【映画】JOKER

本日は映画レビューです。

概要

表題 JOKER
監督 トッド・フィリップス
出演 ホアキン・フェニックスほか
公開 2019年

バットマンの悪役「ジョーカー」誕生秘話を描く物語です。バットマンはじめ、アメコミに対する知識が全くないので完全にスルーしていましたが、良いとは聞いていたので何の気なしに借りてみました。
※ネタバレを含みます

バットマンファン以外も見るべき

 バットマンというワードに引きずられ過ぎていましたが、これ社会派映画じゃないか?と思いました。
 もちろんバットマンファンの方が楽しめたのかもしれませんが、弱者が社会の底へ転がり落ちて悪の化身へと変化する様子は、単なるフィクションとは一線を画していました。ジョーカーにはならないにしても、こんな風にギリギリのところで踏みとどまったり苦しんだり、転げ落ちてしまう人々は現実にいます。その様子をドキュメンタリーで見せられているようで、のうのうと毎日を過ごしている自分は胸がえぐられるような感覚でした。

 発想が飛躍しすぎているかもしれませんが、ジョーカーではなく、現実にいる連続殺人犯が誕生する様を見せられているようでぞっとしました。

救いがない

 基本的に、どこにも救いがないストーリーです。ピエロの仕事で細々と暮らしていた主人公が、様々な支援や縁を少しずつ断ち切られ、社会全体に憎しみを持つようになり、ふとした弾みから罪を犯します。そのきっかけ自体、主人公に非はないものです。
 そこから後戻りできなくなり、実際に社会に復讐していき、悪のシンボルとなる様子が克明に描かれています。フィクションなんですがすごい臨場感です。たぶん脚本が上手いのと、俳優さんの演技でものすごく引き込まれていきました。
 最後のTVショーに出演するあたりからラストまでが特に秀逸というか勢いがありました。

好きな伏線

 私自身、伏線とかは気付かないぼーっとした人間ですが、この映画はそんな私にもわかりやすく、痛烈な皮肉だったり、わかりやすい伏線があるシーンがありました。好きだったのは、はじめとおわりに主人公が全力疾走するシーンです。
 はじめの全力疾走は、ピエロの仕事で使っていた看板を子どもに奪われ、追いかけるシーンです。言ってみれば悪を追いかける側として、全力疾走しています。
 おわりの全力疾走は、容疑者として追われている中での全力疾走です。自分自身が悪になってしまったのです。
 この、「良」から「悪」への転換が、この2つの全力疾走のシーンでよく表現されていると思いました。

社会をちょっと心配する

 また、これも飛躍した発想ですが、この映画が大ヒットしたという事実をちょっと大丈夫かな…?と思いました。

 映画の中で主人公は、ピエロ姿でエリートサラリーマンを殺害してしまいます。この事件は犯人不明として世間で騒がれるようになるのですが、不気味な事件というより、搾取する強者に制裁が下った、というような文脈で、社会の一部の層には比較的好意的に受け止められます。のちのち、この殺人ピエロ(主人公)は、悪なんですが、弱者には社会への復讐の象徴として持ち上げられるようになります。

 こんなストーリーの映画が受けるということは、このストーリーに共感する人がたくさんいたということになるわけで…
 格差社会を実感するというか、格差や、格差への不満を感じている人が多いのではないかな、等と考えました。

 もちろんストーリーとして面白いのは間違いないのですが、私自身は抉られる感覚が強く、何回も見たい映画ではないなあと思いましたので。

まとめ

 冒頭にも書きましたが、バットマンか~と敬遠している人にも見てもらいたい映画です。個人的には格差社会を描いている映画に受け取りました。
 
 私の駄文と共通することを、私よりはるかに上手に書いている記事がありましたので、リンクを貼っておきます。
 監督自身はこの映画に政治的意図はないとおっしゃっているそうですが…私は社会派映画だなと思いました。

 

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