ショーロク!! 7月前半ー5

5.ドリフのいかりやの「ダメだこりゃ」を実感した夜

 果たして女子部屋の扉はあっさりと開かれて、パジャマ姿で髪の毛をくくっていない状態の小笠原良子が顔を出した。
 清川は今や男女の垣根なく友好関係を築いている稀な存在になっていたのだ。

 「つとむく・・・ん?ギャー!」
 小笠原良子は、清川の後ろにいたオレを見て叫んで扉を閉めやがった。
 何だよ、腹たつなあ!

 「ちょっと!良子ちゃん!そっちに黒丸君いるでしょ?開けてよ!」
 清川は珍しく積極的だ。女子部屋の扉をガンガンと叩いている。

 しばらくすると、髪をくくって、自由行動の時の私服に着替えなおした小笠原良子が登場した。
 何でわざわざ着替えたんだ。さっきの方がちょっとお姉さんぽくてよかったのに!

 「あのねえ、孟君(そういや、清川の名前はツトムだったな)!」
 と、分かりやすくむくれた顔をしている。
 「余計なのがくっついてるなら、最初に言ってよね!」

 「おい!」
 とオレは思わず突っ込んだ。
 余計なのってオレだよな!相変わらずムカつく奴だ。

 小笠原が開けたドアの隙間から正座して目隠しをされた情けない姿のマグロが見えた。
 「おお!マグロ!無事だったか!」
 と、オレが駆け寄ろうとすると、

 「ちょっと待って!」
 小笠原が長い腕を伸ばして、踏切のように通せんぼをしてきた。
 「どうせ、アンタらやろ!黒丸君けしかけて女子部屋に忍び込ませようとしたの!」

 小笠原とその他大勢の女子軍団がやいのやいの言い出した。

 『何やねん!別にいいやんけ!はよマグロ返せや!』
 と、言おうと口を開いた瞬間、マグロが急に大声で叫んだ。

 「横山君たちは関係ない!これは僕が独断で始めた冒険だっ!」

 一瞬、静まり返るオレたち。こいつは一体何を言っているのだ!?
 。。。ていうか冒険って・・・冒険って・・・

 「いや、マグロ・・・今更オレらをかばわんでもええで・・・」
 オレは呆れたように言った。

 「そうや、そうや」
 「黒丸君、無理せんとき」
 「こんなアホなこと横山たちしかせんって!」
 などと女子が加勢した。それはそれでムカつくなあ。

 「う・・う・・・うう」
 マグロは目隠しをされたまま泣き出してしまった。

 「僕を・・・僕を、バカにするなぁ・・・」
 最後は消え入りそうな声だった。

 女子たちは何となく気まずくなったのだろう。マグロの目隠しを取って「いいよ、怒ってないから部屋に帰り」などと言って、奴を部屋から出してくれた。

 オレは一瞬マグロを見直しかけたが、部屋から出てきた瞬間、やっぱりこいつはダメだ。と思った。いや、こいつもダメだ、なのだろうか・・・

 「マグロ・・・」
 オレはまだ泣き顔のマグロの肩に手を置いた。
 清川も同じようにしている。もっともこいつは本当に心配してそうしたのだろうが・・・

 オレはつかんだマグロの肩に力を入れると一気に壁に奴を押し付けた。
 そして胸倉をつかみながら叫んだ。

 「お前!何でこの状況でチンポ勃ってんねん!?」
 そう、こいつもまたダメダメだ・・・

 ~それから約5分後~

 「で、こいつはちゃんと女子の部屋に入ったんやんな?」
 ブーヤンが明らかに感心していた。

 「まあ、そこはすごいわな」
 オレも同調する。

 「結局どうやって入れてもらってん?」とキタン。

 「だから、窓をたたいて叫んだんだよ。実際腕が限界だったしね」
 もともといた自分の部屋ではなく、オレたちの部屋に強制的に連れて来られたマグロが言った。
 なぜ勃起していたのかが解明されるまで、こいつは強制正座を命じられている。そしてなぜかマグロもそこには素直に従っている。なんだかんだでこいつは面白い奴だ。

 「最初は完全にひかれてたよ、でも本当に落ちるって何回も叫んだんだ」

 「でまあ、入れてもらったんはええわ」
 「どのタイミングでチンポ勃ってん?」
 とオレたちが聞くと

 「僕だって分からないよ!」
 マグロは激高した。そういえばメロスは激怒した。とかいう書き出しの物語を国語の授業で読まされたな。今、オレの脳内で『マグロは激怒した』という活字が流れた。

 「女子たちに囲まれて、気持ち悪いとか変態!って言われてるうちに・・・」
 と、マグロはオレたちをドン引きさせた。

 「お前、ガチの変態やんけ・・・」
 と誰かが呟く声をかき消すように
 「いや!君たちに言われたくない!」とマグロが叫んだ。

 こんな感じでオレたちの修学旅行の初日は幕を閉じた。
 センセーたちを閉じ込めた罰はクリちゃん発案のイタズラということにしたため、クリちゃんだけはこのマグロ裁判には参加できなかった。

 そして翌日、あるお寺の大広間で6年生男子が全員雑魚寝することになったのだが、それまでにマグロの勃起事件は完全に男子全員が知ることになって、マグロは色んな奴らに代わる代わるパンツを脱がされ、チンポを拝まれる羽目になったのだった。

 まあ、そんなことは些細な出来事だ。二日目の夜は本当に楽しかった。作文に書けなかった真実をここで伝えておこうと思う。


いつか投稿がたまったら電子書籍化したいなあ。どなたかにイラストか題字など提供していただけたら、めちゃくちゃ嬉しいな。note始めてよかったって思いたい!!