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夢や自分らしさを仕事で叶えられない時、すべきことを考えた話

仕事で夢を叶えることも仕事に愛を持つこともそうは出来ない

皆さんは仕事を通じて夢をかなえた経験ってありますか?
仕事に愛ってありますか?

そう聞かれた時、私の場合は答えに窮すると思います。

というのも、この質問についてはスポーツライターとしてはYesなのですが、本業のIT関連の仕事については限りなくNoに近いグレーなんですよね。

私がライター業を副業に出来たのは好きだった大相撲についてブログを書き始めた時期が良かったことが大きな理由です。

確かに人の目に付くようにするための努力は惜しみませんでしたし、PVが上がってきた後でライターとして仕事を得るための戦略も考えて絶えず行動はしました。夢にすら描けなかった漠然とした憧れを実現出来た時の喜びはひとしおでした。

でもここで私が「皆さんも好きなことを仕事にしよう!」「仕事に愛が持てるものを選ぼう!」って言ってみんな真に受けたら世の中から大抵の仕事が無くなっちゃいます。

今の世の中「自分らしく」というよく分からない言葉が闊歩していて、これを真に受けちゃうとやりたくないことをしている姿って自分らしくない!って思いがちなんですけど、そういうことじゃないんですよ。

仕事で夢をかなえることも「自分らしく」を実現することも全ての人が平等に実現できないものなんです。それに、仮に出来ても仕事で苦しいことなんて無数にあるし、それをしている自分って恐らく世間でいうところの「自分らしく」からはかけ離れています。

最初から自分が好きなことや愛を持って仕事が出来るフィールドなんて限られているし、元々好きではなかったことに対して如何に目的意識を持つかということが現実的な落としどころだと思うんですよね。

夢や愛とは別次元で仕事しながら目的意識を持った話

そういう話であれば、本業のITについてもエピソードはあります。

以前の話なのですが、当時の私が携わっていた業務は一言で表すと「当たり前のことを当たり前にこなす」という性格のもので、膨大な業務を正確にこなし続ける能力が問われるものでした。

ただ、これは私の性質的なもので早く仕事をすることは得意なのですが、どうにも正確性という部分が抜け落ちがちでして、しかもチェックもあまり得意ではありません。

ですからこれは仕方がないことなのですが、業務面で周囲から評価されていないと感じていました。一度そのように評価されるとイメージが付く部分もあって、一度のミスが大きくマイナスにとらえられがちなんですよね。

そんな中、私たちの会社ではとあるお客様の対応に日々悩まされていました。

少しでも待たせるとクレーム。
頼んだことを断るとクレーム。

どうやっても出来ないことに対して日々現場サイドにクレームを付けてくる有名なお客様が居まして、皆その方の対応を避けていたのです。

私自身その方が苦手でしたし、出来ないことを出来ないと説明しても一切理解を示さないどころかヒートアップするばかりなので、穏便に済ませたいとしか思えませんでした。

ただ、そんなことを考えながら仕事するのは嫌でしたし、何よりも自分が関わる中で人を怒らせるということに抵抗がありました。ですから、どうせだったらお互い嫌な思いをしないようにしたいと考えました。

クレーマーのお客様の態度をどう変えたのか

まずは、このお客様を少しでも待たせないようにしてみよう。

このお客様が来館されたら状況によって物理的な問題で300メートルくらい離れているところに行かなければならないこともあり、増員してもタイミング次第で避けられない時もありましたので私が対応する場合は全力でダッシュするようにしました。

息を切らせて駆けつけた私を見たお客様は絶句していました。そして「別に走ってくることは無いのに」と言って大笑いしていました。

何度かこの無茶な対応をしているとこのお客様が徐々に私に仕事と関係ない話をするようになりました。実は私の近所に住んでいることや子供のこと、少し前に大病を患ったことなど、それは私の会社のメンバーは誰も聞いたことが無いことでした。

良いタイミングだったので、このお客様から無茶なお願いをされた時に私は対応が出来ない理由を丁寧に説明しました。関係性が良くなったので、キチンと説明することに対する抵抗がなくなったのです。

相手の立場を踏まえたうえで「お気持ちは理解できますが、今の状況だとシステム的な面や体制的な課題もあり、それは出来ません。ただご要望があることについては上司に報告いたします」と説明すると案外スンナリ理解してくれました。

その後「あのクレーマーで有名なお客様を西尾が手懐けているらしい」という評判が知れ渡るのにそう時間はかかりませんでした。

上司や会社の私に対する評価はこれを機に劇的に変わりました。不思議なもので、私に対するイメージが変わると普段の業務についてもポジティブに見られるようになったのです。たまにやってしまうミスについても大抵「まぁ仕方がない」くらいで終わりました。

こうなると仕事そのものに対して前向きになるので日々の業務を前向きに変えていくための提案も積極的に行うようになりましたし、人が嫌がる業務もヘルプするので重宝がられるようになりました。気が付くと管理者業務を行うようになっていました。

嫌なことが避けられる時代だからこそ、逆に向き合ってみよう

クレーマーのお客様の対応に話を戻しますと、私たちは元々彼を腫物として見ていたことが全ての始まりだったように思います。勿論それまでの積み重ねがあるので、出来るだけ摩擦になるようなことは避けようとするのは仕方がないことです。恐らくあの環境に居れば誰しもそうすることでしょう。

私が気づいたのは、彼は私たちに親身に向き合う姿勢を求めていたことでした。この手の方は自分から人を遠ざける割に寄り添ってほしいと考えがちなのです。

そういうお客様の本音の部分は近づいてみないとなかなか見えません。クレームを多く付けてくる方が全員「実は親身に寄り添ってほしい」と考えているかといえばそうではないですから。

今回大事だったのは、このお客様に対して正しく向き合えていないのでどう対処すればよいか理解していなかったということではないかと思います。これは実は多くの職場で似たようなことが言えるのではないかと感じました。

つまり、仕事をしていて嫌だと感じることは無数にありますし、それらに対して覚悟を決めて向き合うことは難しいということだということです。あと、嫌なことって今の世の中ではより避けられるようになったなぁと思います。

嫌な仕事にも向き合う、そして寄り添ってみるということは世間でいうところの「自分らしく」とか「夢をかなえる仕事」みたいな口当たりの良いことと全く対極に位置しています。

評価されたいから嫌なことに向き合うというのは違いますが、仕事をしていてよかったと思えることって自分がやりたいと感じていることや楽しいことではないところから生まれることの方が圧倒的に多いです。

多くの方が夢や「自分らしく」とは異なるところで日々仕事をしているからこそ、周囲はこのような誰もが嫌がる仕事に対して前向きに捉え、頭を使って誠実に対応する人を評価するのではないかと思うのです。

大部分の職場では楽しいことなんてほんの僅かだと思います。しかし嫌なことに対して少しでも前向きに進めていくことが誰かのためになり、会社のためになり、そして自分にも良い形で返ってくる。これは悪い話じゃないです。

「好きな相撲を仕事にして本まで出版した!」ということの方が話としては目を惹くことは理解していますが、夢や自分らしさという磁場ではなかなか生きられないことを理解しているからこそ私はこのエピソードをこれからも大事にしたいと思っています。

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