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「取材されやすい店」になるには

 ほとんどのお店には常連客がついていて、ウェブや雑誌やテレビなどのメディアに露出しなくても充分なのだと思う。メディアに取り上げられると瞬間的には客が増えるがその後さっぱり、または客が増えてしまってそれまでの常連さんが離れていくから迷惑千万、ということもあるだろう。

 すべてのお店が「取材されたい」と考えているわけではないというのは重々承知しているのだが、もし「取材に来てほしい、でもうちに来ないのはなぜだろう」という人がいたとしたら、ヒントになるかもしれないのでメモ。

 この夏から秋にかけて、ライターとして100軒以上のお店を取材した。お店のピックアップからすべて任されていたので、自分が好きで通っている店、友人がプッシュしてくれた店など選んで取材候補に挙げたのだが、中には結局取材しなかった/できなかったところもある。幸いなことに「うちは取材は結構です」と断られたことはなかったので、取材しなかったところは、アポがとれなかった/とりづらかった店、ということになる。

HP/SNSに連絡先(できればメアド)を掲載してください

 アポを取る際、まず重要なのは連絡先だ。そして、連絡する際のファーストコンタクトが「電話」というのは非常にハードルが高い。こちらもできるだけお店の邪魔になりたくないので、暇な時間を見計らって電話を……と思うのだが、通しで営業しているカフェやショップだと、いつ頃かけていいのか分からない。

 そこで便利なのが、メールやSNSのDM。「ご興味ありますか?」と感触を探ることもできるし、電話よりはずいぶんハードルが下がる。

 そして、できればメールアドレスを掲載しておいていただけるとありがたい。なぜならば、企画書も一緒に送れるから。取材する側の礼儀として、私は企画書を用意して必ず送るようにしている。DMやLINEだと、企画書を送るのに非常に苦労することがあるのです。ワードやPDFを添付できず、1ページずつスクリーンショットを取ってJPG変換して送ったことも……。途中でへこたれそうになった。というわけで、理想は、ファーストコンタクトでメール(企画書添付付き)を送れることです。

お願いなのでお返事をください

 今回、地味に参ったのがこちら。HPやSNSに連絡先は掲載されているのだが、メールを送ってもDMしても返事が来ない。心がすぐ折れてしまいがちな気の弱いライターだと、「あ、返事が来ないってことは、取材されるの迷惑なんですよね、すみませんでした……」と申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 そして自分としては「ご迷惑ならそっとしておきます」という気持ちになるのだが、「いやそこは絶対取材しろや!」と編集から怖い命令が入ることもある。そうすると一応電話せざるを得ない。で、電話すると「すみません、メール(DM)見てませんでしたー。取材は大歓迎です」だったりする。お願いです、取材歓迎の場合は、お返事をください……。もちろん取材は否、の場合は放っておいてくださって構いません。が、ひとこと「取材はお断りしてます」とお返事いただけると(HPやSNSに書いてくださってもいいです)、電話でご迷惑をおかけすることが減ります。


わがままなことは分かっているのですが、すっぽかさず、やさしくお話していただけると助かります

 さて、無事にアポが取れて取材に行ったら、なぜかとても不機嫌そうだったり(ドアを開ける前に中から喧嘩の声が聞こえてきたことも……)、果ては取材の日時を忘れられて、すっぽかされたりすることも……。町中の店なら「あ、出直しますねー」と言えるのだけれど、遠方のリゾート地だったりするとそうもいかない。

 もちろんこちらとしても、貴重な営業時間(もしくは休憩時間)をいただいていることは深く深く理解しているので、できるだけ効率よく話を聞いて写真を撮影するし、お料理など出していただいたら代金をお支払いするようにしている。大変なのはもう本当に分かるのですが、取材を受けたならば、せめて40分か小一時間は機嫌よくしていただきたいというのが切なる願い。すっぽかしは本当にダメージが大きいのでご勘弁を……。


 100軒以上取材して分かったこと、それは、流行っている店は働いている人の感じもいいし、その人柄が出ているお店も感じがいい、ということだった。そしてそういうお店は、どこを撮影しても絵になる(店主の心遣いがすべてに行き届いているから)。取材していて楽しいし、誰かから「いい店知ってる?」と聞かれたらここ紹介しよう! という気になる。「取材迷惑。メディア嫌い」というお店もあると思うのですが、ライターもカメラマンも編集も人間なので、たとえ「お断り」だったとしても、人間同士、丁寧に接しましょうや、と思うのです。


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