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【レンズ選び】人の目は50mmという嘘と誤解

焦点距離50mmを使うと、人の目で見た状態に一番近くなる。

有名な…というかカメラマンなら常識レベルの知識ですが、この言葉に違和感や疑問を覚えたことがあるという人はいないでしょうか。
実際に50mmで撮影すると、意外と狭い範囲しか撮れないし、かといってもう少し広角で撮影すると日常では感じられないダイナミックな写真になる。

この記事では、僕が考える50mmの嘘と誤解について書こうと思います。


結論、歪みと圧縮における話しだった

先に答えを書いてしまうと、「人の目に一番近いのは50mm」と言うのは歪みと圧縮における事であり、決して「目で見た範囲が撮れる」わけでは無いと言うのが僕の意見です。
そして「焦点距離50mmは人の目に近い」というワードが「50mmに写る範囲=目で見た範囲」という誤解を生んでしまっていると思うんです。

ここまで400字弱でお話しが終わってしまいそうですが、もう少しお付き合いください。
この記事では「人間の視野角は何度くらいなのか」「実際目で見た範囲を撮りたい時は?」というお話しから、実際に広角、50mm、中望遠で撮影した時の画像で検証してみたいと思います。

人間の視野角はどれくらいなのか

人間の視野角は120度というのを何となく聞いたことがありました。そこで実際に調べてみると、視野角といっても「中心視野」「有効視野」「周辺視野」という3つに分けられることが分かりました。

視野角は120度なのか?

180度以上認識できてるけど…。

ホンダのサイトでちょうど解説してくれていました。

人間の視野は、その見え方によって「中心視野」「有効視野」「周辺視野」という3つが定義されています。
詳しくは上記サイトをご参照いただければと思いますが、全ての視野を合わせると両目で180度以上あるらしいです。

確かに、手のひらを耳の横に置いてみて(手のひらは視線側を向ける)そのまま横に動かしていくと、何かが顔の横にあることには気づけます。
両手を広げて動かしてみても、何かが動いているのは認識できるでしょう。
ただ何があるかまでは意識しないと分からない範囲なため、ここでは見えていないと言うことにしたいと思います。

必要なものを認識できる範囲

ホンダのサイトでは必要なものを認識できる範囲を「有効視野」と書いており、両目で約70度あるそうです。この有効視野こそが、見えている範囲と僕は考えました。

ここで一旦レンズのお話しに戻ります。カメラの視野角(画角)を計算できるサイトを使って、有効視野と同じ70度になる焦点距離を調べてみました。

計算の結果、30mmのレンズを使うと視野角は約71度。人間の有効視野とおよそ同じになります。

では50mmのレンズはどうでしょうか。
答えは46度でした。

実際目で見た範囲を撮りたい時は?

ここまでくると、「実際目で見た範囲を撮りたい時」のレンズがだいたい分かってきました。両目の有効視野と同じくらいで撮りたい時は30mm。50mmのレンズは片目の有効視野+αくらいの広さでしょうか。
50mmのレンズを付けている時は、ウィンクしながら動くといいかもしれませんね(笑)。

歪みと圧縮について

ここまでは「目で見える範囲」について書いてきました。50mmのレンズは人間の(両目の)視野角とは異なるということが分かったかと思いますが、「歪みと圧縮」においては人間の目で見た時と非常に近い写りをします。

広角レンズを使うと像に歪みがでます。望遠になればなるほど像の歪みは少なくなっていきますが、一定以上の望遠レンズを使うと圧縮率が高くなり人の目では見ることの出来ない像になります。

下の写真を見てください。

28mmで撮影

28ミリで撮影した写真です。広角レンズの特徴として、手前のものが大きく、そして奥にあるものほど小さく写ります。それが人間の目で見るよりも一層ダイナミックに見える理由です。また、実際にこの木は真っ直ぐ立っていたわけではありませんが、画面の端に向かって曲がっていく(歪んでいく)のも広角レンズの特徴です。(もちろん歪みを抑えた広角レンズというのもありますが。)

山椒の実。35mm換算で84mm相当で撮影。

次の写真は山椒の実を撮影したものですが、手前の実と奥の実(ボケている)の大きさに比率がおかしいのが分かるでしょうか。
人間の目だと、奥にあるものほど手前のものよりも小さく見えます。しかしこの写真は、同じ山椒の実でも奥にある実の方が大きく写っています。これが圧縮効果です。

50mmで撮影した牛。

最後の写真は、50mmで撮影したものです。牛なので大きさに個体差はありますが、牛を含めて後ろの木など全体の比率(大きさのバランス)は非常に自然なものではないでしょうか。このように圧縮率、つまり被写体とその前後のものとの大きさのバランスを考えた時に50mmというレンズは非常に人間の目に近い写りをするというのが分かるかと思います。

まとめ

「50mmレンズが人間の目に近い」というのは、見えている範囲ではなくて大きさのバランスや歪みなどの「見え方」であるというお話しでした。
最後に、人間の有効視野角に一番近いレンズでの例を挙げて終わります。

先に見たように30mmが最も近いようですが、作例は35mm相当です。個人的には自分の視野角に一番しっくりくるレンズだと思っています。35mmは視界のピントが合っていない部分を少しだけ鮮明に写してくれるレンズなので、写真にした時に程よい広さを感じながらも非常に現実的な絵が撮れる点でお気に入りのレンズです。この点については、また別の記事も書きたいなぁと思っています。

街撮りスナップの定番、35mm
今そこを歩いているような視点。被写体に対して地面と空をちょうど良いバランスで入れられる。
最低限の歪みで、大きなものを近くから写せるのも魅力。


以上。



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