしまう日が来るのだと確信していました。きっと私たちは今までの人生でいちばん辛い経験を何度も塗り替えていかなければならないし、その度に泣いてしまうかもしれないけれど、きっと生きていたいと今あの瞬間思っていたことは真実に変わりないのだと思います。「きっと大丈夫だ」と言い合ったこと、忘れずにいたいです。
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