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シベリアの馬 ジャンパー

普段の仕事に加えて、断ればいいのに引き受けた翻訳に苦しんでいる時に限って、図書館で借りて来た本が気になる。しばらく積んであったのに、無性に読みたくなる。

一度読んで、すごく良かったので、いつかまた読もうとずっと思っていて、先々週くらいに図書館で借りてきた『シベリアの馬 ジャンパー』だ。

馬の視点

『吾輩は猫である』は猫の視点で書いた小説として世界的に有名だと思うが、馬の視点で書かれたと言えば『黒馬物語(Black Beauty)』が有名だ。映画やアニメにもなっているし、名作中の名作と言えよう。私も大好きな本だ。

『黒馬物語(Black Beauty)』は、当時(今調べたら1877年に出版している)の馬の扱いに心を痛めていた作者が7年もかけて、1頭の馬が生まれてから経験することを語りながら、時には馬の苦しみを代弁して、馬の待遇、扱いについて、人々に知ってもらおうと書いているので、辛い場面もあるし、馬が語りながらも、どこか人間の思考に近い感じがする。

本能に近い

『シベリアの馬 ジャンパー』も馬の目を通してみる世界を同じく、生まれてからの様々な経験として語っているのだが、もっと馬の本能に近い感情で綴られている。その時、その一瞬を思いっきり楽しんでいる様子や、なんだかわからないけど体の内から沸き起こる気持ちが生き生きと描かれていて、文字を読んでいるのに、ジャンパーが走ったり、匂いを嗅いだりする姿を間近で見ているような気分になる。馬って、そんなに深く考えて行動するというより、こんな風に母親を真似たり、快不快、慣れている、慣れていないとかで判断したりするんだろうなぁと、馬から見た世界をちょっと体験できる感じなのだ。

まえがき

もう1つこの本の好きなところがまえがき。短い文に馬への深い愛しみが感じられる。今では想像できないが、昔は馬は戦争にはなくてはならない存在だった。「その馬たちは、何もわからないまま、文句一つ言わないで人間が引き起こした痛ましい運命に巻き込まれ...」とある。馬への優しい眼差しを感じずにいられない一文だ。

読みたい

まだ途中で、4歳とかそれくらいに成長したところで、これから戦争や転々と主人も変わりながら、物語は進んで行く。一気に読みたいところだが、翻訳を仕上げなくてはならない。今夜はもう少し頑張って終わらせないと。

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