見出し画像

殺さない彼と死なない彼女を観て

2022年秋、僕は男3人でシェアハウスをしている。
同居人は普通の社会人と芸人。
2人との関係は大学時代の友人。
友人というにはあまりにも濃い時間を過ごしすぎたので親友以上家族未満というのが一番適しているかもしれない。
そんな友族の一人、社会人の両星は料理が上手く、とても優しく、ちゃんとイカれてる。
わざわざ、咀嚼中の口の中を見せてくること、
酔ったら人肌が恋しくなるのか、ベタベタ触ってくるところ、実家のカレーくらい美味いカレーをつくるところ、普通にかっこいいところ、オシャレなところと色々あるが、今回は芸人をやってる山森から間接的に影響を受けた僕の話をしたい。

山森という男はそれはそれはストイックで人間付き合いも良く、お調子者だが、空気を読め、僕がトイレの電気をつけっぱなしにしていると怒り、部屋を散らかしていると「はぃ!片せぇー」と言ってくる母親気質のヒョロガリだ。
そんな山森は暇があれば映画やドラマ、アニメを見て題材を探している。
これはプロになってから始めたことではなく、僕の知る限り大学の落研時代からそうだった。
山森は落研時代のあだ名が【デンジャラスフェアリー】というものだったのでみんなから「デンジー」と呼ばれていた。
このあだ名のついた理由は確か、先輩らの前でいきなり、「一発ギャグします!!」といってギャグをしたことと、髪の毛を変な風に染めてたからだと思ってる。

当時の山森


落研時代も山森という人間は先輩、同期、後輩から好かれていた印象があり、2年から3年に上がるタイミングで山森が組んでいた「甘党バッテリー」は漫才からコントに移行した。

1、2年次は「ちょんちーですっ!デンジーですっ!甘党バッテリーです!ねぇねぇデンジ〜どしたんっ!ちょんち〜」から始まるラブラブ漫才をしていたが、3年になり、大学お笑いの中でも大きい大会だった【NOROSHI】での優勝を見据えてコントに転向した。
当時、自分の同期のコント師が
僕が組んでいた「アルストロメリア」と先述の両星のコンビ「パレットコロッケ」といつか詳細を書こうと思うが「ツーバイフォー」がいたが新規参入のコント師「甘党バッテリー」が見事全組を一掃して一番強いコント師になっていた。相方のちょんちーも演技がとにかく上手く、漫才の時より生き生きしていたように思うし、あのちょんちーを更により良いものにしている山森はマジでバケモンだと思った。
その山森とは大学時代もルームシェアをしており、その時からよく色んなことを話していたが、


3年のNOROSHI終わりくらいにこんな会話をした。

山森「俺、ちょんちーと組んでなかったら吉田と組みたかったんだよなー」
吉田「まじ!?あ、そーなんだー」
山森「まぁ吉田は堀野と組むっての結構早い段階で決めてたっぽかったからアレやけど…

僕はよく、お笑いの関係って恋愛に似てるって思う。これは紛れもない告白。僕の脳内ではずっと斉藤義和の【ずっと好きだった】が流れていた。その時は軽くスカした感じで「あ、そーなんだー」と言ったものの、内心むちゃくちゃドキドキしていた。僕らは3年が実質的引退なので、終わってから言ってきた山森には僕はどんな風に映ってたんだろう?もし入部当初山森と組んでたら僕はどうなってたんだろう?って、僕も山森がただでさえ逸材だったちょんちーを更に良くしたように僕をえげつない化け物にしてくれてたかもと考えたが、おそらく、甘党バッテリーだったから2人ともが化け物になってたんだろうなと今は思う。
ただ、この時にした他愛もない会話が就活中の僕の中でずっと残っていた。

大学4年の4月の暮れ、僕は夢に見たテレビ業界の内定をもらい、家族、彼女よりも先に山森に連絡したのを覚えている。

吉田「内定とりました!」
山森「ってことは4年次は俺と組んでくれるってことやなっ!」

こいつってやつはいつも欲しい言葉をくれる。
電話をかけた時点でどうこの話に持っていこうかと思っていたが開口一番でその話をしてきた。僕も「まぁーそういうことかな?」とこの時もカッコをつけてみたが、今思えば変に受け流してたこの回答がダサすぎるなと思う。

そうして、4年次は山森と組み、マウントラックとして活動を始めた。
この1年間は色んなことを試せたし、自分達には、時間もネタも余裕ができ、後輩のネタ何より自分達のネタがめちゃくちゃ楽しい1年だった。

でも、そんなんはどーでも良く、
卒業して4年が経つ今でもあいつはアニメや映画や漫画、ドラマを見ては「こんな題材どう??」と満面の笑みで言ってくる。それに影響を受けて今日、映画「殺さない彼と死なない彼女」を見た。良かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?