ミソジニーは地域がはぐくむ?

※お祭りの名称や時期、対象年齢は変えてありますが、内容はノンフィクションです。

我が一家が引っ越してきた地域では、年に1回神社で大きなお祭りがある。大人神輿、子ども神輿のほか、「こっちゃこ」と「花みこし」という山車も出る。「こっちゃこ」は数えで10歳の男子専用、「花みこし」は数えで10歳の女子専用だという。

「こっちゃこ」に参加する男子は着物を着て足袋をはき、傘をかぶって町内を練り歩く。一方「花みこし」に参加する女子は学校指定の体操着姿に法被。「女子だって、祭装束で町内を歩きたいんじゃないの?」と思った私は、神社&ジーサンズ(総代とか言われる人たち。全員、老人といっていい年の男性。女性はひとりもいない)に「女子はこっちゃこに参加できないんですか?」と聞いてみた。

答えはもちろん「NO」。
「これはもともと男子だけが参加できていた祭りなのだが、戦後、女性が台頭してきて女子もお神輿やりたい、って言いだしたんで花みこしを作った。なので性別は絶対(原文ママ)」
と言うのである。

え? 最後の「なので」って接続詞おかしいぞ、そこに因果関係はない、と思ったが(そんなこと言ったら、高野山はかつて女人禁制やったし、昔はガテン系職業につく女子なんて本当にいなかったし、それは時代に合わせて変えていけばいいのでは?)、私はこの地域で生まれ育ったわけではない。今後、一生住む気もない、ただの通りすがり。地域の人がいい、と思ってやってるんだったらよそ者が口出しするのも変な話だよね、とスルーした。

しかしながら、その後看過しがたい案件が浮上……。

「こっちゃこ」に参加する男子は、祭りの前に地域の公民館で着物に着替えるのだが、なんと祭り当日、公民館には「花みこし」に参加する女子は立ち入り禁止なのだ。「こっちゃこ」に参加する男子は神の使いだから(これも意味不明。なぜ神の使いだからって女子を出禁にするの? しかも「こっちゃこ」に着物を着せるのは地域の婦人会=女性なのに……)。けれども女子だって、誰が来たか来ていないか把握するために受付をしないといけない。それは公民館の中ではやれないので、「縁側」でやれってさ。そして「こっちゃこ」参加男子は「神の使い」なので、手を汚したらいけない=草履は付き添いの母親が脱ぎ履きさせるんだって。

私は思った。
日本で女性の社会進出が進まないのは、人や、ひいては社会のミソニジックな意識によるところが大きいと思っているのだが、そりゃー低学年のうちにさ、「男は神の使い、女は出禁」にされたら、男子は「俺ら特別」と思うだろうし、女子は「やっぱり女だからか……」って刷り込みされるよね。

我が子もきっと、近い将来その年が来たら「こっちゃこ」に出たい、と言うだろう。だが諄々と言って聞かせなくてはならない。「お前は神の使いではない。女子が出禁になるのはおかしい。そういうことをよく分かった上で祭りに参加しろ」と。おそらく数えの10歳ではすべてを理解するのは難しいだろうが、折に触れてミソジニーの毒を教え、視野を広げることを諭さなければいけない。そう心に決めたのであった。



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