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メンタル・マッチョ・ゴリラ<誕生編> vol.12 「風が強い日その2」
その日も朝から雲が厚く垂れこみ、
風が猛烈な勢いで吹き荒れていた。
内線が鳴った。また、エレ君からの催促だった。
「yaoki、どんな具合だ?」
私には、ある任務が強引に課せられていた。アナコンダのファイル山から開発停止中の資料ファイルを盗って取ってくるという、、、。
ガツガツとした若手営業達にとっては、喉から手が出るほどのお宝らしい。
「頑張ってます。」
いつも通りの返事をしては電話を切る。あの説教部屋での秘密の会合以来、ずっとこんな調子だった。
私は、真横にそびえるファイル山をウンザリしながら眺めた。
どこに何があるのか見当もつかない。
恐らく本人だって分かっていないだろう。
それに、
下手に触ると確実に崩れる。
私は、ファイルで圧死するか、アナコンダにシメられるか、の2択しかない未来を憂いた。
それに、勝手に持ち出す、って、、、。
ガッツがある、とお偉方に、
できる新人、と先輩たちに、
誤解だらけなうえ、どちらの期待からもかけ離れた自分に、一人曇天の空を眺めながらゴチるしかなかった。
バンッ!!
私の思考は、突然の轟音でぶっち切られた。
オサムがドアをあけ放ち、外階段から、戻ってきたのだ。
「キャー、すごい風だった、、、」
机にあと数歩、というところで、しゃがみ込むオサム。
園児は、注目を集めたい。
PS全員がまたしても華麗にスルーを決めこみ、私はオサムの現在位置を掌握したことに安堵した。
猛獣使いが、ただ一人、園児を気遣う。
「オサムくん、大丈夫?」
「もぅ、風がすごくて、、、。
商品が飛んでっちゃったー」
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フロア全域がフリーズした。
「オ、オサムくーん、今度は、なにー?」
猛獣使いは、すでにダッシュをかけている。
「うーんと、、、
橋爪さんに借りたアレ、
かなぁ〜?」
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その瞬間、PS指令室では、
フォルダ峡谷の方角に、大きくのたうつ影を探知。
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フロア中にに警報が鳴り響き、
皆、一斉に避難を始めた。
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とうとう、、、
人の姿を捨て去り、本体が姿を現した。
その身をうねらせ、目は爛々と光り、チロチロと紅い舌先をちらつかせている。鎌首をもたげ、アナコンダが不気味な声を発した。
「アタクシのぬぁ〜にぃ〜を〜、、、」
「あ、多分、ゴールデンのネックレス」
商品を載せたトレイを見ながら、事もなげにオサムが答えた。彼は、橋爪係長の虎の子「パールコレクション」を持ち出していたのだ。ゴールデンとは、南洋真珠のことであり、金色を有するものは大変希少である。オサムは珍しい商材を確認したかったのであろう。
そんな修羅場に猛獣使いは、もう真っ青になりながら外階段へ通じるドアから飛び出していった。いつまでも来ないエレベーターを待つ余裕すらなかったのだろう。
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今度こそ、部長ヤバイ!
私と、あと数人もすぐ後に続いた。
重い扉を押し開けると、ものすごい風が吹き荒れている。
みな、あまりの強風にキャーと声を上げた。
今回は、装身具専用ケースに入っているので前回よりサイズはある。
あたりを付けようと猛獣使いは手すりから身を乗り出していた。
皆、急いで下界を見下ろす。
すると、、、
あった。
道路に何か落ちている。
「あれだー!」
まるでアメリカ大陸を発見したかのような雄々しさで、猛獣使いが叫んだ。
その瞬間、、、
ゴォォォォォォォォー
大型トラックが通過して行った、、、。
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁー
私たちは叫んだ。
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いやぁぁぁぁぁぁぁー
猛獣使いも絶叫した。
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回収されてきた価格、数百万円のネックレスの残骸を目にすると、アナコンダはゴジラへと進化し、咆哮を発した。
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激しく憤るゴジランダを尻目に、シラッと
「珠はもったいなかったわね~。でも、デザインがあれだったし。」
とオサムが言い放った。
その後、PSが受けた甚大な被害は人工衛星からも確認されたという。
そして猛獣使いは、、、
シン・猛獣使いへと本当に交代したのであった。
お読みいただきまして、本当にありがとうございます。
<誕生編>全14話の予定です。
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