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馬と踊るフラメンコ

フラメンコは日本でも、かつてスペインを旅行した時も見たことがあったけれど、馬と踊るフラメンコなんて初めて見た!

事前に受け取った旅程には「ダンシングホースショー」とだけ書いてあって、どこでどんなショーを見るのか、全く分からなかったのだが、なんと、滞在中のフィンカに馬一頭と騎手とフラメンコダンサーがやってきて、敷地内の馬場でショーを披露してくれた。

こちらが会場

私たちはと言えば、自然のスタンド席でワイン片手にデッキチェアでくつろぎながら優雅に鑑賞、のはずだったが、携帯で動画を撮りたくて、いささか前のめり。これ、夜の7時過ぎだったと思う。日はまだ高く、夕陽が沈む気配すらない。

2人乗りで登場

大きなDVDプレイヤーだろうか。昔のカセットデッキみたいなデバイスが馬運車近くに1台、ドンと置いてあって(会場数か所に設置したスピーカーとかではなく)、そこから音楽が流れ始めると、ショーのはじまりはじまり。

騎手とダンサーが1頭の馬に2人乗りで登場(乗馬クラブとかではみたことない! やったこともない!)。常歩で中央まで来たら、ダンサーを下ろすのかなと思ったら、なんと軽快に駈歩も旋回もする! もうここでくぎ付けとなり、写真撮るのも忘れて、さらに体を乗り出してかぶりつき。

2人乗りで駈歩をしているところ

このときはまだ知らなかったが、ダンサーは単なるキルティングのパッドに座っているだけで、騎手の腰に手を回しているが、横に座りながら、自分でバランスを取っている。真ん中に跨って感じる動きとは違うし、後ろの方が動きが大きいのでは? 優雅に乗っていたけど、実はすごいことやっているのではないかと思う。

後日、セビリアの馬祭りで、こうして後ろの席が空いているところをみたけど、簡単な四角いパッドが鞍の後ろに括り付けてあるだけのように見える

しばらく2人乗りの美しい騎乗を見せたあと、ダンサーが下馬。ここで音楽もフラメンコ風になり、ダンサーと馬とで踊り出す。もちろん、騎手がコントロールしているのだが、まるで馬が躍っているように見える。

馬を右に左に自在に動かし、右にも左にも小さく旋回ができ、本当に踊っているようだった。

まるでダンサーと馬が見つめあっているよう

と、そこへ陽気な音楽にもうじっとしていられなくなった犬が乱入。自分も踊る! とばかりに走り回る。そんな予想外の展開、動きにも馬は動じることなくダンスを続けていた。えらいなぁ。プロだなぁ。

犬はめちゃくちゃ楽しそう

ガロッチャ

最後は騎手が棒高跳びでもしそうな長い棒を持っての騎乗を披露。この棒はガロッチャ(Garrocha、スペイン語)と言うそうで、あの有名な物語、ドン・キホーテが持っているのもこれではないかと思ったりするが、辞書に「家畜を追う突き棒」とあるから、騎士道はまた違うのかな? 

ドン・キホーテというとこのイメージ

ドン・キホーテはいつ読んでも、名前も地名も頭に入ってこなくて、恥ずかしながら、最後まで読んだことがない。これを機会に読んでみようかなと思ったりしている。

これ、駈歩しながらやっています
ガロッチャと体の間の隙間を潜り抜ける
馬と一緒にです
しかもスピードが落ちない感じ

ガロッチャを肩に駈歩というのも本当にすごいと思う。バランスがむずかしいでしょう、きっと。とても長いし、片手で手綱を持つわけだし。姿を見ただけでは、多少お腹が邪魔そうな騎手だったが、実になめらかに流れるように何度も旋回して見せてくれた。

肩に担いて駈歩

素晴らしい騎乗だった。色んな技が入っていて、私はその難易度とか何をやっているとか、全部はわかっていないのだけれど、オリンピックで見るスポーツ競技の馬術とは違う、もっと深く根付いた歴史や文化を感じさせ、順位を争うのとは違う、誇りに満ちた力強い騎乗だった。

ブラボーと拍手を送りたい
ね、恰幅がよいでしょう? でもそれが凄い安定感を作っているのかも
ガロッチャはとても長いんです。これで駈歩してたんだから、すごいなぁ

ショーが終わって馬のそばに行くと、汗がしたたり落ちていた。馬装をすぐにといて、編み込み、それをさらに2つ折りにして短くしてあった尻尾も解いて、汗取り用の馬着を着せて、あっという間に帰り支度が整っていた。

帰る準備。尻尾が長くなっている。
この段差を馬はひょいっとジャンプして中に入っていった。普通、馬運車の後ろの扉を下ろすとスロープができて、それでスムーズに乗るようになっているが、スペインの馬はタフだなぁ


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