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【2024.8フランス旅行記】企画をはじめる時点で旅行ははじまっているの巻

 夏休みに、フランス旅行に行くことになった。
 当初はニュージーランドなどを検討していたのだけど、夫の「子どもたちにはもっとわかりやすくイメージのわく国のほうがいいのでは」という気軽な助言により、フランスに決定した。とりあえずわかりやすい「ディズニーランドパリ」と最近授業でフランス革命をやったばかりの長女が希望する「ヴェルサイユ宮殿」を盛り込み、あとは白紙のフランス旅行。
 職場の予定をチラ見しつつなんとか飛行機をおさえ、このあと宿を決定するためには行程を決めねばならぬ。決めねばならぬのでどこに行きなにをしたいかなるはやで申告するよう家族に周知した。これにより候補にあがったのはブルゴーニュ地方で、夫がワイナリー巡りをしたいという。ふむ。であれば、フランス地図でいうところのどちらかというと右上エリアに絞る方がよかろうと思い、シャンパーニュ地方などにも行ける、このルートでここを拠点とするのはどうかね、そうすればこいうとこにも行けるし効率的にまわれる、とせっせと提案するがなんとなく興味薄め。なんだ!わたしばかりフランス旅行のことを気にしていてあとはいい感じにプランニングしてくれっていうオーラモロ出し無修正なの気に入らないんだが!みんなもっとちゃんと旅行のことかんがえてほしい!と文句たれていたところに放たれた夫のひとこと。「で、あなたはフランスでなにしたいの?そこに行けばいいじゃん」


!!!!!!!!!!!


 気づいた。わたしは気づいてしまった。
 わたしには、なーんにもないのである。これにはびっくりした。プランニングを丸投げするなと憤りながら、投げられたことをするしかできることがないんですよあたしにゃ。誰かの行きたいところの近くに何があるか探してわたしもソレを見させてもらう、それで十分だと思っていた。では当初企画していたニュージーランドではなにがしたかったのか。……ない。べつにないです。まっっっったくない。わざわざ14時間も飛行機に乗ってまでいきたいところ、みたいもの、食べたいもの、それが何一つ思い浮かばない。思い浮かぶものはみな、わざわざというよりも、近くに行くのだからせっかくなら行っときたい、その程度なのです。ほんとか?そんなことある?いや行きたい。わたしはフランスに行きたいと思っている。行きたいと思ってるがやりたいことはなにひとつない、これなによ。

 思えば、わたしはからっぽであった。
 普段から、やりたいことや食べたいものなど別にないのだ。わたしの唯一の貪欲行動は本屋の徘徊とカフェで本を読むことであり、それは隙あらばやりたいと思っている。とはいえわたしは出版事情に明るいわけではなく、好きな作家も特別いないし待ちわびている新刊もない。コーヒーが好きなわけでもない。洒落たカフェには気後れして入れず、スターバックスにしか行かない。この世に存在するものの中で、BTSはほんとに上位に君臨するのだけど、わたしは彼らに何も捧げられない。彼らの存在にただただ感謝するだけで、推し活に没頭し興じるだけの情熱がないのです。……情熱?いま情熱って言った?わたしの人生に、情熱など皆無だったかもしれない。情熱って、なんだ!聞いたことあるぞ!!

 行きたいところにわたしのために行く、やりたいことをわたしのためにやる。そういえば、記憶の限りではそれを、自分に許したことがない。だからといってべつに、我慢してきたわけじゃない。いつも自分の時間を誰かに捧げてきた感覚も別にない。わたしがわたしのため行動するという概念がこの世にあると、知らなかった、そんな感覚である。

 わたしは遠い目で思った。旅ってなんだろう、ひとはなぜ旅をするの、くちぶえはなぜ遠くまできこえるの、あの雲はなぜわたしを待ってるの、おしえておじいさん、おしえておじいさん、おしえてアルムのもみの木よ…………

 フランス旅行の個人的な目的を、やりたいことをやるに決めた。
 いいか、家族ども。わたしがやりたいことを決めたら、ついてきたまえ。そして一緒にやろう、わたしのやりたいことを。

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